「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫 義人氏
1974年京都生まれ。立命館大学大学院卒業後、TIS(旧東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に
社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「
SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。モットーは「心はプログラマ、仕事は経営者」。
株式会社ソニックガーデン プログラマ 野上 誠司氏
1982年岡山生まれ。岡山県立大学情報システム工学科を卒業後、地元のSI企業で大小さまざまな規模、業種のシステム企画・開発等に携わる。半年間の移行期間を経て株式会社ソニックガーデンに入社。様々なプラットフォームでの開発を経験しており、特にモバイル・アプリケーションでの経験が豊富。岡山県からのリモートで、ソニックガーデンのプログラマとして活躍中。
~リモートワークスタイルのフラッグシップに~チームで働くリモートワーカー集団ソニックガーデン(後編)
フラッグシップ=旗艦。また、そのグループの中で、最も重要なものや優秀なものを指す。
「チーム」×「リモートワーク」を実現するための必須ツール
円滑にリモートワークを進める上で、何かしらの工夫や便利なツールなどあれば教えてもらえますか?
- 野上氏
自分たちで作った「Remotty」というチャットツールがあって。それを毎日使っていますね。
そのチャットツールっていうのは、チャットツールって結構世の中にはあると思いますがリモートワークに適しているということですか?
- 野上氏
はい。2つ特徴があって、1つは、顔写真をずっと定期的に映しているっていうのがあります。
顔写真?
- 野上氏
はい。大体1分おきに、パソコンのカメラで撮ったのが更新されます。なので、今は席にいるのかいないのか、カラオケをしているのか、スカッシュをしているのかっていうのが、大体そのツールを見たら映っているので分かります。
そういうことですか。実際の写真なんですね。動画と顔写真の間みたいな、そんな感じなんですね。
リモートワークには欠かせないツール 「Remotty」。 画面上部に1分置きに写真が更新される
- 野上氏
もう1つの特徴は、話しかけたい人にだけ通知が行くような仕組みになっていることです。普通のチャットツールだと、タイムラインに書き込むと、その環境にいる人全員に通知が行くのでその情報に関係ない人の仕事の邪魔しちゃうんですよね。
確かにそうですね。
- 野上氏
「Remotty」だと、話しかけたい人にだけ通知が行くので他の人の邪魔をしない。でも他の人のも見に行こうと思えば見に行けるようになっています。そういう意味ではオープンではありますね。
- 倉貫氏
そうだね。「Remotty」はオープンだけど邪魔にならない。
- 野上氏
邪魔にならないので話しかけやすいんですよね。他の人にも通知がいっちゃうと遠慮して話しかけられない(チャットできない)。なので、話しかけやすいようなツールにしようとして自分たちで作ったんです。
そうですね。普通のツールだったら、みんな一緒のところにいたら、誰かが何かを書き込んだら、いちいちそれを見ちゃったりして、集中力を削がれたりしますもんね。
- 野上氏
そうです。
分かりました。他に、何か便利で使っているものとかってありますか?
- 野上氏
併せて使っているものは、「appear.in」っていうビデオ通話サービスを使っていて、Skypeみたいなことができるんですけど、ブラウザだけでできるし、ユーザー登録とかは不要です。一時的に発行されるURLにアクセスしたら、そこにアクセスした人みんなと話ができるツールです。結構手軽なので、「Remotty」でURLリンクを貼って実際にビデオ会議をする場合よく使ったりします。
「オフィス」も「リモートワーク」も関係ない。悩んだらすぐ聞く文化
なるほど。「Remotty」とか「appear.in」とかのツールっていうのは、人とつながるっていう感じだと思います。リモートワークというと、頼まれた仕事を場所を関係なくこなすという感覚を持っていたんですけれど、そういう感じじゃなくて、人と一緒にコミュニケーションを取りながらやる仕事が多いということですか?
- 野上氏
お客さんとの週に1回のミーティングはSkypeでやって、それ以外は基本的に1人でもできるんですけど、困った時や、相談したい時、ちょっと疲れたとき、雑談したい時とかにコミュニケーションが取れるのはありがたいです。リモートワークで家にずっと1人でいると、悩んで無駄に時間を使ってしまうのはもったいないですよね。
ソニックガーデンの文化として、リモートワークだけど困ったらすぐ聞くというのは結構根付いているということですか?
- 倉貫氏
そうですね。1人で仕事を抱えて成果を出すというよりも、チームで助け合って仕事をしていくっていうのは、普通にリモートに関係なくやるスタイルです。我々は確かにリモートワークをするんですけど、従来のオフィスで社員同士が助け合ったり、話し合ったり、ワイワイガヤガヤするっていうのは、リモートワークだろうがオフィス勤務だろうが関係なく実現しています。
仕事においてチームで助け合うことは必要と語る倉貫氏
なるほど。普通に働こうと思って、距離や時間の障害だけをなくしたということですね。
- 倉貫氏
そうです。なので、本当にオフィスにいるのと変わらないですね。
- 倉貫氏
始業時間ぐらいになったら、大体みんな「Remotty」にアクセスしてくるし、晩ご飯ぐらいの時間になったら「お疲れ様でした」って言って「Remotty」を去っていくので。今までの会社でいう「オフィス」っていうキーワードを「Remotty」に置き換えてもらうと、全く同じだと思います。
採用の段階でリモートワークではなく、オフィスに来て色々教わりたい、という人もいると思うんですけども、そういう方への対応ってどうするんですか?
- 倉貫氏
そういう方は、もう入社できないですね、残念ながら。お客さんとはリモートでやることも多いので、それができないっていうことはうちで働けないっていうことなので。だから、採用の面談も最初はリモートでやっています。
採用面談もリモートですか!?「会いたい」っていう人はいないですか?
- 倉貫氏
います。その時点で「アウト」っていう(笑)。
ビジョンを全社員で共有する「ビジョン合宿」
すごいですね。ソニックガーデンの社員が全員集合する機会はないんですか?
- 倉貫氏
もちろんありますよ。僕らは、年に2回は必ず全員集合します。どこにいようが全員集合して、合宿に行きますね。
- 倉貫氏
はい。東京近辺ですけど、全員で集まって1泊2日で会社全体のビジョンを共有して、個人個人のビジョンを発表するっていう合宿をしています。「ビジョン合宿」って呼んでますけれども、それを年に2回やってますね。
2015年1月のビジョン合宿時
そのときに、実際に今まで会ったことない人ばかりじゃないですか。「初めまして感」とか、そういうのってあったりしますか?
へー。じゃあ、もう皆さん、いつも「Remotty」で話している感じで。
- 野上氏
初めて会ったときに思った感想で、唯一違ったのが、「これくらいの身長なんだ」っていう。
これは野上さんに聞いてみたいのですがリモートワークで困ったこととかって何かあったりしますか?
- 野上氏
「Remotty」であまり発言しない人がたまにいると、何をやってるのかが分からないっていうのはありますね。顔写真も一応、表示・更新したくなかったら更新したくないっていう設定ができるので今何をしているのかわからない人はいます。
- 倉貫氏
うん。でも、オフィスでも一緒ですよね。オフィスに行っても、他の人と何も話さない人がいると、何をしてるのかがよく分からない。
そうですね。何をしているのかが分かんない人はいます。
- 倉貫氏
はい。みんなが各個人の画面で映って、一緒に「カンパーイ」「カンパーイ」って言って(笑)。
- 倉貫氏
もうめっちゃ楽しいですよ。今度一緒にやりましょうよ。
「都内」から「地方」という選択
最終的にここまでリモートでやりたいみたいなことってあったりします?
- 倉貫氏
新しく入社する方は地方の方が多いですけど、まだ東京で採用した人たちは東京にいるので、その人たちが今後リモートのほうにシフトしていく、地方に引っ越しをしていくっていう事例が出てくるといいなと思っています。これは私たちの会社のスタイルですけど、地方と東京で別に給料の差があるとか、処遇の差があるとかが全くないので、地方に飛ばされたっていう印象はないんですね。むしろ、子育てをしやすい地方だとか、地元に帰って、今費やしている通勤時間を子どもと過ごす時間にした方がいいと思います。そういう働き方をする人が、今、東京にいる人たちも選択するということが出てくるといいなと思っていますね。
- 倉貫氏
これは微妙なところですけど、私が今住んでいるのが埼玉の大宮というところで、地方なんです(笑)。
- 倉貫氏
もはや、出社じゃなくて出張だと思っています。都内に出る、渋谷のオフィスに行くのは。他のメンバーに比べると、通勤時間が3倍ぐらいかかるので。なので、僕はもう週に1日、2日しかオフィスに行きません。リモートワーク社長ですね。
リモートワークを推奨しているソニックガーデンは、いかにしてビジョンの浸透を図っているのか
理念やビジョンをソニックガーデンさんはすごい大切にされていると感じます。社長とあまり会わなかったり、リモートワーカーの方が多かったりすると、その浸透がすごく難しいんじゃないかなと感じるんですが。
- 倉貫氏
そうですね。私の考えていることを伝えるのに、普通の会社だったら朝礼とかをすると思うんですね、きっと。
はい。普通しますね。
- 倉貫氏
朝礼して、理念の唱和をして、社長の訓示があって、「今日も1日頑張りましょう」みたいな。ただ、我々はリモートワークなので朝礼ができない。リモートワーク、かつ、セルフマネジメントの会社なので勤務時間も決まっていないんです。そうなると、完全に朝礼ができないんですね。
確かにそうですね。
- 倉貫氏
そこで、2014年の末ぐらいから始めたんですけど、毎朝私が音声でメッセージを録音して社員に発信するっていう、社内で通称「社長ラジオ」と呼ばれている取り組みを始めました。これは毎朝5分間、私が音声で考えていることをみんなに発信する。みんなは各自の場所で、自分のタイミングで、そのラジオを聞くと。そうすると、朝礼と同じ効果があるんじゃないかっていうので、やっていますね。
ちょっと失礼な質問なのかもしれないですけど、社員の皆さん社長ラジオを聞いてくれてます?
- 倉貫氏
これが、最初は視聴率が低くて(笑)。
(笑)。そうかもしれないですよね。そうなるだろうなって思いますもん。
- 倉貫氏
でも、最近はもうガンガン視聴率が上がってきましたね。
それはなんでかって分かりますか?
- 倉貫氏
「Remotty」で私が毎朝、社長ラジオをアップしたことを通知して、そこにコメントが送れるんです。誰かがコメントをくれると、他の人がコメントを見て、「こんなことを話してるんだ。じゃあ、ちょっとこれから社長ラジオを聞いてみようか」ということで興味を持ってもらえる。なので、社長として頑張ることは、「続ける」ことですね。くじけずに続けないと。視聴率が低くても続ける。
リモートワークのフラッグシップになる
ここまでリモートワークに関してお聞きしました。最後に伝えたいことはありますか?
- 倉貫氏
実は「Remotty」って無料で他の会社にも使えるようにしているんです。自社で使うものを無料で展開することをソニックガーデンでは「まかない」って呼んでいます。これは我々のビジョンに通じるんですけど、我々自身が新しい働き方を考えていて、リモートワークというのがその1つです。そうしたときに、他の会社さんももっと我々のような働き方をしてほしいなというふうに思っているんです。そのときに我々のツールをできる限り提供していけば、同じようなワークスタイルの会社が増えるんじゃないかな思っています。そのために「まかない」で無料配布っていう感じですね。
まるでオフィスで働いているかのような コミュニケーションを実現 「Remotty」
ソニックガーデンさんがリモートワークのモデルとなるような感じになるといいですね。
- 倉貫氏
そうです。フラッグシップになりたいなと思っています。
なるほど。ありがとうございました。
- 倉貫&野上
ありがとうございました。
最後に、、、
実はこのインタビューも「リモート」で行われました
Remote Work Laboではリモートワークを行なっている企業の記事を作成しています。
取材をご希望される方は以下のボタンより、お気軽にご相談ください。
ご相談はこちら