リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、出産前後の女性の心と体の健康をサポートするための非営利団体マドレボニータさんに話を伺いました。全国60箇所を超える教室があり、多くのインストラクターたちとリモートでつながり、しかも運営している事務局メンバーも全員がリモートワーク。
さらに、そんなリモートワークをオフィスなしで運営されているということで、一体どんな経営をされているのか、代表の吉岡さんと理事の林さんにお話を伺ってきました。ワークスタイルだけでなく、立ち上げた思いから、カルチャーや組織運営ノウハウまで幅広い話を聞くことができました。
吉岡 マコよしおか まこ
マドレボニータ代表
林 理恵はやし りえ
マドレボニータ理事 経営企画担当
倉貫 義人くらぬき よしひと
ソニックガーデン代表取締役
オフィスがなくてもうまくいく
- 倉貫
今日は、なんとオフィスを持たずにNPOの運営をされているというマドレボニータの代表の吉岡さんと理事の林さんに、リモートワークの話を聞かせてもらおうと思います。
- 吉岡・林
よろしくお願いします。
- 倉貫
今日のこの取材場所もオフィスという訳でもないですよね?
- 吉岡
ここは、たまに仕事をするときやこんな風に取材を受けるときに使っているシェアオフィスです。
- 林
だから私たちのオフィスという訳ではないんです。
- 倉貫
本当にオフィスなしでやってらっしゃるんですね。
- 林
そうなんです。吉岡が一人で始めた時から今までずっとオフィスなしです。
- 倉貫
それは筋金入りのリモートワークですね(笑)
- 吉岡
リモートワークといえば自宅というイメージがあると思うんですけど、そもそもマドレボニータの仕事場はスタジオなんです。
- 倉貫
スタジオというと?
- 吉岡
マドレボニータでは、母親たちが赤ちゃん連れでできる産後の心や体を整えるための教室をやっています。出産でダメージを受けた体を回復させて心もケアしていくための教室を、全国60箇所以上で展開しているんですね。だから、現場といえばオフィスではなくてスタジオになるんです。
- 倉貫
具体的に教室ではどんなことをするんですか?
- 吉岡
バランスボールを使った有酸素運動です。弾みながらのエアロビクスみたいな感じで、結構な汗をかくような運動をするんです。実は今まで、こういった出産後の女性のためのサービスって、ほとんどなかったんですよ。
- 倉貫
なかったんですか。
- 吉岡
うん。妊婦さんへのサービスっていうのは、母親学級とかいろいろあるんですよね。
- 倉貫
確かに。雑誌とかもいっぱいありますね。
- 吉岡
いっぱいあるでしょう。それで出産した後の主役は赤ちゃんになっちゃう。
- 倉貫
そうですね(笑)。
- 吉岡
赤ちゃんスイミングとか、赤ちゃん体操とか、赤ちゃん英会話とか、別に大人だって習えばいいのにね(笑)。全然そういうのがなくて。
- 倉貫
それで産後の女性のための教室になる訳ですね。
- 吉岡
そう、その教室が増えていくにあたって、インストラクター同士が情報を共有したり、現場での知見を持ち寄ってみんなでディスカッションしたり、それをするにはインストラクターが全国に点々としているので、「じゃあ、リモートでも連絡が取り合えるような方法はないかね」で始まったのが原点なんですよ。
- 倉貫
リモートなら集まらなくても全国展開できる、と。
- 吉岡
最初はもう事務局すらなかったですね。まずは教室が拠点だったんですよね。それが今、全国展開できているのは、どこからでも繋がったり、Skypeで会議ができたり、リモートのテクノロジーが現れてきた頃と合致したからですね。
- 倉貫
そうか、教室さえあればオフィスは要らないのですね。
- 吉岡
そう、教室がマドレボニータの活動の軸だからです。それをリモートで繋ぐことで、全国に展開しても同じクオリティで、同じモチベーションを保ってやっていくっていうことが可能になっているんです。
- 倉貫
リモートワークだけど、全国各地には教室があって、地域に根付いてるんですね。
- 吉岡
私たちも現場を手探りで改良しながらやっていってるので、実際の産後女性とたくさん出会って、サービスを提供しながら日々学んでいるんです。
- 倉貫
そこはリアルな声で。
- 吉岡
そこから、これって本当にこのスタジオに来た人だけが助かるんじゃなくて、もう日本社会の問題だよねっていう話になり、日本の母子保健が妊婦までしかケアしてなくて、産後をケアしてないっていう社会の構造に気付いてきたり。
- 倉貫
解決すべきは社会問題だったと気付く訳ですね。
- 吉岡
じゃあ、それを変えるためには、各地でバラバラに教室をやるのではなく、ちゃんと繋がって1つのメッセージを持って世に訴えることをしていかなきゃいけない。そうなって初めて、事務局の機能が必要になってきた。それで法人化したんです。
産後ケアをNPOでやっていく理由
- 倉貫
それまでは法人という訳ではなくて、ただ教室が点々とあった感じですか?
- 吉岡
そうなんです。個人事業主みたいな感じで、やりたいという人に、だいたい1~3カ月ぐらいのコースで教えて、あとはもうそれぞれ勝手にやってたという感じなんです。
- 倉貫
勝手に教室が増えていったわけですね。
- 吉岡
でも、それぞれ勝手にやっていくとクオリティが保てないし、やっていく中で気付いたこととかを「みんなで情報共有したいね」っていう動きがインストラクターからも出てきたんですよね。
- 倉貫
ええ。
- 吉岡
なので、定期的に集まったりっていうことが始まって、そこから形にしようって動きから法人化することになったんです。
- 倉貫
自然な流れだったんですね。
- 吉岡
でも、法人化した段階で認定制度を整備するという形にしたら認定を取らないで「辞めます」と去っていった人もいましたね。
- 倉貫
もうそこに入らずに。
- 吉岡
そうです。でも、ただ教室をやればいいんじゃなくて、社会にメッセージを打ち出していくっていうことがやっぱりNPOの役割だよねっていうことが分かってくださっている方は残ってくれて、それでNPO法人化したんですね。
- 倉貫
会社なのか、NPOなのか、どうやって考えました?
- 吉岡
そうですね。サービスを提供して対価をいただいて、すごい儲かる事業だったらNPOにしなくてもいいと思うんです。その経済合理性だけで広まっていくのであれば、サービスとして日本社会に定着して、みんながハッピーということであればいいんだけど、この産後の問題って実はもっと構造的な問題があって。
- 倉貫
構造的な問題とは?
- 吉岡
例えば、産後の教室も、今は皆さんにお金を払っていただいて受けてもらってるんだけど、本来ならばこういうものは、母親学級に無料で行くのと同じように、本人の受益者負担ではなくて、税金とか何かしらの拠出をして。
- 倉貫
公的なものが入ったほうがいい、と。
- 吉岡
そうですね。公的なお金が入って、それですべての人に行き渡るべきものだと思うんですよ。今はアーリーアダプターの方にお金をいただいて、サービスを充実させたり、担い手をちゃんと増やしたり、基本的なインフラを整える時期なんですけど。
- 倉貫
そうですね、スタートアップ的な。
- 吉岡
ただ、それをやりながらも、もっと社会的なインフラ、母子保健の仕組みが妊婦で終わるんじゃなくて、産後の人にもちゃんとケアがされるっていうような皆さんの意識の啓発だったりとか、その公費がどうやって流れるのかっていう動線をつくることだったりとか、そういうことにもちゃんと働き掛けをしていくっていう存在でもあるんです。
- 倉貫
社会的に公共性というか使命を持った活動をしているんですね。そこがNPOである理由ですね。
- 吉岡
あとは、事業の性質上、初めて乳飲み子を抱えて外に出ますみたいな人たちが来るので、安全性のためにもちゃんと目が配れるかと考えると定員が10組などと制限する必要がありますし、そもそも母親が自分のためにお金を使うっていう概念はまだまだ珍しいため、どんなにがんばっても「高い」と言われてしまうんですね。
- 倉貫
自分のことにお金を出すことに抵抗があるんですね。
- 吉岡
そうなんですよ。だから、すごくビジネス的にはとてもハードルが高くて、すごく難しい。あとは、産後というすごく限られた時期なので、カルチャースクールみたいに獲得したお客さんにずっとお金を払い続けてもらうんじゃなくて毎月毎月新規の参加者を獲得しないといけないから、そのマーケティングのコストもかかる。と考えると、ビジネス的にはもう成り立たないんですよ。
- 倉貫
決しておいしいビジネスではないというのは分かります。
- 吉岡
だから、誰もやってこなかったわけですよ。普通の経営者はそこで「じゃあ、やめとこう」ってなるわけじゃないですか。だけど、必要な人はいるのにそのサービスがないっていうのは困る。そうやって経済合理性だけで成り立ってきた社会だから、ゆがみが今生じているわけで。
- 倉貫
うーん、そうですね。
- 吉岡
だから、成り立たなくても成り立たせるような仕組みをつくるのがNPOで、私たちの収益構造は、半分が事業収益・収入で、残りの半分は寄付金、助成金、会費の組み合わせで運営しているんです。いろいろ考えると「やっぱりNPOだよね」っていうことになって。
- 倉貫
そうですよね。会社にしちゃうと、どうしても利益を追求しなきゃいけなくなっちゃうところが出てきちゃうと、誰かが困るときが出てくるってなったら、そもそもやりたかったこととは違ってくるっていうことですよね。
- 吉岡
もちろん、NPOでも毎月の支払いはしていなかければならないので、利益を追究しないということではないんです。ただ、お金の出し手が、かならずしも受益者であるとはかぎらず、社会のさまざまなリソースをくみあわせて運営していくのがNPOの特徴ではないかと思います。
産後のフリーター、教室を始める
- 倉貫
マドレボニータというか、こうした活動の最初のきっかけはなんだったんですか?
- 吉岡
きっかけは自分が出産したときに「なんだこりゃ」って思ったことです。。
- 倉貫
やはり自分の経験から。
- 吉岡
そう。私は妊娠中はすごい元気で、やっぱりいろいろな情報もあるから、すごい真面目な妊婦だったんですね。運動もするし、食事も気を付けるしみたいな。だから、もう本当にいいお産ができて、いい子育てができるって思い込んでたんです。
- 倉貫
ええ。
- 吉岡
でも、産んでみたら体がボロボロになって精神的にも不安定で、子育ても思ってた以上に大変で。妊娠中の過ごし方とかはすごく教わるのに、産後のことは教わってなくて。
- 倉貫
ネットにもあんまり情報がないんですね。
- 吉岡
そう。ないし、すごい探したんですよ。母子手帳の続きがないのかな、とか。
- 倉貫
出産がゴールじゃないはずなのにね。
- 吉岡
そうそう。いろいろ探したんだけど、ない。だから、ちょっとやっぱり社会がおかしいっていうのは、本当にもう自分が子どもを産んだ瞬間に思ったんですよね、「日本の厚生労働省は何をしてるんだ!」みたいな。
- 倉貫
おお、一気に壮大になりましたね(笑)。
- 吉岡
うん。でも、当時はインターネットにもつながっていなくて、こんな乳飲み子を抱えながら厚生労働省を動かせる力はないし、どうしていいか分からなかったから、まず足元からというか、自分が元気にならなきゃみたいなところからスタートしたんです。
- 倉貫
じゃあ、最初は今のような事業みたいなことではなくて?
- 吉岡
全然。もうフィットネスクラブで月曜日から土曜日まで週5でバイトしながら、休みの日に教室をやってた。その教室の申し込みとかも、メールがなかったから、自宅の電話とファクス(笑)。
- 倉貫
すごいバイタリティ。
- 吉岡
とはいえ、立場的にはフリーターですよ。フリーターをしながら教室をやってみたいな感じだったので。それが少しずつ人気が出てきて、午前中だけやっていたのが午後も教室をやってとか、水曜だけだったのに月曜、水曜もやるようになって。
- 倉貫
そこから他の教室は、どうやって広まっていったんですか?
- 吉岡
それはインターネットですね。98年の10月ぐらいからやっていて。
- 倉貫
かなりアーリーアダプターですね(笑)。
- 吉岡
ブログとかまだなくて、勝間和代さんたちが運営していた「ムギ畑」というワーキングマザーの掲示板とかに書き込んだりしていたんですけど。
- 林
懐かしい(笑)。
- 吉岡
そのあと楽天日記が流行って、私も楽天日記をやっていて毎日ポストしてたので、読んだ人が「私もすごい共感する」とか「私もやってみたいです」とか、教室に参加するだけじゃなくて、「熊本に住んでいるんだけど、私もインストラクターをやってみたい」っていう人が出てきたり。
- 倉貫
素晴らしい情報発信力ですね。
- 吉岡
折に触れて「日本の母子保健はおかしいよね」とか、「母親になった途端にみんなママって呼ばれて顔がなくなってしまうというのはもう人権問題だよね」とか、そういう話はブログに書いたりしていると「いや、私もそう思ってました」っていう声が出てきて。
- 倉貫
きっと、みんな感じていたことだったんですね。
- 吉岡
今まで声なき声というか、「光を当てられてこなかった部分に光を当ててくれてありがとう」みたいな人たちがやっぱり共感してくれて。
- 倉貫
インターネットが広まるタイミングともあってたんですね。
- 吉岡
むしろリアルだと言えなかったりしてましたね。
- 林
公園に子連れで来たお母さん同士の会話とかね。
- 吉岡
「なんか熱いお母さんですね」「お子さんが生まれたのに、そこまで頑張って偉いですね」とか、ちょっと引かれたり。
- 倉貫
なんとなくわかります。
- 吉岡
でも、ネットだとなんでも書けるじゃないですか。ネットだと、周りの目を気にせずに「私もそう思います」っていうふうに言えるし。だから、ネットでそういう声は集まってきやすい。発信し続ければ仲間ができる。やっぱりインターネットはすごいね。
- 倉貫
インターネットもすごいですけど、そうやって発信し続けるのがすごいですよ。
- 吉岡
今、事務局スタッフとしてやってくれている人が、その当時15年前ぐらいのブログを当時から読んでましたみたいな人が3年前に事務局に入社したみたいなこともあって。
- 林
そうそう、そういう感じです。
- 倉貫
それは、ちょっとお互い感動しますよね(笑)。
インターネットが産む共感と仲間
- 倉貫
インターネットを通じて共感する仲間を増やしていった訳ですね。林さんも、知ったのはインターネットからですか?
- 林
そうですね。私は2006年に最初に出産してるんですけど、そのときにもう(吉岡)マコさんとか、古いインストラクターのブログを見ていて知ってました。IT業界にいたので、ネットはよく見るので出産や産後の情報を探していました。
- 倉貫
必ず出てくるんですね。
- 林
産後の詳しい情報がマコさんをはじめとする、マドレボニータのインストラクターのみなさんの情報しかないんですよ。ブログを読んで「いつか教室に行ってみたい」と思っていたのですが、第1子のときに行けなくて、4年後の第2子のときに初めて行くんです。
- 吉岡
ネットとリアルの橋が、実は結構距離があるっていう。
- 林
そう。あるんですよ。
- 吉岡
知ってたけど、1人目のときはリアルの教室に参加するには至らなかった。
- 倉貫
参加に至らなかったのは教室の敷居が高かった?近くになかった?
- 林
乳飲み子を連れて外出が怖くてできないんですよ。電車に30分ぐらいしか乗らないんですけど、もう全然行ける気がしない。第2子のときも電車に乗ると泣くんじゃないかって怖くて。泣いても降りればいいじゃないって発想にならなくて。
- 吉岡
そういう思考にならないんだよね。
- 林
それで、車で最初行って。案の定、帰りにもうギャン泣きしてて、「ああ、よかった、車で」みたいなところから始まるんですよね。
- 倉貫
林さんは、教室に通っていた参加者から、NPOの中の人になったんですね?
- 林
そう最初は受益者でした。
- 倉貫
NPOの中に入る人たちは、そうやって参加してから、受益者からステップアップしていく感じが多いですか?
- 吉岡
そうですね。そういう方が多いです。まず参加、お客さんとしてまずは来て、そこからマドレボニータは会員制度があるんですけど、その会員になって活動を応援してくださるようになって。
- 倉貫
中の人になる前に会員があるんですね。
- 吉岡
会員としての応援の仕方はすごく濃淡はあるんですけど、会費を払って金銭的にサポートするというところから始まって、「こういうプロジェクトがあるから、ボランティアで参画します」とか。やっぱりボランティアでの働きぶりを見させていただいて、「ぜひ有給スタッフとして働いてもらいたい」と思って、そんな感じですね。
- 倉貫
一緒に働くのは大事ですね。
- 林
もう今残っている方たちって、もうほとんどそうですよね。
- 吉岡
そうですね。
- 林
リモートワークも含めて、常に新しいものを使ったりするので、ネットやツールのリテラシーが求められるんですけど、そこはボランティアの中で習得された方も結構多くて。
- 倉貫
ああ、最初からできるわけじゃなくて。
- 林
なくて、全然。
- 吉岡
全然。例えばイベントをやるってなると、「ミーティングをSkypeでやります」「アジェンダはGoogleドライブのスプレッドシートでやりますよ、誰か議事録を取ってください」とか。そうすると、もうやらざるを得ないじゃないですか。
- 倉貫
もうこの時点で、「スプレッドシートって?」みたいな(笑)。
- 林
そうそう。「Skypeは使ったことありません」ドキドキみたいなところから始まって、ただやりたいから教え合うんですよね。「私はやったことあるよ、教えるね」って言って、そこから結構早くて、わりとみんな付いてきてますね。
- 吉岡
だから、もう事務所で対面で手取り足取り教えてもらえないと不安になっちゃって無理っていう人は、やっぱり適性としては難しいですね。
- 倉貫
どうしても適性はありますよね。でも、まずはそこがボランティアで分かる、お互い分かるなら、良いですよね。
- 吉岡
そうなんですよ。採用してから分かるんだとちょっと気まずいけど。
- 倉貫
困っちゃいますもんね。
- 吉岡
でも、それこそ自分は苦手だって思ってたけど、ボランティアのときにやってみたら「意外とコミュニケーションが取れるじゃん」とか。
- 倉貫
できることがわかるんだ。
- 吉岡
もうそれでSkype飲みとかいって、ボランティアの人たち同士で飲み会をやってる人たちとかがいるから。
- 倉貫
いるんですか(笑)。
- 林
そう。普通にね。
- 吉岡
本当はみんなで集まって飲みたいけど、子どもの寝かしつけもしなきゃいけないし。
- 林
そう。子どもが寝た後にとかやってる(笑)。
- 倉貫
いいですね。リモート飲み会、僕らもやってます(笑)。
- 吉岡
やってますか(笑)。さすがです!
自分たちで考えて動く組織の育て方
- 倉貫
今、事務局は何人ぐらいで回されてるんですか?
- 林
今、理事を除くと8人で、理事を入れると11人。
- 倉貫
その人たちがリモートでコミュニケーションを取りながら、そこに加えて全国のインストラクターの人たちもいるわけですね。
- 吉岡
そうですね。
- 倉貫
インストラクターはなんとなくわかりますが、日々の事務局の人たちの仕事って、リモートワークで、どういうスタイルで仕事をされてますか?
- 林
不思議ですよね(笑)。
- 倉貫
たぶんリモートワークを知らない人たちからすると、事務所がないのに事務の仕事が回るってどうしてるのかなって思うはず。教えてもらっていいですか?
- 林
事務局の1日で言うと、朝メールから始まるんですよね。
- 倉貫
朝メールっていうのは?
- 林
朝「どんな業務を何時から何時にやります」というのと、そこに近況を入れてタイムカード代わりに送るんですよ。
- 倉貫
それは誰に送るんですか?
- 吉岡
全員が入っている「タイムカード」っていうメーリングリストなんです。
- 倉貫
(笑)
- 林
全員にそれが配信されて「この人は仕事を始めたんだ」とわかる。夕方も同じように、今日やったことをタイムカード代わりに夕メールを送ります。
- 吉岡
分類の業務コードみたいなのがあって15分単位で書いてます。
- 林
だから、後で何にどれくらい時間を使ったかも集計できます。
- 吉岡
それが勤務表代わりになって時給で働いている人は、それで計算するっていう感じ。
- 倉貫
その人たちの仕事の指示や管理体制とかどうしてますか?
- 林
教室事業部とか、養成事業部とか、寄付とか、事業部制に分かれてます。その中で事業部長たちが自分たちで計画を立てて、遂行していきます。そこは指示待ちとかじゃなくて、自分たちが考えた計画通りにやっていくっていうことに尽きると思います。
- 倉貫
チームごとに結構もう任せてやってもらってる感じですね。
- 吉岡
そうそう。でも、ここまでくるのに、この(林)りえぞうさんがかなり導きましたね。。
- 林
(笑)
- 吉岡
年間計画と目標を立てて、それをちゃんとそれこそ月次で追っていくっていうのは、難しいし大変じゃないですか。
- 倉貫
難しいです。今、お話を聞いているだけでちゃんと組織になっていてすごいなと思って。
- 吉岡
りえぞうさんが仕掛け人なんです。事業部制にしたけど、事業部長も最初は予算っていっても「何にお金がかかるんだっけ?」というところからスタートして。四苦八苦して予算計画を作成して。
- 倉貫
(笑)
- 吉岡
あと、「何で稼ぐんだっけ?」とか、そういうのを洗い出すところから、もうりえぞうさんが一緒に伴走して。最初のうちは結構難しかった。
- 倉貫
そうなりますよね。
- 吉岡
「そこをあなたに考えてもらいたいの!」って各事業部長に伝えて。
- 倉貫
厳しい(笑)。
- 吉岡
そうすると、でも、みんなだんだん分かってくるっていうか。今のこの団体に必要なものはなんなのかっていうのを、やっぱり観察するようになるし。その上で「じゃあ、今年度はここまでやろう」とか、できるようになってきて。
- 倉貫
ここ、とても良い話ですね。
- 林
それで毎月、月に1回経営ミーティングっていうのをやってて。スプレッドシートをみんなで見ながら数字を比較して、「これはどうしてこういう数字になってるんだろうね」とか、そういうのを1個1個分析していくっていうのを、やれるようになりました。
- 倉貫
素晴らしいですね。
- 吉岡
最初はみんな結構つらそうだったけど(笑)。今は、楽しそうじゃないですか?。
- 林
今はつらそうじゃないですね。(笑)。
- 吉岡
自分の仕掛けたことが結果になって出てきたりとか、そういう計画を立てたことによって、やっぱりそれがちゃんとうまくいって。計画をちゃんと立ててなかったらここまでの成果はでなかったよねっていう手応えが、分かってきたから。
- 倉貫
この事業部に分けて、自分たちで考えるようにしていくのって、簡単そうに見えてとても難しいことなんですよね。それが実際にできたのは、本当にすごい。それに、自分たちで考えて遂行していけるのって、やってる人たちも楽しいはずですよね。
沸点の高い人たちの集まるカルチャー
- 倉貫
組織として、とてもモチベーションの高い状態というか、そういう人たちが集まってる感じがしますね。
- 林
そうなんです。1人1人のビジョンや、ミッションへの思いが強いんです。だから、みんなのモチベーションを上げるってことが必要ないんですよ。マドレボニータに入って私はそれが一番びっくりしたんです。普通の会社って、お金をもらうために働いているから、モチベーションを上げるのが大変じゃないですか(笑)。
- 倉貫
うん、普通だとそうなりがちですよね。その話、ぜひ聞きたかったんです。林さんは、普通の会社とマドレボニータというNPOの両方を見てきたと思うんですが、組織づくりで何か違う点はありました?
- 林
全然違いました。NPOかどうかというよりも、マドレボニータならでは、なんですが。ものすごくビジョンとミッション、活動理念に共感している人たちの集まりなんですよ。それはボランティアだろうが、会員だろうが、みんなそうなんです。なので、モチベーションへの働きかけはあまり必要ないんです。
- 倉貫
ベースラインが揃ってる。
- 林
そう、ベースとしてすごい高いところにあるので、それをどうやって成果に結びつけるチームにするかみたいなところに注力ができるんです。
- 倉貫
もう最初から、すでに沸点が高いんですね(笑)。
- 林
だから、それを無駄なところに使わずに、どううまくそのままのエネルギーを成果に持っていくかみたいな発想でいけるので、本当に楽でした。
- 倉貫
確かに全然違いそうですね。モチベーションを見つけてもらうところから始めるのと比べると。
- 林
何をするにしても、短期間で理解してくれるし、納得感もある。「これをやりたいからここがあるんですよ」って言ったら、「そうなんだ」って言って、ちょっと怖いけどやってみようかなって言ってやってくださるので(笑)。
- 倉貫
言われたからやる、じゃなくて、納得感があるんですね。
- 林
そうそう。やっぱり納得いかないとやれないし、やれないものは廃れていっちゃうので。最初はすれ違いも多少はありますよ。だけど、そこがすごくかみ合ってくると、もう早いんですよ。
- 倉貫
そんな新しいツールや仕組みって、思い付いて導入するのは吉岡さんですか?
- 吉岡
最初はそうでしたね。「よさそう」っていったら、もうすぐやるみたいな。
- 倉貫
(笑)
- 林
そういうフットワークの軽さがないと、どんどん新しいものが出てきちゃうから。クイックにやっていく。
- 吉岡
わりとみんなすごいそういう抵抗がないというか、「じゃあ、やってみましょう」みたいな。でも、最近は私だけじゃなくて、みんなそれぞれツールを見つけてきて、「これを導入したらいいと思うんですけど」っていって提案してくれたりとか。
- 倉貫
それはいいですね。ソニックガーデンだと、新しいことを僕が言い出しても、あまりすぐ食いついてくれなくて。
- 吉岡
そうなんだ(笑)。
- 倉貫
僕がずっとやり続けてたら、みんななんとなく乗ってくる。みんなが乗ってこなくて僕が諦めたら、その制度はなくなるっていう(笑)。
- 林
(笑)
- 吉岡
でも、それはあるよね。
- 林
ありますね。
- 吉岡
私も朝メール、夕メールを最初1人でやって、お手本を見せながらみんながやるみたいな感じだったから。
- 林
もともと、オリジナリティがある組織づくりをしてきてるんですよ。だから、オリジナルな仕組みをうまく残しつつ、数字や成果を見ていけば、もっとうまくいくんじゃないかなと思って。
- 倉貫
もともとのカルチャーは残しつつ。
- 林
そう。初めにやったのは、やっぱりお金をきちっと見るっていうことなんですけど(笑)。そこは本当に愚直にやるしかなくて、予算を立てて、実績を追ってみたいなことから始まって。
- 倉貫
面白いですね。自由奔放に育ってきた子供が、学校に入って先生にちゃんと社会を教わってる感じがしますね(笑)。
- 吉岡
そうなんです。
- 林
マドレボニータという、すごい本当にユニークで素敵な子が、ここに育ってきているわけです。
いないからこそ互いに知ろうとする
- 倉貫
そんな良いカルチャーの組織をつくるって、結構いろんな経営者の人たちがやりたいことだと思うんですけど、オンラインでどうやってるんですか?
- 吉岡
オンラインでというか、会ったらできるかっていったら、そうでもないもんね(笑)
- 林
そうなんです。むしろリモートだからこそできたというのはあったんだろうなって私は想像してます。
- 吉岡
そうかもね。よく言うじゃないですか。オフィスに出勤してきてるんだけど、離れた場所に座ってる人の健康状態とか知らない、みたいな。
- 倉貫
なんだったら、隣の人すら知らないかもしれない(笑)。
- 吉岡
知らないでしょう。でも、私たちはお互いを知るっていうことをやっぱりすごい大事にしていて、メールでやっているタイムカードもただ押すだけじゃなくて近況を必ず書くんですよね。そうすると「今、上の子が水ぼうそうなんだ」「インフル大丈夫?」とか、そうやってみんな分かるんですよね。だから、常にお互いの状態を気遣い合えるような。
- 倉貫
いないからこそ、その人のことを知ろうとするっていう。
- 吉岡
そうですね。目の前にいないからこそ。逆に、すぐ隣にいるような感覚があるよね。
- 林
そうなんです。事務局だけじゃなくて、卒業生同士とか、会員同士も、その感覚を持ち合わせていて。
- 吉岡
だから、たまにびっくりするよね。「あ、網走って意外と遠いね」みたいな。
- 倉貫
物理的な感覚を忘れてる(笑)
- 吉岡
本当に会いに行こうとすると、遠い(笑)。
- 林
事務局長はアメリカのノースカロライナにいるんですけど、毎週何度も話すし、Skypeでやりとりするから。
- 倉貫
離れていても身近な感じがするんですね。
- 林
たまに会ったときにでも、「どうも」みたいな、そういう感じで(笑)。
- 倉貫
感動がない(笑)
- 吉岡
私も去年の大きなイベントでその彼女が来日してくれたんだけど、普通に「お疲れ様です」って(笑)。
- 林
そうそう。普通なんですよ。
- 倉貫
そうですよね。分かります。Facebookみたいな薄いつながりでも、久しぶりに会っても久しぶりな感じがしないので、毎日チャットしたり、テレビ会議していると。
- 林
離れた感じがないですね。
- 倉貫
やっぱりそうですよね。ソニックガーデンでは「日記」という仕組みがあるんですね。近況や感じたことなんかを書いていく感じのアプリを自作していて。
- 林
面白い。
- 倉貫
日記の中でメンバー同士がコミュニケーションして。例えば初めてやった案件がついにサービスインしたとかって書いたら、みんなから「おめでとう」って付くとかね。
- 林
いいですね。でも、男性ってなかなか所感とかを開示しないですよね。
- 倉貫
そう、最初「日報」って言ってたんですよ。そうすると、所感は書かないんです。
- 林
ですよね、確かに。
- 倉貫
だからある時から、「もう日記にしよう」と。日記にして、所感メインに書こうってしたら、だんだんみんな所感ばっかり書くようになって(笑)。
- 吉岡
面白い。それ、すごいいいですよね。
- 倉貫
だいたい仕事は何してるか分かるので、どちらかっていうと、プライベートだとか、感じたことを書いてくれたほうがコミュニケーションしやすくなるっていう。
- 吉岡
そうかも。何を考えて、感じながら仕事をしてるのかっていうところが大事ですよね。
- 倉貫
そうなんですよ。特に新人とか、途中から入ってきた人たちって、僕らもよく分からないので、こういうのを書いてもらったほうがより分かるので。
- 吉岡
コメントをしたりとか。それは倉貫さんにコメントをもらえなくて寂しいとか、そういうのはないですか?
- 倉貫
全然ないです。
- 吉岡
(笑)
- 倉貫
むしろ、僕が日記を書いても全然コメント付かないときがあるし(笑)。さっぱりしてるのか、全然コメントとかがなくても、みんな淡々と。
- 吉岡
そっか。クローズドだから、別にリアクションがなくてもそんなに気にしない。
- 林
評価を気にしなくていいのは大きいですね。
- 倉貫
そうなんですよ。だからあえて「いいね」機能を付けてないんですよ。「いいね」って、薄いリアクションじゃないですか。
- 吉岡
気にしちゃうし。
- 倉貫
社内なんだから「いい」と思ったら、「いいね」って書こうねって言ってるんです(笑)。ボタンっていう気軽なやつをあえてやめようと。
- 吉岡
本当によかったら、ちゃんとコミュニケーションの労を取ろうと。
- 倉貫
そうそう。コメントが付くっていう。
- 吉岡
これは必須ではないんですよね。必須ですか?
- 倉貫
これは必須じゃないです。なので、みんな書いてる日もあれば、書かない日もある。
- 吉岡
自発的なのも、いいですね。
オンラインのオフサイトでチームに
- 倉貫
自己開示をするのってカルチャーかな、と思うんですが、マドレボニータさんでは、朝メール夕メール以外に何かありますか?
- 吉岡
そうですね、メールだと書けることは限られるし、すごい深いことまでは書けなかったりするから、3カ月に1回は、もうちょっと深く話をするミーティングっていうのをやってますね。
- 倉貫
その3カ月に1回のミーティングもオンラインで?どういう議題になりますか?
- 吉岡
もちろんオンラインです(笑)。議題は「今回は何しようか?」って、毎回ゼロから考えるんですけど、基本は業務と関係ないこと。
- 倉貫
オフサイトですね。オンラインで、オフサイトだ。
- 吉岡
そう。お互いを知れること。「自分×団体」っていうフォーマットがあって。NPO法人CRファクトリーの呉 哲煥さんというかたが開発したツールなんですけど。
- 倉貫
どんなフォーマットですか?
- 吉岡
自分の生い立ちを書いたりとか、自分の言葉で団体の事業やミッション・ビジョンを書いたり、自分と団体との関係を整理して表現できるんですけど、それを1人ずつプレゼンしていって、それに対してフィードバックをしていく。みんな、結構すごい深い話になっていくから、もう泣いちゃう人もいるくらいなんですよ。
- 倉貫
それは、ソニックガーデンでもちょっとやりたいな(笑)。
- 吉岡
CRファクトリーの呉さんも喜ぶとおもいます。なんでこの仕事をしてるのかっていうことに遡って、自分の生い立ちまで遡って、それがリンクしてるってことに、自分でプレゼンしてて初めて気付く人もいたりとか。
- 林
そうですね。
- 吉岡
周りの人もそれを聞いてすごいもう感動したりとかっていうのを、やっていて。それで、新しい人が入ったら、またそれは改めてやったりとかするんですけど。
- 倉貫
もう全てオンラインですか?
- 林
会うのは年に1回の合宿だけですね。
- 倉貫
合宿は何をするんですか?普段はもうコミュニケーションできてるけど。
- 吉岡
いや、でもね。
- 倉貫
合宿だとやっぱり違いますか?
- 林
違う、違う(笑)。
- 吉岡
そうやってリモートでやってるからこそ、会うことの大切さみたいなのが身にしみてるんですよ。
- 倉貫
ああ、いい話かも。
- 林
本当にそうです。
- 吉岡
事務局スタッフは7月にやって、インストラクターは9月に合宿をやってます。やっぱりインストラクターは、地域で離れているので、モチベーションが保てなくなってしまいがちですけど、会って一緒にダンスしたりとか、踊ったりとか、体を動かしたりとかやってると、やっぱりすごいパッションが蘇ってくるんですよね。すごい刺激を受けるので。
- 林
体を動かすっていうところは、本当にマドレの中ではやっぱりすごく大事な部分。
- 吉岡
うん。だから、そういう機会を年に1回ちゃんと持とうっていうことで。
- 林
インストラクターの合宿は、毎年テーマを決めて、実行委員会が組織されて、プログラムを練って。
- 倉貫
ちょっとしたお祭りみたいなもんですね(笑)。
- 吉岡
インストラクターって個人事業主なんです。事務局スタッフは雇用している関係なので、インストラクターの集団でそういうことをやるっていうのって普段ないんですよ。
- 林
うん。だから、すごく貴重な機会だし、あと、団体とどういう関係性でいるかってこともすごく大事なところなので。
- 吉岡
私たちがやっていることは資格ビジネスじゃなくて、ちゃんと認定制度をつくって、1年更新でちゃんとクオリティをしっかり保っていくっていうのをやっているんです。
- 倉貫
なるほど、そうですね。
- 吉岡
やっぱり仲間と切磋琢磨することで自分も高められるし、プログラム自体のクオリティもみんなで高めていってるっていう、そういう実感があるから、みんな個人のインストラクターとしてではなく、団体認定のインストラクターとして活動してくれているんですね。
- 倉貫
仲間の存在ですね。
- 吉岡
団体に入ると大変なんです。報告書も書かなきゃいけないし。でも、その報告書が実は宝の山で、自分のレッスンだけだったら1拠点の事例しか自分には持ってないけど、それこそ、30カ所分の報告書が上がってきて、その中からディスカッションするトピックをピックアップして、みんなで深めていこうとか、そういうことをやるんですけど、そういうことをやっぱり個人のインストラクターではできないですよね。
- 倉貫
もはや個人事業主っていうのは、単なる契約の話で、実際はチームの一員ですね。
- 吉岡
そう。チームなんですよ。
- 林
だから、その契約形態とか関係なく、ボランティアスタッフも含めてみんなでマドレボニータ。
- 倉貫
それがマドレボニータなんですね。
- 林
だから場所なんて些細なことで、リモートワークが前提なんです。
- 倉貫
どこへ行っても、それこそアメリカへ行っても続けてられるっていうのは、そういうことですよね。
- 林
そうなんです。そんなふうにできてますよね。
リモートにリアルを足していく
- 倉貫
これまでずっとリモートワークでやってきた訳ですけど、そうは言ってもオフィスは欲しい、なんてことあったりしますか?
- 吉岡
オフィス欲しいです(笑)。
- 倉貫
欲しいんだ(笑)。イメージみたいなものってあります?
- 吉岡
今のスタジオは時間で借りてやっているので、マドレボニータだけのスタジオが欲しいですね。
- 吉岡
月曜日から金曜日まで毎日マドレの何かをやってるみたいな。そこで例えばイベントができたりとか、ミーティングができたりとか。
- 林
そうそう。全部がリモートワークじゃなくて、そういう拠点があって、ほかにリモートワークの人がいてっていうバランスでやりたいねって話をしてます。
- 吉岡
それはやりたいね。やっぱりすごく層が厚くなってきていて、昔はみんな小さい子どもがいる人たちだけで回してたから、だから、オフィスがあっても行けなかった。
- 吉岡
だけど、今はもう私の場合は、子どもがもう高校を卒業して大学生になっていたり、そんな状況になってきて。
- 倉貫
なるほど、ライフステージが変わって動けるようになってきたんですね。
- 吉岡
そうすると例えば、必要な場合は、手取り足取りその場で教えたりできるから、リモートでは難しかったインターンの学生さんにも参画してもらえたり、もっと参画をしていただける人の層が広がるなと思っているので、場所は持ちたいですね。
- 倉貫
なるほど。面白いですね。普通の会社はオフィスに縛られてたところが、これからリモートワークだって言ってるのに、マドレさんは最初がリモートワークで、これからリアルに広げていくっていう、逆パターンですね。
- 吉岡
そうなの。逆を行ってるんですよ。だから、養成コースも実はやり方をがらっと変えたんです。オンラインだけだと顔を合わせられないことのストレスのほうが上回ってきたので、今期からは通いの3カ月間と、オンラインを組み合わせた形でやることに。
- 林
ハイブリッドにしたんです。
- 吉岡
それによって、今回東京で一気に5人合格者が出たんですけど。それは私じゃなくて、東京の経験を積んだインストラクターに担当してもらったんですね。そうなると、例えば、名古屋でやりますっていったときに、今東海地区に2人マドレボニータの認定インストラクターがいるので、そのインストラクターたちが教えるスキルを身に付けて、名古屋でできるじゃないですか。そうすると、また東海地区で6人とか誕生したらすごくいいですよね。そうやって増やしていきたいなと思ってて。だから、すごい時代に逆行してる。
(一同笑)
- 林
そんな感じの動きですよね、今。
- 吉岡
「時代はリアルだ!」って言ったりして。
- 倉貫
面白い。
- 吉岡
そうなんですよ。「みんな、リモート、リモートって、今頃言い出して」みたいな。
(一同笑)
- 倉貫
「もうそんなのは当たり前だ」と(笑)。
- 吉岡
そう。リモートでやってる私たちの強みは、事前のコミュニケーションがすごく濃密なことなんです。だから、会ったときのコミュニケーションも密なんですね。
- 林
そうそう。
- 吉岡
実際に会って話すのが良いと言っても、2~3時間ちょっと喋ったくらいじゃわからないじゃないですか。やっぱりそれだけだとコミュニケーションは深まらない。
- 倉貫
今までの出張とか、そんな感じですよね。分かり合えてない。
- 吉岡
私たちは会えないことがデフォルトだったから、会えない時間のコミュニケーションを深めた上で会うみたいなことをしているので、やっぱりすごい円滑になるのかなと。
- 林
それは大きいよですよね。
- 吉岡
オンラインでのコミュニケーションが薄いと、やっぱり絆は育たない。リモートとリアルの組み合わせ、ハイブリッドが大事だなと思ってます。
- 倉貫
今日のお話を聞いて感じたのは、マドレボニータさんの良いところは、形にこだわらないところですよね。いろいろ試して変えていくのを恐れない感じ。
- 林
確かにそうですね。
- 倉貫
だから、あと1〜2年したらまた変わってるかもしれないですよね(笑)。
- 吉岡
ありえます(笑)
- 倉貫
そんな変化も楽しみにしておきます。今日は本当にありがとうございました。
- 吉岡・林
ありがとうございました。
取材後記
マドレボニータさんにとって、リモートワークという働き方は、もはや挑戦でもなんでもなくて大前提だし、それよりももっと大きなことを成し遂げようとする中での手段や形の一つでしかないのだと、今回の取材を通じて改めて感じました。
また経営者として、事業部制にして自立したチームにした話は、とても勉強になりました。おそらく、リモートワークだからということは関係なく、チームの育て方とはこうあるべきだと学んだのです。
リモートワークとしてのノウハウとして、オンラインでオフサイトミーティングをする発想も非常にユニークでしたね。普段のミーティングや、リモート飲み会でさえできるのなら、オフサイトミーティングだって出来てしかるべきです。
形にとらわれず、本質を見据え、目的を達成するために組織がある。それは会社やNPOといった違いなどなく、これからの目指すべき組織のあり方のヒントが見えたような気がしました。
(株式会社ソニックガーデン 倉貫義人)
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