「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。
株式会社A.C.O. 取締役兼CCO/CREATIVE DIRECTOR ジェイムズ氏
University College of Ripon & York St. John卒業。イギリスヨーク州のMyKnowledgeMap (e-learning company) にてデザイナー兼プロダクションマネージャーとして勤務後、2001年に来日し、現在に至る。クリエイティブディレクション、アートディレクション担当。
株式会社A.C.O. 取締役兼COO/PRODUCER 満尾氏
多摩美術大学情報デザイン学科卒業。デザイン事務所、フリーランスを経て、現在に至る。クリエイティブディレクション、プロジェクトマネジメント担当。
24時間、時差を利用した働き方
国を越えてリモートワークを実施することのメリットは何かございますか?
- 満尾氏
一つは、時差を活用した働き方ができる点ですかね。
先ほどの話にもありましたが、日本のメンバーが実施した業務をロンドンのジェイムズに引き継げば、日本の業務終了後の時間帯に仕事を進めてもらうことも可能です。そのため、翌朝には依頼した業務が完成している、というサイクルが作れることはメリットですね。
なるほど。
- 満尾氏
もう一つは、ジェイムズがロンドンに拠点を持って様々な情報をインプットしておくことで、グローバルサイトの制作などでお客様からブランディングのアドバイスを求められた際、海外からのリアルな視点、見解を提示することが可能になるということです。
はじめはリモートワークの実施に不安がありましたが、結果的にメリットも幾つか生まれていますね。
- ジェイムズ氏
そうですね。リモートワークにより24時間フルで仕事を進めることができる点は大きなメリットですね。
お客様へリモートでプレゼンテーションを実施
リモートワークをしていて不安な点や気をつけている事はありますか?
- ジェイムズ氏
お客様にこちらの提案をする際にも、リモートワークだからこそ、スムーズに提案できるように気を配りました。
例えば、数週間かけて準備した提案も、当日プレゼンテーションの際にネットが繋がらなくなってしまうと大問題になるので、そうならないための工夫を色々としてきましたね。
例えば、メンバーと一緒にお客様にプレゼンテーションする際、メンバーのパソコンに私からVPNでアクセスして実施しています。これにより、私がネットに繋がらなかったり、画面シェアがスムーズに進まない場合でも、メンバーのパソコンがネットに繋がっていればプレゼンテーションが中断されずに済みますので。
また、それすらもうまくいかないケースが想定される場合は、予めプレゼンテーションの内容を動画で撮っておいて、お客様と共有する場合もあります。
なるほど。では、プレゼンテーションする際には、回線の用意と、日本のPCへVPNでアクセスすること、そしてプレゼンテーションの録音を送るという形で対策しているということですね?
- ジェイムズ氏
そうですね。万が一に備え、私は必ず3つのネットワークを準備していますね。自分のいる場所のWi-Fiと、ポケットWi-Fi、そして自分のiPhoneのテザリングです。
ネット環境の整備にとても気を配られていると感じましたが、そうするようになった背景として、今までにリモートワークをしていて失敗してしまったことがあったのですか?
- ジェイムズ氏
はい。事前に録音するようになる前に一度ありましたね。ネットにどうしても繋がらなくて、途中で日本スタッフにプレゼンを引き継いだのですが、私は資料を英語で作っていたので、フォローが相当大変だったということがありました。
それは、大変でしたね(笑)
コミュニケーションのタイミングに配慮する
これまで挙げていただいたもの以外で、リモートワークのデメリットは何かございますか?
- ジェイムズ氏
ブレインストーミングを実施する際の共有のスピードですね。みんなのアイデアをポストイットでホワイトボードに貼っていく際などは、リモートでは参加しにくいですね。写真で共有などしてもらっていますが、どうしても議論についていくのが難しくなってしまいます。そういった問題が解消されるサービスアプリなどリサーチ中ですね。
なるほど。
- ジェイムズ氏
もう一つは、リモートワークによるコミュニケーションのタイミングですね。会議の中で私が理解できない日本語があった際、実際に顔を合わせていれば隣のメンバーに「今なんて言った?」と質問することができますが、リモートワークではそうは行きません。議論が白熱するほど、それが難しくなりますね。
リモートワークにより、家族との時間が増えた
では、次の質問です。ジェイムズさんがリモートワークをすることに対して、ご家族はどんな印象をもたれていますか?
- ジェイムズ氏
私の奥さんはオンラインショップのオーナーなので、9時から17時まで勤務するといったように、勤務時間が決まっているわけではありません。
そのため、私ともバランスよく仕事ができています。二人ともオンラインで働いているので、それぞれのミーティングの時間の合間に子供を迎えに行ったりしています。家族と一緒にいる時間も増えましたね。
一方で、子供からパパはいつもパソコンに向かっていると思われてしまう可能性があるので、午後や休日は、子供との時間を大切にしています。サッカーをしたり、Airbnbで1週間どこかに泊まったりなど積極的に時間を取るようにしています。
それはすごく大きなメリットですね
- ジェイムズ氏
はい、メリットをとても感じています!
では、リモートワークによりプラスの面が多いということですね。
- ジェイムズ氏
そう思います。
リモートの際には、メンバーの各座席にマイクを設置
では、上手にリモートワークをするために「これを使うと便利だよ」といったツールや方法があれば教えてください。
- ジェイムズ氏
弊社のオフィスではみんなの前にスピーカーとマイクがあります。大人数でリモートワークを実施する際には、マイクが一つだと聞こえにくくなります。そのため、メンバーの座席の前に小さなマイクが取り付けられています。
最悪、ビデオは映らなくなってもいいですが、音声が聞こえないと会議が進まなくなってしまうので、こうした対処は重要ですね。
- 満尾氏
今使っているマイク・スピーカーは、NTT-AT社製のR-Talk800PCです。オプションの外付けマイクを4つまで接続でき、マイクを分散して配置することができるので、テーブルの端の人の声も非常にクリアに伝えられるようになりま した。電池でも動き、iPhoneにも繋げられるため出先の会議でも多いに活躍しています。お値段はやや高めですが、それを補って余りある効果がありますね。
とても使い勝手が良さそうですね!
- ジェイムズ氏
あとは、オフィスにワイド用のカメラを設置しています。普通のカメラではレンズの前に居るメンバーしか見えませんが、ワイドのカメラだと幅広くメンバーを見ることができます。お薦めはBuffalo製のBSW20KM11bkです。
これも良さそうですね。
- ジェイムズ氏
あとは、オフィスに23インチくらいのディスプレイを2つ用意し、横につなげています。1台には僕の顔を映し、もう1台にはその会議のアジェンダやスケジュールを写しています。
なるほど。そういった機器を活用されているんですね
状況によってリモートワークのためのツールを使い分ける
アプリやツールは何を使われていますか?
- ジェイムズ氏
よく使うのはDropboxとSlackですね。
Dropboxは数年前から使っていますが、プロジェクトごとにフォルダがを作って、必要なメンバーと共有しています。お客様との資料のやり取りで使うこともありますね。
Slackは社内コミュニケーション全般において使用しています。
デザイナーとのデザイン確認の時も、デザインキャプチャをアップしチャットでディスカッションしたりしています。
なるほど。
- ジェイムズ氏
あともう1つは、Smartsheetですね。
オンラインのExcel的な使い方がメインであり、ガントチャートのスケジュールの管理やタスクの管理などに活用しています。
Googleのスプレッドシートみたいなものですか?
- ジェイムズ氏
そうですね。タスク管理としても使えるし、Slackともつながれます。あるタスクのリマインドもしてくれますね。
これはお客さんともよく使っており、Smartsheetにアクセスしてもらって打ち合わせを進めることもあります。
なるほど。では、Dropbox、Slack、Skype、Smartsheetの4つをメインで使っていらっしゃるんですね。
- ジェイムズ氏
はい、それがメインですね。
あとはGoogle Appsですね。カレンダーとメールは全てGoogleで管理しています。
他にも、お客様によって、ChatWorkやBacklogというタスク管理のツールを使う場合があったり、Skypeのネット接続の調子が悪い日は、Googleハングアウト、FaceTime、Screenhero、LINEなど、色々と使い分けています。
使用するツールはお客様に合わせて使い分けるのですか?
- ジェイムズ氏
大体そうですね。あとは、案件のニーズによってツールを使い分けています。このやり取りだったらこっちのほうがいいなど。ただ、毎回ツールが変わると効率が落ちるので、なるべく少ないアプリで実施したいですね。
場所を選ばずに優秀な人材を採用できる
では次の質問です。リモートワークにより人を採用しやすくなったなどといったことはございますか?
- 満尾氏
応募してくださる方は、リモートワークに興味を持って質問をしてくれることが増えています。
今のところデザインチームのサポートとして、普段の生活に合わせながら、リモートワークでお仕事をお手伝いしてくれる主婦の方もいます。週に何日かリモートワークをし、月に1回ぐらい会社に来ていただいたりしています。
- ジェイムズ氏
そうですね。あとは採用に限らず世界中の人と仕事ができるようになりましたね。
例えば、あるサービスのロゴを作ろうと思った際、フランスに居るデザイナーに制作を依頼し、Skypeのやり取りだけで良いロゴができたこともありました。
他の会社でも、リモートワークにより採用に結構効果的だとおっしゃられる方が多いですね。場所を選ばずに優秀な人を採用できるというメリットがあるとのことです。
一方、仕事をサボってしまう方も居るそうなのですが、リモートワークができる人材の見極め方が難しいとも言われています。A.C.O.様はそういった問題はございますか?
- 満尾氏
弊社はジェイムズ以外、完全にリモートワークで働いているというスタッフは居ないので、今のところそういった問題はでてきていないですね。
毎朝リモートで「おはようございます」
リモートワークをしていると社員全員が顔を合わせる機会が減ってしまうと思いますが、そうした中でもメンバーの連帯感を高めるために実施していることはありますか?
- ジェイムズ氏
私は1年に2回ほど出張で東京に行っています。そうした機会を大切にし、みんなでワークショップや飲み会を実施しています。
- 満尾氏
あとは、みんなの普段の様子をジェイムズも分かるようにするため、毎日仕事を始める際にはSlackで「おはようございます」と挨拶したりしています。
- ジェイムズ氏
そうそう。私もなるべく自分の生活を伝えるために、仕事には関係ないですが、「ランチ食べてきます」とか「ちょっとコーヒー買ってくるね」など、小さなことも言うようにしていますね。
リモートワークでも雑談みたいなことをしているということですね。
- ジェイムズ氏
そうですね。私のコメントに対して、メンバーがコメントを返してくれることもあります。別に返事を期待しているわけではないですが、一応やってくれますね(笑)
そうなのですね。
- ジェイムズ氏
あとは、最近はしていませんが、会議以外の時間でもSkypeのカメラをつけっぱなしにし、日本のメンバーがオフィスの状況を映してくれることもありました。これにより、「こんにちは」とコミュニケーションがとれるので、リモートワークでも「繋がっている感」が生まれます。やはり、ロンドンに移住したばかりのときは特に意識していましたね。
なるほど。
自分たちの会社でもリモートワークは実現できると知った
ちなみに、3年間という期限付きでテスト的にリモートワークを開始したことの効果と実際の感想をお聞きしてもよろしいですか?
- ジェイムズ氏
はい。まずは「リモートワークってできるんだ」と分かりました(笑)。それは自分自身の経験と、案件ごとに世界中の人と一緒に働くことで感じました。
リモートワークに関する記事を読み、自分でも実施してみたいと思っていたので、リモートで働くことは可能だと気づけたことは大きな経験です。そのため、僕以外のメンバーからもリモートワークを実施したいという意見があれば賛成しますね。
あとは、リモートワークを円滑に実施するためのノウハウができたので、これを今後どう使っていくか考えてみたいですね。
「今までこうしていた。だからこうしないといけない。」という考え方は捨てる
では、最後に、今後の会社の方向性について教えてください。
- 満尾氏
デザインを広義的に捉え、Webサイトやコンテンツの企画制作に限らず、クリテイティブの過程、効果的な管理方法に至るまで、その考え方をきちんとデザインすることで、アウトプットの質を高められるようなチームでありたいと思っています。リモートワークの活用もその一つですね。
- ジェイムズ氏
そうですね。クリエイティブなものを提供するためのプラットフォームとして会社があるので、それに最善な形に変化させていきたいです。リモートワークもそうですが、「今までこうだったからこうしないといけない」という考え方は避けるようにしたいですね。
そうしてプラットフォームの形を最善なものにしてくことで、お客様にとっても一番良い仕事ができるようになり、同時に社員がハッピーになると思うので。
インタビューは以上になります、ありがとうございました!
前編「世界中の人々とチームを組む。型にはまらない組織の働き方とは?」
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