この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。
株式会社spice life 開発部長 五十嵐 邦明氏
- ~リモートワークが会社を成長させる!沖縄からのリモートで処理したタスクは5倍!~前編
- ~リモートワークが会社を成長させる!沖縄からのリモートで処理したタスクは5倍!~後編
それではインタビューを始めたいと思います。まず株式会社spice life(スパイスライフ)さんはどんな会社なのか教えて下さい。
- 五十嵐氏
はい。spice lifeは全体の社員数は約20人、私はその開発部の部長なんですけれども、エンジニアが10名、デザイナーが2人の、12人でやっています。事業は2つありまして、1つはオリジナルのTシャツをつくるtmixというサービス。こちらが今は主力のサービスになっています。もう1つのサービス は、SPOTLIGHTSという、お花をみんなで贈るためのサービスです。この2つのプロダクトを自社ウェブサービスでビジネスとしている、そういう会社です。
ありがとうございます。まだまだリモートワークを取り入れている会社は少数だと思うのですが、spice lifeさんはどういった経緯でリモートワークを取り入れることになったのですか?
- 五十嵐氏
我々は自社サービスを開発しているので、自社サービスがどんどん伸びるような働き方をしたいわけです。そのための一つの手段として、リモートワークを取り入れようということを企画して進めてきました。弊社は東京にオフィスがあるのですが、通勤に時間がかかる人もいますし、かつ満員電車で疲弊してしまうこともあります。そういう社員にとっては、家で仕事をしたほうが明らかに効率が良かったり、集中できたりしますので、効率を求めるためにリモートワークを始めました。
リモートワークのほうが効率がいいと判断されたんですね!
リモートワークなら全世界からの採用でさえ可能
- 五十嵐氏
もう1つ、会社のメリットとしては、リモートワークで仕事をすることによって、採用できるエンジニアやデザイナーの、採用候補者の母数が増えると考えています。今、実際に1人のデザイナーは大阪に住んでいて、大阪からリモートで勤務しているんです。もしリモート勤務を取り入れていなかったとしたら、東京近辺でしか採用ができないと思うんですが、リモート勤務を導入することで、全国とか、もっとうまくやれば全世界から採用できる点が非常に魅力的なので、このリモートワークを積極的に進めています。
今いらっしゃる大阪のデザイナーの方は、元々大阪に住んでいる方を採用されたのですか?
- 五十嵐氏
はい、そうです。私が大阪に行く機会がありまして、そこで知り合いました。ちょうどそのとき弊社もデザイナーの方が欲しかったのと、その方が転職活動中だったので、うまいことマッチングして、弊社で働くことになったといういきさつです。
そうなんですね。そのときは、すでにspice lifeさんにリモートワーク制度はあったのですか?
- 五十嵐氏
そうですね。もうリモートワークで少しずつ働きはしていて、いけそうだなという感触はあったので、大阪の方でも採用してもいいだろうという判断ができました。
ちなみに、最初にリモートワークを始めたのは何年ごろですか?
- 五十嵐氏
私が入社したのが2014年なんですけど、その前からたぶんやっていたと思います。
リモートワークをはじめた経緯をお聞きしたいのですが、具体的に困っていたことがあり、「これはちょっとリモートワークをやらないとダメだよね」という流れだったのですか?
- 五十嵐氏
いいえ。具体的には困っていたことはないですね。普通にやっていたらリモートワークを始めていたという温度感だと思います。あまり身構えた感じはなく、最初は週1日とか2日という日数から、ちょっとずつリモートワークをする機会増やしていきました。でも、今もフルにリモートでやっているメンバーはその大阪のメンバーだけです。
毎日出社するメンバーと、週2~3日は家でやるメンバーといますね。1年半前に私が入ってから徐々に進めて、少しずつリ モートのノウハウをためているという状況です。
あくまでチームが最大パフォーマンスになるように考えて働く
今お話にあったんですけれど、週1日から週3日ぐらいでリモート勤務されている方もいれば、毎日会社に来ている方もいらっしゃるんですよね。毎日会社に来ている方は、リモートを試してみたけれど合わなかったということですか?
- 五十嵐氏
そうですね。会社のほうが集中できるというメンバーもいますし、あとはやっぱりチームでパフォーマンスを出したいと考えています。家でやると、自分個人のパフォーマンスは出るんですが、チームとして細かく話し合いをして詰めていくという点では難しい部分もあるんです。そこは各自、「チームが最大パフォーマンスになるように考えて働く」というスタイルにしています。
職種とか、やるべき仕事によって、リモートワークが向いている人と向いてない人がいるという感じですか?
- 五十嵐氏
そこはそうですね。まず職種については、弊社のケースですと、電話でのサポート対応をしているスタッフは、ちょっとリモートは難しい。一方で、エンジニアとかデザイナーは比較的場所の制限を受けないので、リモートがやりやすい職種だと思います。
職種の中でも人によって向き不向きとか、そのときの気分もありますし、あまりリモートかオフィスかという場所にこだわりすぎず、そのとき一番いい選択肢を取りたいとう気持ちで私はやっています。
自身の仕事内容とパフォーマンスを考え働き方を選択する
「今日は家でやろう」と決めた日は、大体ご自宅で?どこかカフェとかに行かれるんですか?
- 五十嵐
それも人それぞれで、自宅の人もいますし、自宅だと集中できないのでカフェに行くという人もいます。私は自宅が好きですね。
五十嵐さんは、そのようにご自宅からリモートワークされる日と、会社に行かれる日があるということですが、自宅でリモートワークを選ぶ理由は何でしょうか?「今日はプログラムを書く日だ」と決めて、自宅で集中したいからですか?それとも、ちょっと体調が悪いから行かないという場合もあるのでしょうか?
- 五十嵐
今おっしゃったこと両方の理由がありますね。私は比較的体が強いので、体調不良が理由のリモートワークはあまりないですけど、もし体調が悪ければ、きっと家で仕事をしたほうが体調回復が早いですし、体力も消耗しないですよね。
ただ私の場合は比較的打ち合わせも多いですし、どうしても部長の仕事があるので、打ち合わせがない日でプログラムを書くことに専念できそうだなという日は家で仕事をします。
なるほど。そのほうが仕事が進む、集中できるということですか?
- 五十嵐氏
そうですね。やはりプログラムは家で書いた方が集中するのでたくさん書けますね。
spice lifeは昼寝推奨!
ではご自宅でお仕事される日の、起きてから1日を終えるまでのタイムスケジュールお聞きしてもいいですか?
- 五十嵐氏
毎日出来ているわけではないですが理想形を話すと、朝6時に起きて、朝ごはんを食べて、7時ごろに会社のメンバーがいるチャットに入ります。フルでリモートで働くときは、そこからずっと仕事をしますね。
7時から仕事開始ですか?早いですね!
- 五十嵐氏
私は立場的に部長のポジションなので、月末などは社員の勤怠管理をしなくちゃいけなかったり、色々仕事が増えまして(笑)忙しいので、ちょっと時間が長いです。なので、7時から12時まで働いて、お昼を1時間食べて、また13時から夜19時くらいまで働いて、おしまいにするケースが多いですね。
19時以降はご自分の時間ですか?
- 五十嵐氏
そうですね、忙しいときはそんな感じです。仕事に余裕があるときは、逆に朝を自分の時間にして、7時から10時までの時間を自分のプログラムを書く時間にあてる場合もあります。
朝が早いんですね。出社するときも朝型で、7時ぐらいには着いているんですか?
- 五十嵐氏
そうですね。出社するときは、やっぱり同じように7時ごろに自宅のPCからチャットに入って、9時ごろまで仕事をして、1時間かけて出社して、あとは同じ感じですね。
なるほど。仕事の合間にちょっと寝ようとかってありますか(笑)?
- 五十嵐氏
あります。うちの会社は昼寝推奨なんですよ。なので、昼寝を15分とか30分とかする場合もあります。
誰かが悩んでいることをリモートで察知するのは、至難の業
では、リモートワークってこういうところが悪い点だな、という感想を教えて下さい!
- 五十嵐氏
悪いところというか、難しいと感じることがあります。
先ほどお話した大阪からのリモートメンバーも、月に1回1週間、東京に来てもらっているんです。その1週間の間に、リモートでは難しい部分の業務とか、悩み事の共有などをします。いわゆるKPT(*1)みたいなものをやりますが、そこでいろいろ問題点が出てリモートワークの難しさを実感します。特に悩みの共有などはリモートだと難しいかもしれないですね。弊社にはリモートワーク制度とは別に「リモートライフ」という、沖縄などに2週間から1カ月ぐらい行ける制度があるんです。私が沖縄でのリモートライフを経験して、そのときに思ったのは、私は部長というみんなを見る立場なので、誰かが何かで悩んでいるかどうかをリモー トで察知することは、おそらくもう至難の業だということです。そういった社員の悩みなどに気付くためには、やっぱり対面のほうがいいんだろうなと思ってい ます。
相手の表情や視線などから気づくことは多いですものね。
- 五十嵐氏
そうですね。あともう1つ、1対1のミーティングはいいですけど、1対多のミーティングがやっぱり難しいですね。
それは声が伝わりにくいとか、そういうことですか?
- 五十嵐氏
まずそこからだと思います。性能にこだわってマイクを購入しましたが、それでもマイクからの距離や、人の声の通りやすさなどで聞こえないことがあるんです。聞こえないときに「聞こえません、聞こえません」といちいち伝えてしまうと、リズムも悪くなるし、相手もだんだん萎縮してしまうんですよね。1対1だと比較的音もちゃんと拾えるし、画面にその人の顔も出るのでやりやすいですが、例えば東京側に5人いて、大阪に1人というケースは結構難しいです。逆に参加者全員がバラバラの場所で、それぞれ1人ずつの画面でGoogleハングアウト(*2)をやるほうがうまくいくような気がしています。
では次に、リモートワークの良い点を教えて下さい!
- 五十嵐氏
良いところはたくさんあって、大体通勤に片道1時間ずつぐらい消えているので、リモート勤務なら1日2時間も時間を確保できることが大きな良い点ですね。 あとは、案外ペアプロ(*3)はうまくできますね。ペアプロの際、画面共有と、Googleハングアウトを利用してコミュニケーションを取りながらやってみたんで すけど、すごくうまくいきました。
(*1)KPT=行動や仕事を振り返るとき、「Keep=良かったこと、今後も続けたいもの」「Problem=悪かったこと、問題だったこと」「Try=次回試したいこと」の3つに分けて整理するフレームワークの略。
(*2)Googleハングアウト=Google+ Hangoutsは、1対1でもグループでも、写真や絵文字でのコミュニケーションやビデオ通話ができる無料のコミュニケーションツール。
(*3)ペアプロ=ペアプログラミングの略。コードを書く人とレビューをする2人のプログラマが、共同でプログラミングを行うこと。
後編に続く
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