全国60箇所以上の教室をつなぐのは、社会を変える熱い思い ~ NPO法人マドレボニータ

リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、出産前後の女性の心と体の健康をサポートするための非営利団体マドレボニータさんに話を伺いました。全国60箇所を超える教室があり、多くのインストラクターたちとリモートでつながり、しかも運営している事務局メンバーも全員がリモートワーク。

さらに、そんなリモートワークをオフィスなしで運営されているということで、一体どんな経営をされているのか、代表の吉岡さんと理事の林さんにお話を伺ってきました。ワークスタイルだけでなく、立ち上げた思いから、カルチャーや組織運営ノウハウまで幅広い話を聞くことができました。


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吉岡 マコよしおか まこ

マドレボニータ代表
自らが経験した、心身ともにツラい産後の経験から「産後はダイエットではなくリハビリ!」「家族の幸せは母の健康から!」と痛感し、以来、産前・産後に特化したヘルスケアプログラムの開発、研究・実践を重ねる。現場で研究・改良を重ねたプログラムは多くの産後女性の支持を受け、全国各地より要請を受ける。産後のヘルスケアの社会的な必要性を実感し、2007年11月にNPO法人マドレボニータを設立。
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林 理恵はやし りえ

マドレボニータ理事 経営企画担当
金融系SIerにてPG,SE,PMを経て、システム開発プロセス改善を担当。第1子出産後にコンサルタントに転職、第2子出産後に面白法人カヤックに移りWeb制作の受託業務マネジメントを担当。人材紹介会社のシステム部PMOを経て、現在、マドレボニータ理事。
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倉貫 義人くらぬき よしひと

ソニックガーデン代表取締役
ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指す。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。

オフィスがなくてもうまくいく

倉貫

今日は、なんとオフィスを持たずにNPOの運営をされているというマドレボニータの代表の吉岡さんと理事の林さんに、リモートワークの話を聞かせてもらおうと思います。

吉岡・林

よろしくお願いします。

倉貫

今日のこの取材場所もオフィスという訳でもないですよね?

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吉岡

ここは、たまに仕事をするときやこんな風に取材を受けるときに使っているシェアオフィスです。

だから私たちのオフィスという訳ではないんです。

倉貫

本当にオフィスなしでやってらっしゃるんですね。

そうなんです。吉岡が一人で始めた時から今までずっとオフィスなしです。

倉貫

それは筋金入りのリモートワークですね(笑)

吉岡

リモートワークといえば自宅というイメージがあると思うんですけど、そもそもマドレボニータの仕事場はスタジオなんです。

倉貫

スタジオというと?

吉岡

マドレボニータでは、母親たちが赤ちゃん連れでできる産後の心や体を整えるための教室をやっています。出産でダメージを受けた体を回復させて心もケアしていくための教室を、全国60箇所以上で展開しているんですね。だから、現場といえばオフィスではなくてスタジオになるんです。

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倉貫

具体的に教室ではどんなことをするんですか?

吉岡

バランスボールを使った有酸素運動です。弾みながらのエアロビクスみたいな感じで、結構な汗をかくような運動をするんです。実は今まで、こういった出産後の女性のためのサービスって、ほとんどなかったんですよ。

倉貫

なかったんですか。

吉岡

うん。妊婦さんへのサービスっていうのは、母親学級とかいろいろあるんですよね。

倉貫

確かに。雑誌とかもいっぱいありますね。

吉岡

いっぱいあるでしょう。それで出産した後の主役は赤ちゃんになっちゃう。

倉貫

そうですね(笑)。

吉岡

赤ちゃんスイミングとか、赤ちゃん体操とか、赤ちゃん英会話とか、別に大人だって習えばいいのにね(笑)。全然そういうのがなくて。

倉貫

それで産後の女性のための教室になる訳ですね。

吉岡

そう、その教室が増えていくにあたって、インストラクター同士が情報を共有したり、現場での知見を持ち寄ってみんなでディスカッションしたり、それをするにはインストラクターが全国に点々としているので、「じゃあ、リモートでも連絡が取り合えるような方法はないかね」で始まったのが原点なんですよ。

倉貫

リモートなら集まらなくても全国展開できる、と。

吉岡

最初はもう事務局すらなかったですね。まずは教室が拠点だったんですよね。それが今、全国展開できているのは、どこからでも繋がったり、Skypeで会議ができたり、リモートのテクノロジーが現れてきた頃と合致したからですね。

倉貫

そうか、教室さえあればオフィスは要らないのですね。

吉岡

そう、教室がマドレボニータの活動の軸だからです。それをリモートで繋ぐことで、全国に展開しても同じクオリティで、同じモチベーションを保ってやっていくっていうことが可能になっているんです。

倉貫

リモートワークだけど、全国各地には教室があって、地域に根付いてるんですね。

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月に一度の全体報告会
地方のメンバーはオンラインで参加する

吉岡

私たちも現場を手探りで改良しながらやっていってるので、実際の産後女性とたくさん出会って、サービスを提供しながら日々学んでいるんです。

倉貫

そこはリアルな声で。

吉岡

そこから、これって本当にこのスタジオに来た人だけが助かるんじゃなくて、もう日本社会の問題だよねっていう話になり、日本の母子保健が妊婦までしかケアしてなくて、産後をケアしてないっていう社会の構造に気付いてきたり。

倉貫

解決すべきは社会問題だったと気付く訳ですね。

吉岡

じゃあ、それを変えるためには、各地でバラバラに教室をやるのではなく、ちゃんと繋がって1つのメッセージを持って世に訴えることをしていかなきゃいけない。そうなって初めて、事務局の機能が必要になってきた。それで法人化したんです。