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第1回から読む
それまでは法人という訳ではなくて、ただ教室が点々とあった感じですか?
そうなんです。個人事業主みたいな感じで、やりたいという人に、だいたい1~3カ月ぐらいのコースで教えて、あとはもうそれぞれ勝手にやってたという感じなんです。
勝手に教室が増えていったわけですね。
でも、それぞれ勝手にやっていくとクオリティが保てないし、やっていく中で気付いたこととかを「みんなで情報共有したいね」っていう動きがインストラクターからも出てきたんですよね。
ええ。
なので、定期的に集まったりっていうことが始まって、そこから形にしようって動きから法人化することになったんです。
自然な流れだったんですね。
でも、法人化した段階で認定制度を整備するという形にしたら認定を取らないで「辞めます」と去っていった人もいましたね。
もうそこに入らずに。
そうです。でも、ただ教室をやればいいんじゃなくて、社会にメッセージを打ち出していくっていうことがやっぱりNPOの役割だよねっていうことが分かってくださっている方は残ってくれて、それでNPO法人化したんですね。
会社なのか、NPOなのか、どうやって考えました?
そうですね。サービスを提供して対価をいただいて、すごい儲かる事業だったらNPOにしなくてもいいと思うんです。その経済合理性だけで広まっていくのであれば、サービスとして日本社会に定着して、みんながハッピーということであればいいんだけど、この産後の問題って実はもっと構造的な問題があって。
構造的な問題とは?
例えば、産後の教室も、今は皆さんにお金を払っていただいて受けてもらってるんだけど、本来ならばこういうものは、母親学級に無料で行くのと同じように、本人の受益者負担ではなくて、税金とか何かしらの拠出をして。
公的なものが入ったほうがいい、と。
そうですね。公的なお金が入って、それですべての人に行き渡るべきものだと思うんですよ。今はアーリーアダプターの方にお金をいただいて、サービスを充実させたり、担い手をちゃんと増やしたり、基本的なインフラを整える時期なんですけど。
そうですね、スタートアップ的な。
ただ、それをやりながらも、もっと社会的なインフラ、母子保健の仕組みが妊婦で終わるんじゃなくて、産後の人にもちゃんとケアがされるっていうような皆さんの意識の啓発だったりとか、その公費がどうやって流れるのかっていう動線をつくることだったりとか、そういうことにもちゃんと働き掛けをしていくっていう存在でもあるんです。
社会的に公共性というか使命を持った活動をしているんですね。そこがNPOである理由ですね。
あとは、事業の性質上、初めて乳飲み子を抱えて外に出ますみたいな人たちが来るので、安全性のためにもちゃんと目が配れるかと考えると定員が10組などと制限する必要がありますし、そもそも母親が自分のためにお金を使うっていう概念はまだまだ珍しいため、どんなにがんばっても「高い」と言われてしまうんですね。
自分のことにお金を出すことに抵抗があるんですね。
そうなんですよ。だから、すごくビジネス的にはとてもハードルが高くて、すごく難しい。あとは、産後というすごく限られた時期なので、カルチャースクールみたいに獲得したお客さんにずっとお金を払い続けてもらうんじゃなくて毎月毎月新規の参加者を獲得しないといけないから、そのマーケティングのコストもかかる。と考えると、ビジネス的にはもう成り立たないんですよ。
決しておいしいビジネスではないというのは分かります。
だから、誰もやってこなかったわけですよ。普通の経営者はそこで「じゃあ、やめとこう」ってなるわけじゃないですか。だけど、必要な人はいるのにそのサービスがないっていうのは困る。そうやって経済合理性だけで成り立ってきた社会だから、ゆがみが今生じているわけで。
うーん、そうですね。
だから、成り立たなくても成り立たせるような仕組みをつくるのがNPOで、私たちの収益構造は、半分が事業収益・収入で、残りの半分は寄付金、助成金、会費の組み合わせで運営しているんです。いろいろ考えると「やっぱりNPOだよね」っていうことになって。
そうですよね。会社にしちゃうと、どうしても利益を追求しなきゃいけなくなっちゃうところが出てきちゃうと、誰かが困るときが出てくるってなったら、そもそもやりたかったこととは違ってくるっていうことですよね。
もちろん、NPOでも毎月の支払いはしていなかければならないので、利益を追究しないということではないんです。ただ、お金の出し手が、かならずしも受益者であるとはかぎらず、社会のさまざまなリソースをくみあわせて運営していくのがNPOの特徴ではないかと思います。
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