リモートワークとプロセス

オフィスで働く社員とリモートワークをする社員が混在するチームが円滑に業務を進めるためには、就業規則等の見直しだけでは不十分です。

リモートワークの社員を想定しても、各種業務が問題なく遂行できるよう業務のプロセスを見直すことが大切です。
業務のプロセスは会社の規模や組織構造、業務の内容によって大きく異なりますので、ここではリモートワークを導入する場合のステップと気をつけてほしいポイントを解説します。

業務プロセス見直しの進め方

最初に現状の業務プロセスを確認することから始めましょう。業務プロセスが正確に表現された資料があればそれを利用します。資料が古くなっていたり、不足している場合には実態に即して更新しましょう。

業務プロセスを書き出すことができたら、各作業のうち、オフィスにいないと対応できない部分を把握します。例えば、社内の機材や設備を利用しないと完了できない作業や、客先に訪問しないと問題となる作業などです。

そして、リモートワークの社員が対応できるようにするには、どのような工夫が必要か検討します。受発注や請求など、社外に影響が出るプロセスは特に準備や説明が大事です。

リモートワークでの対応が難しい作業は、オフィスワークの社員が対応するという方法もありますが、働く場所に依存した不公平が出るためお勧めしません。トライアル開始の時点で完璧に整備する必要はありませんが、できる限り働く場所に依存して対応できる人とできない人が生まれない運用を目指しましょう。

以下では、業務プロセスをリモートワークに対応させるためのポイントを紹介します。

紙の文書が関係するプロセス

業務の中に文書を印刷して配布するようなプロセスがある場合、リモートワークで対応するのは難しくなります。また、稟議書など印刷した文書に捺印が必要なプロセスも見直しが必要です。

紙媒体を使ったプロセスをリモートワークに対応させるには、電子化(ペーパーレス化)が有効です。電子化はリモートワークに対応できるだけでなく、保管スペースの削減、印刷コストの削減、災害対策やセキュリティ強化にもつながります。配布資料はメールに添付するか、ファイルにアクセスするURLを共有するようなプロセスに変更すると良いでしょう。

稟議など承認プロセスが必要なものは、メールベースでの承認プロセスやワークフローシステムの導入を検討します。こちらもリモートワークに対応できるだけでなく、処理の迅速化や承認進捗の見える化にもつながります。

契約書への署名・押印についてもクラウド上で完結できるサービスがあります。郵送や印紙の費用が節約でき、契約までの時間短縮の効果もあります。取引先との合意が必要ですが、双方にメリットが大きいサービスですので、ぜひ確認してみてください。

クラウドサービスは一人当たり月額数百円から利用できるものが多いです。また、どのサービスも無料トライアル期間を設けていますので、実際に利用して比較検討すると良いでしょう。

会議が関係するプロセス

オフィスの会議室で定例会議を行うようなプロセスがある場合、社外からでも参加できるように見直しが必要です。
最近では無料または安価で利用できる高品質のオンライン会議サービスがいくつもあります。会議室にオンライン会議用のモニタ、マイク、カメラを用意して、それらを活用すればすぐに運用を始めることができます。

 

会議室と各自PCの比較
一般に、オンライン会議には大きなモニタなどの機材が必須と考える担当者が多いですが、各自のPCから個別にオンライン会議に参加する方が会議がスムーズに進行するケースが多くあります。特に、オフィス側の会議室にたくさんの人が集まって、そこに少数のリモートワーク社員が参加する場合には、以下のような問題が発生しやすいため注意が必要です。

  • 会議室側で同時に話す人がいるとリモート側が正確に聞き取れない。
  • 会議室側で小声で話す人がいるとリモート側が聞き取れない。会議室側は敢えて大きな声を出さないといけないのでもどかしく感じる。
  • 会議室側でカメラに映らず相談している気配があると、リモート側が疎外感を持つ。
  • 会議室側はカメラなどのセッティング負担が大きいので、オンライン会議を避けたくなる。その結果、リモート側との対話が減少し、認識齟齬や対立が生まれやすくなる。

 

各自のPCから会議に参加する場合の工夫
各自のPCから個別にオンライン会議に参加すれば、全員の環境がそろうので、聞き取りにくさや負担の不公平感が大幅に改善されます。
しかし、周囲が騒がしくて迷惑をかけたり、近くに参加者が座っていてハウリングが起きやすかったりなど、別の配慮も必要になります。各自のPCから会議に参加する場合には以下を参考にすると良いでしょう。

  • 周囲の声やノイズをひろわないように、人の少ない休憩スペースや小さな会議室を利用する
  • 参加者同士が近くに座るとハウリングが起きやすいので、少し離れてイヤフォンやヘッドセットを使う
  • 上記の点を容易にするため、各自がカメラ付きノートPCやスマートフォンを使って参加する

特定の場所に集まるプロセス

オフィスの大きな研修室などを前提とした全社集会や研修、イベントもリモートワークの導入で見直しが必要になります。

経営者からの年次総括や部門長の方針説明といった一方向がメインとなるコミュニケーションであれば、録画や録音を行なって共有することで情報の格差を解消することができます。

合宿や年次の懇親会など大きなイベントについては、リモートワークの社員も参加できるように交通費を支給して来てもらう形が良いかもしれません。特に一緒に運動をしたり、出し物をしたりといった活動が含まれる場合は、リモートで参加すると疎外感を強めてしまいます。

研修やワークショップなど規模が小さく、頻度も多いものに関してはオンラインでの実施を検討してみます。オフィスでの研修を録画する、配布資料やアンケートを電子化する、大人数で利用できるオンライン会議ツールを活用するなどの工夫を組み合わせることで多くはオンラインで実施可能になります。

研修やワークショップがオンラインで実施可能になれば、各自のタイミングで受講したり、講師が毎回時間をとって説明したりする必要がなくなります。日程調整や実施のコストが大幅に削減できる可能性が高いので、ぜひ検討してみてください。

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