【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第5回:信頼は貯金のように貯まっていく

倉貫

僕の会社だと、お客さんとの打ち合わせを毎週やるんですよ。顧問の仕事なのでシステム開発をするんですけど、ドカンと決めて持ち帰って3ヶ月後に「どうぞ」っていうんじゃなくって、毎週打ち合わせして、毎週ちょっとずつ見せる。毎週ちょっとずつ見せると、お客さんが「ここ違う」とか、途中なんだけど「こっちに変えたい」とか言ってもらえるんです。

仲山

最後に膨大な量を与えられるより、少しずつ見せてもらった方が相手も問題が見えやすいですね。

倉貫

こういうふうに小口化してやるっていうのが僕らの会社の価値観なんです。大きな会社だと3ヶ月後にドカンと締め切りがあって、みんなすごく頑張る。で、最後一気に追い込むみたいなのがあるんですけど、1週間単位だと、毎週わちゃわちゃするんですね。毎週締め切りだから。でも毎週わちゃわちゃすると、その「わちゃわちゃ」がもう普通になる。そうすると段々それが平気になって、リズムになるからちゃんとやるんですよ。これ「3ヶ月後でいいよ」ってなったら、最初の2週間くらい遊ぶ気がするんですよね。で結局最後「しんどいわちゃわちゃ」になっちゃう。1週間単位の締め切りでやってくと、当初信頼がなかったお客さんにも、なんとなく信頼してもらえるようになるんですよね。

仲山

「ちゃんと進んでるな」って。

倉貫

そうそう。大きな約束を最初から結んで、大きく見せて「すごい」と思われるよりも、それまで「この人大丈夫かな?」とお客さんに思われてたのが、毎週ちゃんと約束を守る、毎週言ったことをやるってだけで、信頼が貯まっていくんです。僕は「信頼貯金」と呼んでるんですけど、信頼って貯金みたいに貯まっていくので、実は小口化してちょっとずつ締め切りを守るのって、信頼を貯めるツールなのかなって感じてます。

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宇田川

逆に大きな仕事をばーんと取るってなると、そこのところで信頼の偽装工作みたいなのをしなきゃならないのかなって思うんです。

倉貫

そうなんですよ。僕らの会社は与信管理をしてないんです。いわゆるお客さんとかパートナーさんとかと取引する時に、普通の会社だと与信管理、「この会社はちゃんとお金を払うんだろうか」とか、「この会社はどのぐらい続いている会社なのか」とかいうのをしなきゃいけない。でもそれって幻みたいなものを「本当に大丈夫かな?」ってチェックしなきゃいけなくて、嫌だったんです。ずっと。

宇田川

幻の信頼。なるほど。

倉貫

僕らは月額定額ってして、毎月お金をもらうんです。それでいつでも切れますよってしたら、与信管理しなくていいっていう奇跡が起きて。スタートアップのお客さんが多いんですけど、スタートアップって、SI屋さんに持っていったら仕事を断られるんですよ。「だってお前たち潰れるかもしれないし」って。でも僕らのところは来たらすぐ仕事するんです。なぜならお金を払えなくなったらそこまでだし、お金を払えるうちだけお仕事するってことにしてるから。そうやって信頼を小さく切って小口化すると与信管理がいらないんです。与信管理いらない世界の方がいいなって思って。

仲山

わかります。

宇田川

こっち側も嘘つかなくてよくなりますよね。無理したストーリーを向こうに言わなくてもよくなる。

倉貫

飾り立てなくてもやってることで証明するみたいな。

仲山

倉貫さんの今の話って、楽天の初期のビジネスモデルとほぼ一緒なんですよ。出店料が月あたり5万円と決まっていて、あとは出店者さんがやりたいようにやる。僕らはもちろん出店を継続してもらえるようなサポートをするんですけど。

倉貫

あとはお金のこと気にせずに、精一杯サービスするってことだけになりますもんね。

仲山

どうすればネットショップ運営が楽しくなるか、一緒に考えながら遊ぶ係をやってきました。