リモートワークラボ

人さえいればオフィスをつくる!?地方をつなぐ働き方とは ~ ダンクソフト と ソニックガーデン

リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、サテライトオフィスを全国各地に持って、地方創生にも積極的に取り組んでいるダンクソフトの星野社長と皆さんが、ソニックガーデンに遊びに来てくれました。しかも、全国各地の人たちとオンラインで繋いでの対談に挑戦しました。

昔からリモートワークを実践している会社同士だから共感しあえる話から、地方をつなぐ働き方にたどり着いた経緯、これからの経営スタイルについて、じっくりと話をしました。


株式会社ダンクソフト

2015年で創業33年を迎えるIT企業の老舗。企業向けの大規模Webサイトの運用に加え、ソリューション事業、アプリ開発なども手がけている。「新しい働き方インテグレーター」として、ワークライフバランス、ダイバーシティなどにフォーカスした、テレワーク、サテライトオフィスといった先進的なワークスタイルの実践に取組んでおり、その姿勢は、経産省の「ダイバーシティ100選」への選出、テレワーク協会の「テレワーク推進賞」の受賞など、各方面で高い評価を得ている。


星野 晃一郎ほしの こういちろう

ダンクソフト代表取締役社長
モットー「時間は人生のために」

中村 龍太なかむら りゅうた

ダンクソフト、サイボウズ、NKアグリ(3社に「複業」で所属)

板林 淳哉いたばやし じゅんや

ダンクソフト エグゼクティブマネージャー

衣笠 純子きぬがさ じゅんこ

ダンクソフト 広報

倉貫 義人くらぬき よしひと

ソニックガーデン代表取締役
モットー「心はプログラマ、仕事は経営者」


第1回 全国のサテライトをつなぐバーチャル本社

倉貫

今回は、お互いにリモートワークを実践している企業同士ということで、お互いのツールや環境なんかも見せ合いながらお話させてもらえればと思います。よろしくお願いします。

星野

それは良いですね、よろしくお願いします。早速、私たちの全国のメンバーを紹介しましょう。

倉貫

・・・今、いらっしゃるんですね?物理的にはいないけど。

板林

そうです、「Skype for Business」を普段から使っていて、今回のためのバーチャル会議室を用意しました。

倉貫

それはすごいですね。

星野

じゃぁ、一人ずつ自己紹介をしてください。

(全国のダンクソフトのメンバーによる自己紹介の様子)

倉貫

徳島は市内のオフィスに、神山のサテライト、あとは藤沢の自宅からと、高知と。本当に全国からですね。

星野

そうですね、徳島のオフィスからは二人いるね。

倉貫

同じオフィスにいるけど、それぞれのパソコンから繋いでいるんですね。

大西(Skype)

はい、徳島オフィスは個々人で今こういうふうに入っているんですが、オフィス全体を映しているカメラもあって、そちらは東京オフィスや都市を結んでいるほうにつないであります。

倉貫

なるほど。しかも、在宅勤務をするのは、開発の人だけではないんですね。

中(Skype)

はい。私は週に1回、室町のオフィスに勤務しているんですけれども、それ以外は藤沢市にあります自宅で勤務をしています。会社のみんながスムーズに仕事をできるような、オフィス絡みの仕事を主にしています。

倉貫

普段の仕事もこんな感じで全員でつなぐ感じですか?

星野

そうですね、別の会議室だけど、見かけは同じですよ。こんな感じになってて「バーチャル本社」って呼んでます。

倉貫

バーチャル本社、良いですね。

星野

倉貫さんの本にも同じようなことを書かれてたと思うんですけど、ここに参加することが出社みたいな感じで、いつも見えてるんです。

倉貫

いつもオンラインで入っている人たちは総勢何名ぐらいで?

星野

オンラインで入っているのは10人ぐらい。いや、10カ所というか。

衣笠

拠点が4カ所で、あと在宅です。先ほどの中さんは在宅をしているので、彼女は同じように在宅でそこの会議室に入ってます。

倉貫

基本みんな、このバーチャル本社にいる感じですか?

板林

東京にはオフィスがあるので、1つのカメラでサテライトから見えているような状態です。

倉貫

なるほど。オフィスの人たちは、このSkypeの画面にないけれども、普通に席にいるという感じですかね。

星野

そうですね。本社用のバーチャル会議室だと、全体が映るようなカメラになっているので、そこを見れば、様子は見えるという感じですね。

倉貫

人の存在と雰囲気は見えるという。じゃあ、本社の人たちが、このどなたかに声をかけたいときはどういう感じでするんですか?

星野

その映っているところにモニターとマイクのセットが置いてあるので、そこに行って、マイクをオンにしてしゃべるんです。

板林

オフィスと別に東上野のほうにも古民家というか、ギャラリーをやりながらやっている場所があるんですけど、そこにも今2人ぐらいいて、そちらも同じようにつないでいます。

倉貫

わかってきました。一つに全員じゃなくて、幾つかの会議室の同時に入っているんですね。

板林

そうです、そうです。

倉貫

もはや在宅勤務とサテライトオフィス勤務は、普通にやっている感じですね。

星野

もうリモートワークは普通ですね。

倉貫

ダンクソフトさんは、今は全部で何人ぐらい、いらっしゃるんですか?

星野

28人ぐらいです。半分くらいは在宅です。

倉貫

サテライトは全国何カ所ぐらいなんですか?

星野

クアラルンプールを入れて、10かな。

倉貫

クアラルンプール!海外もあるんですか?その人たちも、このバーチャル会議室に入るんですか?

星野

はい。入りたいときは。彼らをつなぐのは、イベントのときにネタとして面白いから呼ぶというほうが多いですけど(笑)。

(一同笑)

星野

あとは映ってないけど、北海道にも、萩にもパートナーがいるので、バーチャル会議室に入ってもらうこともあります。

倉貫

本当に北から南までですね。

星野

北海道はマイナス20℃、クアラルンプールは30℃なわけです。間は50℃ですからね、同じ画面の中で(笑)。

(一同笑)

倉貫

同じ会社なのに50℃違う。一緒に仕事してるのに気候が違うというのもすごいことですよね。

第2回 震災をきっかけに全国のサテライトが始まった

倉貫

こんな地方からつなぐワークスタイルで働くようになったのは、いつからですか?

星野

震災以降なんですよ、地方に行き始めたのは。僕は東京の本社がある辺りで育っているので、あんまり地方って縁がなくてですね。

倉貫

なんと、そうだったんですか。

星野

震災をきっかけに地方にサテライトを作ることになって、たまたま徳島に行き始めてから、こんなことになってきて(笑)それが地方創生とかに繋がって。まさかこうやって地方の人を自分で雇用するとは全然思ってなかったわけです。それまで全く接点がなかったわけです。そこは面白いですよ。

倉貫

震災までは、こういうワークスタイルはやってなかった?

星野

いや実は、伊豆高原でサテライトオフィスを展開し始めたのが2008年で、さらに言えば、離れた場所で仕事をするっていうのは、もともと90年代から自分でやっていたので、そんなワークスタイルは当たり前のことだったんです。

倉貫

それは歴史がありますね。リモートワークの下地があったわけですね。

星野

当時は言ってみればリゾートオフィス。伊豆高原でカヌーをしたり、フライフィッシングをしたりみたいなのが、ITの真逆なこともたぶん必要でしょう、みたいな気持ちでやり始めたんです。

倉貫

リゾートオフィス、良いですね(笑)

星野

だけど、それが震災以降がらっと様相が変わってきて、BCP(事業継続計画)の話が出てきたわけじゃないですか。

倉貫

ええ、そうでしたね。

星野

震災以降、原発の問題が大きくて、あれはちょっと無理だろうなと思って。特に家族連れの人。家庭がある人たちは、やっぱりなんかあったときに子どもを連れて行ける場所がいるだろうなっていうのは思っていて、それがやっぱり最優先でしたね。

倉貫

なるほど。それは社員さんがっていうことですか?

星野

そうですね。自分たちもそうですよ、もちろんね。今はなんとなく安定しているように見えるけど。いつどうなるか分からないということを考えると、経営的にはやっぱり代替地を持っておいたほうがいいだろうっていうのもあって。

倉貫

東京に対するリスクと思いがあって、その候補地を探していたんですね。でも何故、徳島だったんですか?

星野

当時の私たちの東京のオフィスは50坪ぐらいスペースが空いてて、そこを地方にいる他所の会社のサテライトオフィスとしてシェアオフィスみたいな感じで貸してたんです。

倉貫

よその会社に貸していたんですか。

星野

そう、そこに5社ぐらい入ってて、それが全部徳島の人たちで。それが、たまたまなんです。

倉貫

すごい偶然。

星野

それで震災以降「どこかオフィスがないかな」って言っていたときに、「徳島がどうも回線が速いらしい」と。

倉貫

徳島の人が「らしい」と(笑)

星野

「らしい」って言うから、「じゃあ、1回見に行ってみようか」って言って2011年の5月から3カ月、毎月1回ずつ行って、あっちこっち調べて、10カ所ぐらいまわったんですけど。

倉貫

それは結構、行かれましたね。

星野

一番最初に気が付いたのが、伊座利っていう、100人ぐらいしかいない限界集落の漁村があるんですけど、すごい良いところにあるんですよ。秘境にあるんですけど。そこでYouTubeの自分が出ている番組の動画を見たら、スースー見れるんですよね。

倉貫

すごい。人がいないから、ガラガラだったんですか?(笑)

星野

と思うでしょう。その後、祖谷っていって、平家伝説がある山の奥のほう。高知のほうの古民家を改修して宿泊施設にしているイギリス人がいるんですよ。そこの古民家に無料のWi-Fiが置いてあって、その風景がきれいだからって、ピューッて動画をiPhoneで撮って、Facebookにアップしたら10秒でアップできたんです。

倉貫

そこそこ速いですね。

星野

徳島がむちゃくちゃ速い理由は地デジ化。山の反対側は民放は見れなくなるっていうんで、20万キロのケーブルを引き回しているんですよね。山の上でも、海の果てでも、人が住んでたら、たぶん政策上引かなきゃいけないからでしょうね。

倉貫

なるほど〜。じゃあ、徳島は回線が強いからサテライトを出そうかって?

星野

そう。あと受け皿があった。お遍路文化があるせいだと思うんですけど、外の人に対しての頑なさがなくて、受け入れやすいんです。

倉貫

それは面白い話ですね。

星野

お遍路さんだと、海外の人もいたりするけど、そういう人たちに「おもてなし」っていって食べ物をあげるという文化があるから、コミュニケーションは取りやすいんですよね。

倉貫

日本の田舎って閉鎖的な、保守的なイメージがありますけどね。

星野

徳島の特徴は、そうした受け入れやすいところじゃないかなと思いますね。それが大きかったな。

第3回 徳島サテライト立ち上げとコミュニケーション

倉貫

徳島サテライトの最初立ち上げはどういう感じで立ち上げられたんですか?

星野

徳島は、この竹内さんが。自分でしゃべってくれたほうがいいよね(笑)。いるんだから。

竹内(Skype)

はい。私が、以前に徳島で別の会社に勤めていまして、その会社をいくつかの事情で辞めたんですね。子どもが産まれるっていう理由もあって、ずっと徳島にいたいと思うようになっていたので。

倉貫

確かに、子どもさんが産まれるタイミングで住む場所のことを考える人は多いですよね。

竹内

それで次の会社を探していたときに、神山でサテライトオフィスの実験をやっていたダンクソフトと知り合って、これならリモートでも雇ってもらえる可能性があるんじゃないかなということで、社長の星野にもう面談というか直談判というか会いに行って「徳島で働きたいんで雇ってください」と。

倉貫

すごい。前例はなかったわけですね。

星野

そう、徳島の神山でサテライトの実験はしていたんですよ。ただし常駐じゃなくて非常駐で。だからリゾート的な使い方とか、当時は東京のリスク回避のための実験をしに行こうねっていうぐらいの感覚でいたんですけど、この人は「勤めたい」「神山は嫌だから市内がいい」って言うので、市内でオフィスを探して、最初にこの人が1人だけ徳島にっていう形でスタートしました。

倉貫

運がよかったというか、タイミングがよかったんですね。

星野

タイミングは、そこしかないですよね。

倉貫

お互いによかったというか。

星野

そう。だから、この人は、もうちょっとたったら、どっか決まっちゃってたかもしれなかったと思いますね。ITに勤めているからって、まだまだこういう働き方は普通じゃないじゃないですか。そういう意味ではよかったです。それが2011年。

倉貫

でも、そのときはまだ今のようなリモートワーク主体じゃなかったですね?

星野

ツール的にはこれの手前の段階。でも常時接続はしてなかったですね。繋ぐのは、その都度都度でした。

竹内

そうですね。常時接続はしていなくて、チームの定例みたいなのは週1であって、そこで「何をやろうね」とか進捗管理はした上で、あとは自分のほうで粛々と作業を進めて、何か詰まったらビデオ会議で先輩を呼び出して相談してたっていう。ポイントポイントでつないでいたっていう状態ですね。

倉貫

竹内さんは、それまでリモートワークをしてなかったんですよね?

竹内

そうです。リモートワークは一切していなかったです。

倉貫

初体験でやりにくくなかったですか?戸惑いは?

竹内

戸惑いは最初のほうはやっぱり多少はありましたね。コミュニケーションも円滑じゃないし、あと東京側の人も正社員を遠隔地でっていう経験はなかったので議事録で残す習慣も少なくて、東京側で口頭で話をされた仕様があって困ったり。

倉貫

今はもう、そういうのは解消されましたか?

竹内

そうですね。今は、僕の所属している開発チームでは東京側が4名、あと徳島側が3名、高知1名っていう、もう半々に近い状態なので、基本的に現地で仕様相談して、その場だけで議事録が残っていないというのはないですね。

倉貫

なるほど。じゃあ、もう口頭でやるよりも議事録をちゃんと残すという。

竹内

かなり改善されたので今はだいぶやりやすいです。

倉貫

うまく他の会社もリモートワークをする工夫とかありますか?

竹内

しょうもないつぶやきだとか、世間話でもなんでもいいんで、そういう雑談ができる場として、チームチャットも併用しています。

倉貫

それは開発チームの中だけでチャットを使っているという?

竹内

チャットに関しては、開発チームだけですね。全社でやっているのは、ビデオの常時接続をしましょうっていうのと、あとツールで課題とかタスク管理をしましょうっていうのは、他のチームでも結構使い始めている状態です。

倉貫

全社的に見るとダンクソフトさんのコミュニケーション基盤としては何が?

板林

いろいろ外に出ている人もいるので、一番多いのがやっぱりメールかもしれないですけどね。

星野

インフラはまだメールですね。

板林

でも、バーチャル会議室でやってもらっている人たちは、やっぱりチャットから始まるっていうのが多いですね。

倉貫

なるほど。

板林

こうしてバーチャル会議室で見えている状態であれば、「ちょっといいですか?」っていう形で声をかけるんですけど、そうじゃなくて、見えてないような状態のときはチャットになることが多いです。

倉貫

いろいろなツールを駆使されていますが、やっぱりツールが使える環境が用意されているのが、大事という感じですね。

竹内

そうですね。ツールはもちろん大事で、でもやっぱりツールを使う文化とか習慣ですかね。最初はやっぱりツールがあってもなかなかみんな記録しなかったりとかが多かったと思います。徐々に改善されてるかなと。

第4回 言い出しっぺ制度で広がるチャレンジする文化

倉貫

そういったツールを使うような文化があるのが、ダンクソフトさんの強みでしょうね。

星野

そうかもしれない。

倉貫

ツールはすでに沢山ありますよね。だからといって、いろんな会社さんが「ツールを入れたら、うちもダンクソフトみたいな働き方ができる」ってやると、たぶん失敗すると思うんですけど。

板林

ツールだけだと、そうですね。

倉貫

ダンクソフトの働き方を支えるカルチャーってどう言ったものでしょう?

板林

いろんなことに1人1人がチャレンジしやすい雰囲気はありますね。言い出しっぺ制度っていうのがあるんですけど。

倉貫

言い出しっぺ制度(笑)。言い出しっぺは損しそうな雰囲気がありますが。

(一同笑)

星野

そう。損にならないようにするところがミソで、やっぱり手を挙げた人にさせて、それをみんながサポートするみたいな文化があるんですよ。たぶんそういうのが大きいと思います。上からガンガンという感じの会社じゃないので。ツールや環境は用意しちゃいますけど、使うのは勝手に使ってっていう感じの企業文化はありますね。

倉貫

言い出しっぺ制度はどうですか?

板林

それのおかげでいろいろ進んでいる部分もあるんです。絶対損しないかっていうと、自分の仕事もあってさらになので、それはなかなか難しいところがあるんですけど。でも、だからこそ他にないような雰囲気とか文化って生まれているところがあると思うので。

倉貫

なにかエピソードありますか?

板林

前のオフィスのときに家具やデスク、椅子とかというのが、普通のオフィスのものだと、ちょっと嫌だという女性の社員がいまして。そのときに「どうしたらいい?」っていう話をしたときに、当時IKEAが日本に上陸したばかりで「IKEAの家具がいい」みたいな話をするので「どうぞ」みたいな(笑)。

(一同笑)

板林

なので、移転するときに彼女に全部「どのデスクを使って」とか「どの椅子を使って」とかっていうのを選ばせて、オフィスがもうIKEA一色になったっていうのがあったんです。

倉貫

「IKEAにしたい」って言って、反対は出なかったんですか(笑)?

板林

そのときはなかったですね。

星野

たぶん、みんな分かってなかったんだよね(笑)。オフィス家具がIKEAになるということ自体がどういうことになるのかって。

板林

IKEAにしたことによって、引き出しとか、置き机とかが全部なくなって、袖机とかも全部なくなっちゃって。

倉貫

そうですよね。日本のオフィス机じゃないですもんね。

板林

全部なくなっちゃいましたので、そのおかげでペーパーレスっていう取り組みもしているんですけど、物理的にもデータ化しないと働けないという状況にもなったので一石二鳥というか、よかったのかなと。

星野

あそこで引き出しをなくしたのは大きかったですね。

板林

大きかったです。たぶん。

倉貫

それ面白いですね。強制的になくなった訳だ。

星野

みんなIKEAとか分かんないうちにやっちゃったので。紙の置き場がなくなってるっていうのは、ある意味ではリモートワークに移行はしやすかったですよね(笑)。

倉貫

(笑)

星野

普通の会社はなかなかそこに行かないけれど、それが一気に行けた。なんとなくデザイン的にはきれいだし、楽しそうだねっていうほうが先でした。

板林

ソニックガーデンさんも、使ってらっしゃる机とかもIKEAですよね、きっと。

倉貫

そう、うちもIKEAですね。

星野

本当だ。懐かしい、見慣れた家具だ(笑)。

倉貫

自分たちで組み立てるんです。

星野

僕らも最初やりました。あまりに大変なので、2度目は頼んだけど(笑)。

板林

そうですね。頼むようになりましたね(笑)。

(一同笑)

倉貫

ソニックガーデンでは、中途で入ったら、一番最初は自分の机は自分で組み立てるということになってるんです。

星野

それ、いいですね。いや、あれは学ぶことが多いですよ。標準品の面白さというか。

板林

うちも一時期は新入社員が入って自分で机を組み立ててました、ドリルで(笑)。

星野

やってたよね。

倉貫

「入ってすぐには、お前の机はまだないぞ」って(笑)。

(一同笑)

第5回 ジャズのような経営と、自主的すぎる社員たち

龍太

僕なんかは複数の会社にいるじゃないですか。それで気付くんですけどダンクソフトの雰囲気って、やっぱりちょっと面白いんですよね。

倉貫

ちょっと変わってるという感じですか?

龍太

うん、変わってる。以前ちょっと例え話をしたときがあって、僕はマイクロソフトにいたんですね。マイクロソフトのときはどんな雰囲気かっていうと、楽団でいうとブラスバンドというか、マーチングバンドっていってね、1人指揮者がいて「一糸乱れず、こっちへ行きましょう」みたいな感じです。

倉貫

わかるような気がします。

龍太

今在籍しているもう一社のサイボウズだと、どっちかというとオーケストラで、それも小楽団みたいな感じ。社長の青野さんが一応指揮を振るんです。ただ楽譜も書いてあるんだけど、決めつけないで演奏者とうまく調和をしていくっていうか、彼がちょっと出してみて、その中から「こんな音がいいかな」みたいな感じをすり合わせをしていくような感じ。

倉貫

それで、ダンクソフトさんは?

龍太

ダンクソフトは、どっちかというと、ジャズみたいな感じ。お客さんとか周りの人がいて、それに対して音が鳴らせるやつが鳴らしていくみたいな。言い出しっぺが音を出しながら、次につなぎながら、この人の音が終わると誰かがひょっと入ってきてみたいな。

倉貫

セッションな訳ですね。

龍太

ツールの使い方も全く一緒で、もう決めてないですから、もちろんメールもあるんだけど、Facebookメッセージも多いし、とにかくいろんな集団とやり取りするので、その場に応じた「この人だったらこれだろう」みたいな感じで使い分ける。ツールが決まってない。Skypeのチャットもあれば、メールもあれば、音声もあれば、電話もあれば、Facebookもあれば、LINEもあればみたいな。

倉貫

会社としてあまり統率をとるというか、統制をとるようなことはあまり考えてないって感じですか?

星野

あんまりしてないですね。

龍太

考えてないです。

倉貫

考えてないって言っちゃっていいですか(笑)。

星野

もうそれぐらい、言い切っちゃったぐらいのほうが分かりやすい。

倉貫

それは逆にこだわりなんですか?昔からの社長のこだわりですか?

星野

昔はある程度は制約をかけてたんですけど、特に震災が大きかったです。震災のときに、うちの会社の人たちはすごい真面目で、僕らはNHKとかを一生懸命見て、とんでもない津波とか見て「これ、どうしようかな」って。

倉貫

そうでしたね。

星野

うん。あの瞬間、どんな状況でも自分たちで臨機応変に考えないとまずい、と学びました。一生懸命普通に仕事をしてて、真面目は真面目でいいんですけど、やっぱりそのままほったらかしにすると何も考えなくなっちゃうので、もうちょっと自分たちで勝手に考えなさいという風土を、そこから意識的に作ろうと。

倉貫

自分で考えるように、と。

星野

だから、それから僕は発言を減らして、自分たちで考えるようにさせていて、今は結果としてそうなってますね。だから、多少混沌もするんですよね。社内には僕の知らないツールが使われてたりしてる(笑)。

(一同笑)

倉貫

自由だからこそ、自分たちで考えるんですね。

星野

そうそう(笑)。でも、やっぱり自分たちが選んで体験することで学びが多いじゃないですか。どうしても上に人がいると、知らない間に導かれるだけで、それって危ないんだよね。

倉貫

確かに、それはあるかもしれません。

星野

だから、やっぱりそういうリスクヘッジっていう意味でいうと、1人1人が考えて自分が安全なほうに行ってくれないと、僕が全部面倒みれるわけじゃないから、今みたいな時代は。その結果で、今みたいになってるんだとは思いますね。

倉貫

僕らの会社も近い感じなんですけど、そうなったときの社長の仕事って何になるんですか?

星野

社長の仕事は、将来に向けての真っ直ぐな道を描いてるわけじゃなくて、このくらいの範囲の道や方向性の大枠を決めることで、その中で行ったり来たりする分には全然問題ないけど、ここからずれたときにちょいちょい言ってやるぐらいの話じゃないかっていう、羊飼いのリーダーシップみたいな感じ。後ろにいて「いくらなんでもそっちへ行っちゃまずいよ」っていう感じです。

倉貫

今のところ、道から外れる人は出ないですか?

星野

そりゃ外れたらいなくなっちゃう(笑)。

(一同笑)

板林

徳島にサテライトを出すときも、そんな話がありましたね。震災の後にどうしたらいいかって社長たちが視察に行った後に、「よし、神山だ」って言ったときに、実験するってなった時なんですけど。

倉貫

社長がいきなり「徳島だ」って言った時は、社員の中ではざわざわとかしませんでした?

板林

それはもうざわざわしましたね。何しろ経営的には、ぜひチャレンジしなきゃいけないっていう話だったんですけど、若手とかだと、やっぱり逆に、限界集落から東京に就職しに来たやつとかもいたりとかして。

倉貫

せっかく、これから「都会だ」って言って上京してきたのに。

星野

東京に来たのに(笑)。

板林

そう。「徳島には自然がいっぱいだよ」って、「知ってるよ!」みたいな(笑)。

(一同笑)

板林

じゃあどうするかって、社員みんなで話をしたときに、そのときのマネージャーとかリーダーが話をして決めたんじゃなくて、全員で考えようっていうので、社員を1人残らず神山に入れようっていう話になったんです。さすがに一度にみんなが行ってしまうと東京の仕事がまわらないので、2班に分けて、2回に分けてサポートする担当とワークする担当っていう形で神山へ全員で行ったんです。社長に言わずに。

星野

びっくりしたんだけど、僕は徳島に先行して行ってて、車で県庁の横の道をふって行ったら、知った顔のやつがいっぱいいるんだよね。「これ、ひょっとしてうちの社員かな?」って10何人かいて、「え?これ、大丈夫かな?会社は空っぽじゃないのかな」みたいな。

(一同笑)

板林

「みんなで行って1回仕事をしてみよう。それで帰ってみて、みんなで総合的に判断しよう」っていう話なんです。

倉貫

それで、もうみんな納得して大丈夫だと。

板林

そうですね。あのときは常設じゃなくて、合宿みたいな循環する形で期間限定っていうのもあったので、「じゃあ、いっか」みたいな。

星野

よく勘違いされているのは、「どうやってそういう地方に人を連れて行くんですか?」って質問があるんですけど、1人も連れてった人はいないのよ。

倉貫

そうなんですね。最初から現地の人たちで。じゃあ、採用の時点から、もう地方で?

星野

そうです。だから、今はそれで人が採れてる感じ。

倉貫

採用はどういうプロセスで、「ダンクソフトさんは地方でも働けるよ」って感じで人が来る感じですか?

星野

今、縁故みたいなのが多いですね。サテライトオフィスの実験にいったら、働きたいっていう人がいたりとか。

倉貫

でも、「入りたい」って言ったら「サテライトをつくるのか、どうするのか」みたいな話になるんですか?

星野

うちは働きたい人がいて、うちに合うようであればもうそこにオフィスを出しちゃうっていうスタンスでもう公言しているので、やらないってわけにいかないっていうところはありますね(笑)。

板林

方々に、「東京オリンピックまでに20拠点にするんだ」って社長が言ってます(笑)。

倉貫

すごい、それは達成しそうですね。

第6回 サテライトオフィスの会社と、論理出社の会社

倉貫

サテライトオフィスと在宅勤務は違うんですか?

星野

サテライトオフィスと在宅勤務は違いますね。オフィスが欲しい人がいるので。サテライトが良いっていう人のほうが結構多いですね。やっぱりお子さんがいると仕事がしにくいっていう人のほうが多いから、「そのためにオフィスを用意したほうがいいんじゃない?」って。

倉貫

じゃあ、地方に1人でもいればサテライトをつくって?

星野

はい。

倉貫

面白い。

龍太

ソニックガーデンさんとはどこが違います?

星野

そういうのを聞いてみたい(笑)。

倉貫

じゃあ、今度はこちらの画面をお見せしましょうか。

龍太

これがRemottyですか。

倉貫

そうです。これがRemottyで、弊社のオフィスです(笑)。顔をずっと映してはいるんですけれども、音声はつながっていません。チャットで皆と話します。僕らの場合は、オフィスにいても地方にいても、たとえメンバーが近くにいたとしても、全員がそれぞれのカメラで顔で映すことにしてます。

板林

リアルタイムなんですね。

倉貫

1分おきの画像ですが。オフィスの様子を映すというのもやったんですけど、地方の人とオフィスの人でハンディキャップができてしまうので、いっそ全員が在宅しているような形で、全員がログインすることを前提にしています。オフィスにいても同じです。

板林

論理出社、というやつですね。

倉貫

そうです、ログインしたら出社で、ログオフしてたらお休みになりますね。こうしてログインしているメンバーの顔を見ると、誰がどこにいるかあまりもう気にならないですね。私がここにいますけど、他のメンバーでいうと、彼が富山、彼が千葉の柏ですね。岡山、静岡、兵庫。彼は今は実家の大阪に帰ってますね。あとは広島、彼は神奈川の相模原。副社長も今は岡山に帰ってますね。

板林

画面で見ると、どこにいるかわからないですね。

倉貫

そう、だから良いんですよね。オフィスと在宅で差がない。仕事中は僕らは必ずここに入りましょうとしているので、仕事中のコミュニケーションはこの中のチャットで完結します。

板林

Remottyの特徴は、顔が映ってることですか?

倉貫

それが1つです。リモートワークをしていると、存在感が消えてしまうことがあるのでカメラで映しっぱなしにすると、本人は努力しなくても存在感を出すことができるんです。アイコンではダメで、ライブ画像にしていて、この瞬間の様子が見えるので、在席をしているかどうかもすぐにわかって、声をかけやすいんです。

板林

確かに、それはありますね。相手の様子がわからない電話はかけにくいですから。

倉貫

もう1つの特徴は、参加している全員に通知がいかないってことですね。facebookのようなもので、自分用のタイムラインを持っているので、自分のところに書き込んだ内容は、右側のアクティビティと呼んでるところには流れますが、通知はいきません。だから、独り言のような内容でも発信しやすいんです。

板林

人数が増えてくると、ちょっとしたことを書きにくくなりますからね。

倉貫

そうなんです、だからといって個別グループで内密に話されると、情報共有が滞ってしまいます。だから、みんなの見えるところで話してもらう。その話してる当人同士だけに通知が行くようになっています。

板林

誰と誰が話してるのかわかりますか?

倉貫

タイムラインの下のあたりにアイコンが出てると思いますが、その人たちが同時に見ている人たちです。例えば、ここに人を呼んでみましょうか。(「@here 集まって」と入力する)

板林

すごい、集まってきた。

星野

すごい、速い。

倉貫

こんな風に話したい人と、話したい場所で話せるんです。@でメンションを飛ばして呼ぶこともできますし、その人のタイムラインに行って話しかけることもできます。

板林

これ、席の周りに集まってくる感じですね。

倉貫

そうなんです、アクティビティに流れているのを見て、興味のある話題なら一緒に話に入ることができるんです。仕事に集中してる時は見なくてもいい。まるでオフィスと変わらないですよね。

板林

これは楽しいですね。

倉貫

個人のタイムラインと、全体のアクティビティで、独り言も書き込みやすくなるので、「おはようございます」や「ご飯食べてきます」なんかを書き込んだりしますし、ちょっとした困ってることや、なんでもないことを書き込んでおくと、そこから雑談のきっかけになったりします。

龍太

Remottyが想像以上にオフィスですね。

倉貫

ソニックガーデンでは、今はサテライトはなくて、地方の全員が在宅勤務しています。地方の場合、家も広くて仕事場を持てたりするので、もういいでしょうって。給与水準を地方と東京で分けてないので、地方に行けば行くほど豪邸に住んでるんですけど(笑)

星野

そうですね。それはうちも同じ(笑)。

龍太

これは自分たちでお作りになってるんですよね?

倉貫

そうなんです。ソニックガーデンでツールが統一されてるのは、自分たちでつくってることもある気がしますね。

星野

そうですよね。作っていく人だからね(笑)。

倉貫

自分たちで作っていくのが一番フィットするんです。あと、作るのが好きな人たちなので。不満があれば自分たちで直しちゃうので(笑)。

(一同笑)

倉貫

このツールも最初は10人ぐらい用に作っていたんですけど、だんだん社員の人数が増えてきたので、それに合わせてユーザーインターフェースをだんだん変えてきました。これからもまた人数が増えるので、人数の増加に合わせてたぶん改良していくとおもいます。

龍太

他の会社で使ってる人っていらっしゃるんですか?

倉貫

はい。使ってくださってる会社さんはありますね。まだ実験段階というか、僕ら自身もこれをずっと直していくので、僕らが直していくのにお付き合いいただけるところと一緒にやらせてもらってますね。

第7回 リモート飲み会って楽しいの?楽しいですよ!

衣笠

そういえば、リモートで飲み会までしてしまうとか?

倉貫

リモート飲み会、やりますよ。

衣笠

やるんですね(笑)楽しいイメージがちょっとわかないのですが、どんな感じで楽しくなるかとかあれば、教えてください。

倉貫

今、見ている画面の感じで、そのまま皆さんがアルコールとおつまみを持ってくれば、リモート飲み会です(笑)

(一同笑)

衣笠

おつまみとかが同じのが共有されないと、寂しくなったりしないのかな、とか?

倉貫

そうなんですよね。それは、いつか「出前館」っていうソリューションを使おうかなっていう。

(一同笑)

倉貫

でも、お酒が飲めない人もうちのメンバーにはいたり、どうしてもワイン好きの人がいたりとかして、むしろ、もう各自が好きなものを飲んで、好きなものを食べることができるので、案外いい感じです(笑)。

衣笠

とてもゆるい感じなんですね。

倉貫

そう、とてもゆるいです。それに普通の飲み会と違って、夜9時ぐらいからスタートします。普通の飲み会は7時とかじゃないですか。でも、僕らはもう家族との団らんを過ごして、一息ついて、晩酌タイムをみんなで。

(一同笑)

衣笠

晩酌を飲み会にするんですね。

倉貫

そうです。なので、もうお風呂も済ませて、もうゆったりした格好で。

星野

それは面白いかもね。

衣笠

女性も参加される?

倉貫

女性も参加してますよ。でも、カメラをオフにして映ってないときはある(笑)。

(一同笑)

衣笠

それはそうですよね。

倉貫

そんな時でも音声で。

衣笠

お開きとか、解散は、どんな感じであるんですか?

倉貫

お開きはないんですよ。バタバタと死んでいきます(笑)。

(一同笑)

衣笠

流れ解散。バタバタと死んでいく。いいですね(笑)。

倉貫

はい。飲み会の会場のURLだけが決まってるので、そのURLを共有しておくと「やってる?」って感じで入ってきます。

衣笠

なるほど(笑)。

倉貫

で、好きなだけしゃべって、眠くなったら「落ちます」って言って落ちる。「お疲れ」って言って(笑)。

(一同笑)

板林

いいな。

衣笠

地元の飲み屋みたいな感じ、そういう感じですよね。

倉貫

そうです。ぜひリモート飲み会をやってみてください(笑)。

(一同笑)

倉貫

これは馬鹿にしたもんじゃないですよ。本当に楽しいですからね(笑)。

衣笠

楽しそうです。

龍太

ね(笑)。

板林

ダンクソフトは何度か拠点間宴会みたいな、お互いの宴会同士をビデオでつなぐというのは何度かトライしてるんですけど、結構失敗気味なんですよ。

倉貫

そうです。それは僕らも失敗したんですよ。一番の失敗は、このオフィスで宴会をして、岡山のメンバーにつなぐってやってカメラを置いておくんですけど、こっちで盛り上がっちゃって存在を忘れちゃうっていう。

板林

そうなりますよね。

倉貫

そうすると向こうの人がすっと消えてしまう(笑)。

(一同笑)

星野

同じ、同じ(笑)。

倉貫

だから、リモート飲み会で一番いいのは、もう全員自宅からすることですね。

衣笠

そういうことですよね。

星野

フェアにね。

板林

終電も気にしなくていいし。

倉貫

だから逆に、リモート飲み会があるときは、みんな早く家に帰るっていう(笑)。

(一同笑)

板林

いいかもしれない(笑)。

星野

そうね(笑)。

倉貫

今日は早く帰って、リモート飲み会に備えるっていう。

星野

なるほど。9時からってミソかもな。

衣笠

そうですね。

星野

11時、12時は眠くなっちゃうけど。

倉貫

家だと、それで全然いいんです。9時からでも全然みんなOKですよね。2時間飲んでもまだ11時です。

衣笠

ですよね(笑)。

倉貫

そして、眠くなったら、帰宅時間ゼロですぐ寝れる。やってみたくなったでしょう?

第8回 採用の面談からオンラインで始まり朝礼すらも

板林

ソニックガーデンさんの採用は、どうやってメンバーを集めてくるんですか?縁ですか?

倉貫

以前は縁故だったんですけど、今は普通にウェブからですね。そして最初はオンラインで面談をさせてもらいます。一番最初はやっぱりオンラインで面談させてもらわないと、その人がオンライン業務ができる人かどうか分からないので。

板林

そうですよね。同じです。

倉貫

たまにいるんですけど、応募した方に「オンラインで面談しましょう」って言うと、「やっぱり熱意を伝えたいので会いたいです」と。「会いたいです」って言われた瞬間に「残念!ごめんね」って言って(笑)。

(一同笑)

板林

すごく分かります。

倉貫

「いやいや、画面越しで熱意を伝えられないやつはダメだよ」って言って、「お客さんと話ができないってことだから」って。

板林

お客様ともオンラインなんですね。

倉貫

はい。お客さんとの打ち合わせもオンラインでさせてもらうか、オンライン環境がないのであればうちに来ていただいて、うちの環境を使ってしてもらいます。たまにですが来ていただいても、メンバーが誰もいなくてお客さんだけここに座って。お茶だけ出すみたいな(笑)。

(一同笑)

星野

いいね(笑)。

倉貫

東京近郊に住む人も基本は在宅勤務OKなんです。どちらかというと在宅勤務が基本で、オフィスは来たい人だけ来ましょうっていう会社なんですね。だけど、みんな家に仕事の場所がないから、カフェやどこかに行くくらいなら、ここに来て仕事をしましょうって集まってきますね。割と柔軟に、「午前中は家で、午後からオフィスです」とか「今週、火水は家にいます」とか普通ですね。

板林

その辺の予定とかっていうのは、どういうふうに共有しているんですか?

倉貫

予定は基本的にGoogleカレンダーで分かるようにはなっていますけど、このRemottyの中にいるので、聞きますね。

板林

そうですよね。聞けばいいですし、いるかどうかわかりますね。

倉貫

毎日、普通に出社するのと変わらないので、連絡もなくてRemottyにいなかったら「今日は出社してなくて、どうしたんだろう」みたいに心配したりします。

板林

ちなみに、皆さん、パソコンなどの環境っていうのはそろえていらっしゃるんですか?

倉貫

パソコンとしては、Macを使ってるのがほとんど、エンジニアはMacが好きなので。Macだとカメラが付いてるので、もうそれで十分って感じですかね。

板林

じゃあ、Macに付いている標準のマイク、スピーカー、カメラでやっている?

倉貫

はい、それでもうやってます。こうやって何人かで打ち合わせするところをリモートでやるときは、マイクやカメラとか、立派なのを使うんですけど、大体1対1での打ち合わせや、3拠点で1人ずついるようなときは、自分のパソコンで話すだけなので、もうMacのイヤホンで全然ノイズも入らずにできちゃうんですね。

星野

iPhoneのやつね。

板林

そのイヤホンは僕らも使いますね。

倉貫

そう。イヤホンのほうが多いです。だから、みんなイヤホンをしながら仕事をしてる。音楽を聴きながら仕事をしてる人もいると思うんだけど、でも別にそれでもよくて。打ち合わせの時は、各自のパソコンでミーティングするのが、一番スムーズです。地方の人との打ち合わせでオフィスにいる人が数人いても、その人たち同士も自分のパソコンでつなぐので、近くにいたら、あえて離れるようにします(笑)。

星野

逆に離れるんだ(笑)。

倉貫

そう、逆に「近くに寄ってこないで」って言って。

板林

あとちょっと気になるのは、電話や外部の方とのやり取りとかっていうのは、どうされてるんですか?

倉貫

うちは電話がないんですよ。一応緊急用に1台用意してはいるんですけど、ホームページから電話番号を消しまして、お客さんにも伝えませんので、電話のやり取りはなしです。

星野

ゼロ。基本はもうメールとかっていう。

倉貫

契約しているお客さまとは専用ツールがあって、そのツールの掲示板でやっています。社内でのメールはゼロですね。メールもないし、電話もないし、紙もないし、勤怠管理もないし。メンバーもいつ働いてもいいし、いつ休んでもいいし、会社に来るっていうか、ここにログインするのも特に決まった時間があるわけではないし、あまりそれこそ何も管理してない(笑)。

(一同笑)

龍太

社長は何をしてるんですか(笑)?

倉貫

社長の大事な仕事の1つは、ビジョンの話をするとか、会社全体で起きてることを話すとか、会社の価値観を伝えるっていうことは大事なことだと思っていて、僕の一番、毎日のノルマの1つは社長ラジオっていう。

龍太

本に載ってますよね。

倉貫

はい。それを毎朝、今朝も録音してきましたけど、毎朝みんなに配信するっていうのが、1日で一番重たい仕事ですね(笑)。

(一同笑)

龍太

毎日5分ですもんね。大変ですよ。

板林

皆さん、社長の肉声を聞かれるわけですよね。

倉貫

そうなんですよ。それで、なんとなく勝手に親近感を覚えてもらえてます。統率はとらないですけど、伝えることだけ伝えるのが仕事ですかね。ルールとかはなくて、あとはもう自主的に動いてくれるのを期待してます。

第9回 会社としてのリモートワークのための拠り所を

板林

就業規則はないのですか?

倉貫

もちろん、就業規則は用意はしてますけど、がちがちにそれで縛ってるかっていうと、そんなことはないですね。

板林

私たちのところに相談に来られて、テレワークとかサテライトオフィスをやりたいっていう会社さんがいるんですけど、やっぱりルールとかをどうしたらいいのかってすごい悩んでる。

倉貫

そうですね。そこは結構多くの会社が迷っているし、先進的な会社は試行錯誤されていると思っています。そもそも、これまでの一般的な就業規則はリモートワークを前提にしていないですからね。

板林

そうそう。

倉貫

とはいえ、多くの会社さんで知りたいのは、ちゃんとしたルールでしょうね。そのあたりの不安を払拭したいと思っているはずです。なので、これからもっと規則などが整備されていくべきかな、と考えています。でも、そこは1社での話ではなくて、すでに実践している企業同士、連携をとって共有していきたいな、と思っています。

星野

そうですね。

倉貫

ダンクソフトさんとしては、これからもリモートワークという働き方は、推奨していく感じですか?

星野

それは普通になっていかざるを得ないというか、今みたいな時代の流れはそっちにしか行かないですよね。戻ることはないと思う。同じ場所にいなきゃいけないという制約はあまり意味がないとは思いますね。

倉貫

そう思います。

星野

だって、東京は今みたいに人が採れなかったら、ITの業界は成り立たないでしょう。10年、20年のスパンで考えたら、ここにずっとオフィスを構えるっていうのはたぶんないと思う。これから人はどんどん減るじゃないですか。その中で雇おうとすると、もっと分散できたほうが楽しいし、だからそれこそ夏は北海道ですよ。そこを目指したほうが僕はよっぽどいいと思う。

倉貫

リモートワークをやってみて、場所というよりも、どちらかというと、時間から働き方が自由になったなって感じはすごくしていて。

星野

そうですね。

倉貫

昔は通勤するとオンで、退社してオフになるみたいな1日1回しかオン・オフがなかったのが、リモートワークを始めたら、いつでもオン・オフができるようになって、もっともっと柔軟に働けるな、という感覚です。例えば、1時間だけ授業参観するとか、市役所に行くとか、個人の用事を、仕事の中に混ぜることだってできるし、旅行と出張も混ぜることだって出来る。

星野

確かに、そうなってきますね。

倉貫

話題の育児休暇だって、完全にオンかオフか、という話になると、本人も会社側も大きな負担になるんですよね。それをゼロイチで考えるのでなく、少しずつ働き続けるとかできても良いんじゃないか、と思います。そのためのリモートワークでもあるな、と。

星野

そうです、そのためには企業としてどうするか、考えないといけませんね。

倉貫

はい、本当にリモートワークを広めるためには、会社として社員を雇用した中で、離れた場所にいても働いてもらうことができる制度をどうするか、そこがポイントになると思います。

板林

そうなんですよね、実際のところ「ツールをどうしたらいいですか?」っていうよりは、「ダンクソフトさん、制度はどうなってますか?」っていう質問のほうが多いですよね。

星野

多いですよね。

倉貫

今、テレワークやクラウドソーシングなど、様々な言葉がありますが、リモートワークという言葉で取り組むべき問題は、企業として取り組むことだという認識だろう、と私は考えています。実践する上でのノウハウは、実は既に環境も整っていてツールもあるので、さほど難しくなくて、やっぱり制度ですね、制度のガイドラインが欲しい。

板林

確かに本当に課題なのは、働く時間のところで、その辺りが改善されると一気に始めるところが増えると思うので、絶対に必要だと思っています。

倉貫

リモートワークを実践している企業同士、引き続き、ぜひ制度に関する情報交換させてください。今日は、長い時間頂き、お話できて楽しかったです。ありがとうございました。

星野

はい、こちらこそありがとうございました。

取材後記

ダンクソフトさんのことは、サテライトオフィスを展開されていることもあって以前から知っていて、ぜひお話をさせて頂きたいと思っていました。そして、実際に話してみると、初めて会ったとは思えないほど共感することが沢山あったんです。

もちろん私たちソニックガーデンとは、リモートワークの実践の形は異なりますが、それでも、非常にフランクで、ジャズのように自律的に、そして新しいことに楽しみながら取り組む社風については、共通しているように感じました。

ダンクソフトさんのようにリモートワークが普通になっている会社に共通する点の一つは、新しい働き方や、働き方の変化に対して、社員の皆さんが恐れることなく取り組む姿勢で、その結果が今の働き方につながっているのでしょう。

きっと、この先も世界の変化にあわせて働き方を変え、自分たちの働き方を変えていくことで世界の変化に飲まれることなく、楽しくやっていくというのが、ダンクソフトさんのスタイルではないかと、今回の対談を通じて感じました。

(株式会社ソニックガーデン 倉貫義人)

 

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