リモートワークラボ

チーム全員がリモートワーク!マネジメントなしでチームワークが生まれるタスク管理ツール「Todoist」の働きかた

hayataki
「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。

早瀧 正治はやたき まさはる

Doist PR & MARKETING
タスク管理ツール「Todoist」日本版のPR&マーケティングとプロダクト全体の翻訳ディレクションを担当。2016年2月より、リモートワークで複数の企業とお仕事をしながら海外を旅行している。Skypeインタビュー時には、ポーランドのクラクフという街に滞在中。

タスク管理ツール「Todoist」を開発・運営するDoistは、サンフランシスコを本拠地としながらもCEOやCTO含む、所属する約50名のスタッフ全員がリモートワークで仕事をしています。唯一の日本人スタッフとして、日本市場のマーケティングを担当しているのは早瀧正治さん。リモートワークを通じて距離や時差のある海外のメンバーと、どのようにお仕事をしているのでしょうか。


リモートワークが前提の組織・Doistは、どんな会社?

まずは「Todoist」について教えてください。

早瀧

「Todoist」は、世界500万人以上が使っているGTDスケジュール管理ツールです。30カ国語以上に翻訳されていて、ほぼ全世界で利用することができます。その中でも、ローカライズを目的としたマーケティング担当を置いている国が12カ国くらいあり、私は日本を担当しています。経営層含めて、スタッフのほぼ全員がリモートワークという珍しい企業です。

※GTDとは「Getting Things Done」の略で、デビット・アレンが提言したタスク管理の方法。(参考:GTD Japan

早瀧さんは、なぜTodoistの開発と運営をしているDoistで働くことになったのでしょうか?

早瀧さん

以前から海外で仕事をしていたのですが、DoistからLinkedIn経由でオファーがあったことがきっかけです。採用中もSkypeで面接を行い、リアルに誰かと顔を合わせたことはありません。

採用面接のときから、完全にリモートなんですね。では、1日のお仕事について具体的に教えてください。

早瀧さん

まずは、Todoistのソフトウェアの更新履歴を確認するところから始まります。その後、ツイッターでユーザーからリプライがきていないか、トラブルが起きていないかを把握します。続いては、ライバル企業の話題やTodoistに関するメディアの掲載チェックです。記事についてはリツイートしたり、掲載のお礼をしたりというコミュニケーションも行っています。

そして、カスタマーサポートですね。1日に15件から20件ほど届きます。問い合わせの内容はパターンがあるため、テンプレート化して対応しています。
仕事としては分量が多いように見えるのですが、作業手順書や対応方法のテンプレート化により、そこまで大変ではありません。どうやって対応しようかと迷う時間がないので、すぐに終わらせることができるのです。

お仕事がマニュアル化されているんですね。はじめから、その作業手順書は用意されていたのでしょうか。

早瀧さん

作業手順書はTodoistで仕事をするようになった2年間のうちに自分で作りました。ユーザーの問い合わせに応じて、内容はほぼ毎日変化していますね。

決まった作業を繰り返しているわけではなく、マニュアルを作成して仕事を効率化したり、日々良い対応ができるよう更新している。作り出す・クリエイティブなお仕事でもあるわけですね。

早瀧さん

仕事を一任されているから、自分で考えることが多いんですよ。たとえば、ツイッターマーケティングをするとき、どういうことをツイートしようかと考えますよね。タスク管理だけじゃなくて、スケジュールやタスク管理そのものがどうやって人間のストレスを減らすようになるのかなども勉強しはじめるのです。だから、自然とTodoistのサービスの本質であるタスク管理の効能について考える仕組みができているのだと思います。

マネジメントもチームプレイもないのに、チームワークが生まれる理由

Doistは、なぜリモートワークを採用しているのでしょうか?

早瀧さん

Doist創設者のアミルにSkypeで聞いたことがあるのですが、おもな理由はコストの削減とマクロマネジメント。地理的・時間的な制約をのぞいて、有能な人材を採用するのが目的だそうですね。たとえば12カ国でマーケティングを展開するとして、全員をフルタイムで同じ場所に集めるとすると、オフィスはニューヨークか東京をイメージしますよね。そうなると、土地も人材も高くなってしまいます。現実的に各国に人を雇うとなると、リモートワーク以外はありえないわけです。

マクロマネジメントの視点でいうと、Todoistのメンバーはほぼ全員フリーランスなんですよ。フリーランスですと、指示がなくても自分で判断して行動できる人が多いので、結果コミュニケーションにかかるコストが低くなるんですよね。フリーランスといっても、はじめに契約をしてから毎月支払いがあり、継続的にお仕事をしています。

※マクロマネジメントとは、個々人に細かく指示を出さず大きな枠組みでマネジメントをする方法

チームメンバーは、いろんな国にいて距離も時差もありますよね。どのようにコミュニケーションをとるのでしょうか。

早瀧さん

チーム内のコミュニケーションは、Twistと呼ばれるDoistが開発したチャットアプリを使っています。各国のマーケティング担当はカントリーマネージャーと呼び、基本はひとりでマーケティングもカスタマーサポートも行うのですが、チームリーダーのように全体を見ている担当者もいます。もしカントリーマネージャーでわからないことがあったら、彼らに相談をするフローになっていますね。しかし、彼らから指示を受けるということはなく、対等な関係です。さらにその上に相談するなどもなく、両者間でスムーズに意思決定ができますね。提案をNOと言われることもないですよ。

今年の夏に日本でサマーハックというイベントがあったのですが、私の独断で参加者にTodoistのプレミアムアカウントをプレゼントしたのです。これについても事後承認で「オッケーだよ」と。「マサハルがそれでいいと思ったんだから、そうしたらいいよ」と言われました。メンバーに対して信頼があるから、確認などで時間をとられずに最適な仕事ができるというサイクルがありますね。

あくまで、マネジメントをされているわけではないということですね。

早瀧さん

Todoistは、全員が同じことをするという意味合いのチームプレイは意識しません。個人が考え自分のやりたいことをすることで、最終的にチームワークが生まれています。Todoistには、サービスを広げたい・タスク管理をしたいという明確なゴールがあります。私たちは、同僚の動きを見て自身で判断し行動するという働き方なんですよ。たとえるなら、ポジションややるべきことがはっきりしているサッカーチームのようですね。ムダなコミュニケーションをとらないので、その部分のコストや時間がかかりません。チームプレイをしないことにより、チームワークが生まれているのです。

日本に関しては、ほぼ全権が私にあります。自主性を求められるチームですと、個々人が自分で判断する。わからないことがあったら率先して調べなきゃいけない。言われたことしかやらない人がいたら、そのチームは機能しなくなってしまいます。

お互いがどんな仕事をしているのか理解しあっている、オープンな環境なのでしょうか。

早瀧さん

マーケティングのすべての統計データにアクセスができるので、各国の売り上げや新しいアカウント数などは見れるようになっています。また1ヶ月に1回、顔合わせのMTGもあります。自己紹介のあと、マーケティングやPRのチームリーダーが全体のフィードバックをします。また、カントリーマネージャーたちも、うちの国ではね……と好きなことをレポートするのです。こういう感じにしたらいいんじゃない?みたいなアドバイスも出ますね。

また、普通に仕事をしている分には個人的な関わりはほとんどありません。人の好き嫌いではなく仕事の重要度だけで人が動く環境なんです。組織って、人の好き嫌いでなんとなく問題があるケースがありますよね。そういったことが、Todoistは一切ないので。

仕事をするというシンプルな目的でメンバーが集まって、チームができていますね。

早瀧さん

そうですね。だから、プライベートについてはほとんど話題にあがらず、今回の私の旅にしても、特に誰も何も言わない。個人的にいい感情も悪い感情も芽生えないんですよ。だから、誰かをひいきしたり避けたりということもなく。いい意味で組織の歯車になっているという感じです。

イキイキと働ける環境は、好きと信頼からできている

組織が成熟していますね。どんな方たちとお仕事をしているのか、とても知りたいです。

早瀧さん

みんなやる気があって、イキイキしています。このまえチェコに滞在していたのですが、現地に住んでいるTodoistのWindowsアプリ開発の担当者と会いました。そこで2人でコーヒーを飲みながら、かれこれ8時間ぐらいタスク管理の普及について話し合ったんですよね。

わざわざ業務外の時間に会って、仕事の話で意気投合したのですね。

早瀧さん

なかなかできることではないですよね。詳しく話を聞いてみると、チェコ人の同僚はDoistの創設者の人や開発グループを担当している人とも旅行のついでなどで会ったそうです。そして、私と同じように何時間も・夜通しタスク管理のことについて話し合ったと。
普段はお互いについて干渉せずドライな関係ではありますが、仕事に関しては熱い一面もあるなぁと。そこはなかなか、他の会社では無いんじゃないかと思います。

自分の好きなことが仕事に繋がり、イキイキと生活しているのだなと感じるエピソードですね。早瀧さんは、これまでもリモートワークで海外の企業とお仕事をしてきたそうですが、他の企業ではいかがでしたか?

早瀧さん

自分の意見が通りにくい、あるいはコントロールされていることが多かったです。

Todoistは、自由にさせてくれていると。なぜそこまで任せてくれるのだと思いますか?

早瀧さん

結果主義だからだと思いますね。あとは、自分がわからないことを正しく認められる。Todoistは、自分が知らないことについてはお願いした相手にお任せするという文化なのですよ。

たとえば、どんなことですか?

早瀧さん

翻訳で例をあげると、英語のTodoistのキャッチコピーが ”Get more thing done every day.”、直訳すると「もっとたくさんのことを、毎日完了しよう」というような意味になります。他には、”Achive more, every day.” 「もっとたくさんのことを達成しよう」というコピーもあります。でも日本向けに考えた場合、達成やアメリカンドリームのようなメッセージって違いますよね。日本はストレスの多い社会なので「ストレスフリーのタスク管理アプリ」と、英語版のコピーとはまったく違う方向に翻訳したのです。

翻訳が違うというより、伝えるメッセージそのものを日本向けにアレンジした印象を受けます。

早瀧さん

この翻訳の対応に、ネガティブなフィードバックは来ていません。「それでいいですよ、あなたがそう思うなら問題ありません」というスタンス。日本市場のことは、自分たち(HQ)より私(早瀧さん)のほうが理解をしているから任せてしまおうという価値観なのです。他の企業の場合、ここまで自由度は高くないですね。

早瀧さんのお話を聞いていると、ご自分のキャリア形成と会社の価値観が合っていて、とても楽しくお仕事をされていると感じます。今後は、どのように仕事をしていきたいという希望はありますか?

早瀧さん

日本市場で、Todoistのツイッターマーケティングが成功しているんですね。来年以降、ツイッターマーケティングについては私が全体のリーダーになる予定です。ツイッターで困ったことがあったら、みんなが相談しにくるという立場になります。

また、Todoistはビジネス向けの仕事ツールという印象が強いのですが、ユーザーを広げたいと考えています。タスク管理を通して、誰もが人生を少し楽にできる・夢を叶えることができる。Todoistはそのためのツールでありたいですね。

リモートワークでお仕事をしながら、着実にステップアップもできる環境がすてきだなと思います。本日はありがとうございました。

取材後記

リモートワークをしながら海外を旅している早瀧さん。Todoistで働くことは、キャリアの大きな転機になったと話していました。リモートワークを通してキャリアを積むこともできます。一歩進んだリモートワークのインタビューとなりました。

(取材・構成・執筆/マチコマキ リモートワークラボ編集部)

 

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