人さえいればオフィスをつくる!?地方をつなぐ働き方とは ~ ダンクソフト と ソニックガーデン

人さえいればオフィスをつくる!?地方をつなぐ働き方とは ~ ダンクソフト と ソニックガーデン

第5回 ジャズのような経営と、自主的すぎる社員たち

龍太

僕なんかは複数の会社にいるじゃないですか。それで気付くんですけどダンクソフトの雰囲気って、やっぱりちょっと面白いんですよね。

倉貫

ちょっと変わってるという感じですか?

龍太

うん、変わってる。以前ちょっと例え話をしたときがあって、僕はマイクロソフトにいたんですね。マイクロソフトのときはどんな雰囲気かっていうと、楽団でいうとブラスバンドというか、マーチングバンドっていってね、1人指揮者がいて「一糸乱れず、こっちへ行きましょう」みたいな感じです。

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倉貫

わかるような気がします。

龍太

今在籍しているもう一社のサイボウズだと、どっちかというとオーケストラで、それも小楽団みたいな感じ。社長の青野さんが一応指揮を振るんです。ただ楽譜も書いてあるんだけど、決めつけないで演奏者とうまく調和をしていくっていうか、彼がちょっと出してみて、その中から「こんな音がいいかな」みたいな感じをすり合わせをしていくような感じ。

倉貫

それで、ダンクソフトさんは?

龍太

ダンクソフトは、どっちかというと、ジャズみたいな感じ。お客さんとか周りの人がいて、それに対して音が鳴らせるやつが鳴らしていくみたいな。言い出しっぺが音を出しながら、次につなぎながら、この人の音が終わると誰かがひょっと入ってきてみたいな。

倉貫

セッションな訳ですね。

龍太

ツールの使い方も全く一緒で、もう決めてないですから、もちろんメールもあるんだけど、Facebookメッセージも多いし、とにかくいろんな集団とやり取りするので、その場に応じた「この人だったらこれだろう」みたいな感じで使い分ける。ツールが決まってない。Skypeのチャットもあれば、メールもあれば、音声もあれば、電話もあれば、Facebookもあれば、LINEもあればみたいな。

倉貫

会社としてあまり統率をとるというか、統制をとるようなことはあまり考えてないって感じですか?

星野

あんまりしてないですね。

龍太

考えてないです。

倉貫

考えてないって言っちゃっていいですか(笑)。

星野

もうそれぐらい、言い切っちゃったぐらいのほうが分かりやすい。

倉貫

それは逆にこだわりなんですか?昔からの社長のこだわりですか?

星野

昔はある程度は制約をかけてたんですけど、特に震災が大きかったです。震災のときに、うちの会社の人たちはすごい真面目で、僕らはNHKとかを一生懸命見て、とんでもない津波とか見て「これ、どうしようかな」って。

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倉貫

そうでしたね。

星野

うん。あの瞬間、どんな状況でも自分たちで臨機応変に考えないとまずい、と学びました。一生懸命普通に仕事をしてて、真面目は真面目でいいんですけど、やっぱりそのままほったらかしにすると何も考えなくなっちゃうので、もうちょっと自分たちで勝手に考えなさいという風土を、そこから意識的に作ろうと。

倉貫

自分で考えるように、と。

星野

だから、それから僕は発言を減らして、自分たちで考えるようにさせていて、今は結果としてそうなってますね。だから、多少混沌もするんですよね。社内には僕の知らないツールが使われてたりしてる(笑)。

(一同笑)

倉貫

自由だからこそ、自分たちで考えるんですね。

星野

そうそう(笑)。でも、やっぱり自分たちが選んで体験することで学びが多いじゃないですか。どうしても上に人がいると、知らない間に導かれるだけで、それって危ないんだよね。

倉貫

確かに、それはあるかもしれません。

星野

だから、やっぱりそういうリスクヘッジっていう意味でいうと、1人1人が考えて自分が安全なほうに行ってくれないと、僕が全部面倒みれるわけじゃないから、今みたいな時代は。その結果で、今みたいになってるんだとは思いますね。

倉貫

僕らの会社も近い感じなんですけど、そうなったときの社長の仕事って何になるんですか?

星野

社長の仕事は、将来に向けての真っ直ぐな道を描いてるわけじゃなくて、このくらいの範囲の道や方向性の大枠を決めることで、その中で行ったり来たりする分には全然問題ないけど、ここからずれたときにちょいちょい言ってやるぐらいの話じゃないかっていう、羊飼いのリーダーシップみたいな感じ。後ろにいて「いくらなんでもそっちへ行っちゃまずいよ」っていう感じです。

倉貫

今のところ、道から外れる人は出ないですか?

星野

そりゃ外れたらいなくなっちゃう(笑)。

(一同笑)

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板林

徳島にサテライトを出すときも、そんな話がありましたね。震災の後にどうしたらいいかって社長たちが視察に行った後に、「よし、神山だ」って言ったときに、実験するってなった時なんですけど。

倉貫

社長がいきなり「徳島だ」って言った時は、社員の中ではざわざわとかしませんでした?

板林

それはもうざわざわしましたね。何しろ経営的には、ぜひチャレンジしなきゃいけないっていう話だったんですけど、若手とかだと、やっぱり逆に、限界集落から東京に就職しに来たやつとかもいたりとかして。

倉貫

せっかく、これから「都会だ」って言って上京してきたのに。

星野

東京に来たのに(笑)。

板林

そう。「徳島には自然がいっぱいだよ」って、「知ってるよ!」みたいな(笑)。

(一同笑)

板林

じゃあどうするかって、社員みんなで話をしたときに、そのときのマネージャーとかリーダーが話をして決めたんじゃなくて、全員で考えようっていうので、社員を1人残らず神山に入れようっていう話になったんです。さすがに一度にみんなが行ってしまうと東京の仕事がまわらないので、2班に分けて、2回に分けてサポートする担当とワークする担当っていう形で神山へ全員で行ったんです。社長に言わずに。

星野

びっくりしたんだけど、僕は徳島に先行して行ってて、車で県庁の横の道をふって行ったら、知った顔のやつがいっぱいいるんだよね。「これ、ひょっとしてうちの社員かな?」って10何人かいて、「え?これ、大丈夫かな?会社は空っぽじゃないのかな」みたいな。

(一同笑)

板林

「みんなで行って1回仕事をしてみよう。それで帰ってみて、みんなで総合的に判断しよう」っていう話なんです。

倉貫

それで、もうみんな納得して大丈夫だと。

板林

そうですね。あのときは常設じゃなくて、合宿みたいな循環する形で期間限定っていうのもあったので、「じゃあ、いっか」みたいな。

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星野

よく勘違いされているのは、「どうやってそういう地方に人を連れて行くんですか?」って質問があるんですけど、1人も連れてった人はいないのよ。

倉貫

そうなんですね。最初から現地の人たちで。じゃあ、採用の時点から、もう地方で?

星野

そうです。だから、今はそれで人が採れてる感じ。

倉貫

採用はどういうプロセスで、「ダンクソフトさんは地方でも働けるよ」って感じで人が来る感じですか?

星野

今、縁故みたいなのが多いですね。サテライトオフィスの実験にいったら、働きたいっていう人がいたりとか。

倉貫

でも、「入りたい」って言ったら「サテライトをつくるのか、どうするのか」みたいな話になるんですか?

星野

うちは働きたい人がいて、うちに合うようであればもうそこにオフィスを出しちゃうっていうスタンスでもう公言しているので、やらないってわけにいかないっていうところはありますね(笑)。

板林

方々に、「東京オリンピックまでに20拠点にするんだ」って社長が言ってます(笑)。

倉貫

すごい、それは達成しそうですね。