リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、リモートワークの為に有効なツールを多数開発している「株式会社ブイキューブ」様にお話を伺いました。2010年からテレワーク制度を導入。2017年にさらなる働き方改革の為に大幅に制度を改定したという同社。
社員ひとりひとりが、自分らしく自己実現を目指せる環境を目指しているそうです。
その具体的な取り組みは? そして実際に地方からリモートワークしている社員の方はどのように働いているのでしょうか?
高見耕平たかみ こうへい
株式会社ブイキューブ執行役員 社長室室長
2014年より社長室長として、
新規事業企画やグループ広報活動を担当。
今村亮いまむら あきら
株式会社ブイキューブ 管理本部人事グループマネージャー
メーカー、サービス、ロジスティクスと多様な業界の人事を経験し、株式会社ブイキューブに参加。人事グループマネージャーとして採用、労務に目配りをする傍ら、ブイキューブ自身の働き方改革に取り組む。2017年10月、全面的なテレワークとスーパーフレックス勤務制度を盛り込んだ「Orange」ワークスタイル導入。
藤田朗ふじた あきら
株式会社ブイキューブ エンジニア
メーカー系SIerにてLinuxカーネルなどオープンソース系のプロジェクトを担当し、2016年に脱単身赴任のため株式会社ブイキューブへ転職。”QOL追求型ソフトウェアエンジニア”をテーマに日々精進中。
社員と共に変化してきたブイキューブの働き方と制度
まず会社概要についてお伺いします。webコミニュケーションツールを多く開発されているということですが?
- 高見
弊社は1998年に創業しました。代表の間下が慶應大学の学生だった頃に起業した会社で、2018で創業20周年を迎えます。Webコミニュケーションツール ──── 例えば今ご利用いただいているような(今回のインタビューは、同社が開発したWeb会議システム「ブイキューブミーティング」を使って行いました)、映像と音声を使って人と人とがコミニュケーションをする────我々はビジュアルコミニュケーションと呼んでいますが、Webを通しても滞りなくコミニュケーションをとれるサービスを開発・提供させていただいています。
現在、およそ5000社程の企業様に導入いただいております。最近盛り上がっている「働き方改革」に取り組む企業様だけでなく、医療や教育、建築分野といった分野においても時間と距離の壁をなくし、誰もが自由にコミニュケーションをとれるようにしていくというのが我々の事業目標です。
web会議サービス「V-CUBEミーティング」を使ってのインタビューでした。
ブイキューブではどのようなテレワーク制度を導入しているのでしょうか。導入の経緯も教えてください。
- 高見
テレワーク制度を改めて整備し始めたのは2010年からですが、震災があったことも(影響が)大きいですね。BCPに基づいた取り組みのひとつにはなっています。
- 今村
会社としてより意識して体制を整備しなければならないステージにきたというところですね。それまでは会社が学生のベンチャーから始まっているということもありますし、もともとはウェブサイトの制作をしていたというのもありまして、最初から「パソコンさえあれば仕事ができる」という人たちで構成されていました。
ネイティブでテレワークが根付きやすく、場所を選ばずに仕事ができるという文化がありましたがありましたが、会社が大きくなるにしたがってテレワークネイティブだけの集団ではなくなってきました。そこで、これはある程度の決まりごとを作り、ある程度の決まりごとを作ろうということになりました。それが2010年の最初のテレワーク制度です。最初はとてもシンプルなルールで始めました。とりあえず正社員で、オフィスで働くことをベースにして、どのくらいの頻度でテレワークをするか、といったような具合です。テレワークというのは営業の方が外にパソコンを持ち出して仕事をするというよりは、いわゆる在宅勤務でした。在宅で終日勤務する場合は週1回程度やっていいですよ、もしくは上長が判断すればしばらくテレワークしてもいいですよ、というような緩やかな規定でした。
しかし従業員の年齢や家族構成の変化に伴って、オフィスによらないワークスタイルやライフスタイルの多様性をより強く意識することになり、昨年2017年10月に思い切った制度の改定に至りました。
もう一つの軸で、国をあげて地方創生の動きも広まるなかで、弊社も積極的に参画し、その結果各地へサテライトオフィスを設けることとなりました。2015年の白浜(和歌山県白浜町)を皮切りに、2016年に仙台、2017年には郡上(岐阜県郡上市)と、各市町村様との提携などを通じて順次オープンしています。このような取り組みもあって、2016年には総務省大臣賞に選出していただけました。
人事評価はどのように行っているのですか?
- 今村
四半期ごとの面談をベースに行っています。その他、自発的に週次など定期的に1on1を行うなどしてコミュニケーションをとっている部署もあるようです。離れたところにいらっしゃる方とは、Web会議での面談です。
テレワークに使用しているツールは自社製品ですか?
- 今村
Web会議以外にもチャットツールは自社製品ですね。せっかく自分たちで開発してる製品ですので。実際に日常の業務で使っていれば、常に問題点を洗い出すこともできますので。ただ、他社製品も時々使って製品比較のようなこともしています。
採用はどのように行っているのですか?
- 今村
採用は全国で拠点を問わずに行っています。説明会もオンラインでやっていますので、日本中どこからでも参加することができます。選考過程の中で、その方が勤務するであろうオフィスに一度は来ていただいていますが。新卒採用では地方採用も積極的に行なっており、中途採用も含め、どこからでも弊社に応募いただけるような仕組みにはなっています。
地方から「一緒に」働く自由な働き方を活用するためのチームも自分も工夫を重ねる
〜仙台開発拠点・藤田さんの場合〜
- 今村
郡上八幡(岐阜県郡上市)にHUB GUJOという紡績工場をリノベーションしたてコワーキングスペースとして運営されている施設があります(http://www.hubgujo.com/index.html)。郡上市は日本の真ん中、へそとも呼ばれている場所ですが、そこでのふるさとテレワーク推進事業の実証事業としてにブイキューブも参画してサテライトオフィスを構えました。そこに副社長や事業部長といった役職者のマーケティング本部長がクラスの社員が一定期間駐在し、いつも通りの業務を行いました。
サテライトや遠隔で勤務するときは、デスク上のPCのモニタのひとつを中目黒のオフィスと常時接続し、Web会議システムを通していつでも話しかけられる状態にして仕事をしてもらっています。
では一緒のオフィスにいるような気持ちで働けるという感じですね。
- 今村
そうですね。私たちは空間共有という言い方をしています。あたかもそこにいるかのように感じられる状態にして、その場でちょっとした会話やミーティングをすぐにWeb会議でできるようにしています。
郡上市のサテライトオフィスはどういったきっかけで開設されたのでしょうか。
- 今村
郡上市の平成28年度ふるさとテレワーク推進事業である、「郡上クリエイティブテレワークセンター」創設プロジェクトに参画させていただいたことがきっかけでオフィスを立ち上げさせてもらいました。そこから郡上市教育委員会様にても学校と市役所をつなぐコミュニケーションツールとしてブイキューブを採用していただくことにも発展しています。オフィスには今、マーケティングの方が1人常駐していますね。
今までテレワーク制度は一部の社員で週1回程度ということだったんですが、理由はありますか?
- 今村
もともとオフィスに勤務することを前提として、就業管理制度の都合上の規定でした。しかし例外があったり、この先もいろんな課題が出てくることは予想ができました。というのは会社自体の年齢構成も年代とともに変わってきており、20代が減って、30代〜40代の層が増えてきました。子育てや介護など、社員のライフスタイルが転換期に差し掛かる頃です。そのため、より多様なワークスタイルを選べるようにしていこうと考えました。
社員の年齢だったり子育てだったりがきっかけですか。
- 今村
はい。例えば、昨年の大幅なテレワーク規定の改定を行いましたが、スーパーフレックスタイム制(6:00~21:00に自分の裁量で働く時間を選べる制度)を導入し、中抜けも可能にするなど、これまで育児などで短時間しか働けなかった方でも、少しの隙間を見つけていつでも働けるようにしています。こういった経緯の中で、サテライトオフィスの一つ、仙台の開発拠点で採用を行い、東京から地方に移住した例もあります。エンジニアの藤田さんはそれで仙台に戻られました。
- 藤田
ええ、仙台から東京へ出て、ブイキューブに入社して仙台に戻る形になりました。
自由な働き方を活用するためのチームも自分も工夫を重ねる
〜仙台開発拠点・藤田さんの場合〜
藤田さんは仙台がご実家なんですね。仙台の拠点からリモートでお仕事をされているということですが、そのきっかけについてお話いただけますか?
- 藤田
私は生まれも育ちも仙台で、最初は仙台のSIerで働いていました。ところがその会社の統合がきっかけで東京に人材を集めることになってしまい、単身赴任することになりました。当時まだ子供は0歳と4歳と小さく、妻もフルタイムで働いておりいわゆるワンオペ状態でした。仙台へ戻れるよう社内で調整を図っていたのですが年単位でことが動く社風でしたので、のんびりしていられないと思い、ブイキューブが仙台拠点で人材を探していることを知って応募しました。
移住してよかったこと、また逆に困ったことはありますか?
- 藤田
家族と一緒に過ごせることが一番のメリットですが、労働環境で言いますとテレワークができることです。時間が柔軟ですから、臨機応変に対応できるのが良いですね。基本的にはオフィスで仕事をしますが、用事がある日は自宅で作業することもあります。働く場所を変えると普段と別の刺激があり、良いアイディアが浮かぶこともあるためテレワークの仕組みは活用しています。困ったことと言えば、最近は増えてきましたが仙台はまだ勉強会や技術的なイベントが少なく、最新の技術に触れる機会が少ないところですね。また、上司や直接仕事に関わるメンバーとは年に1〜2度くらいしか直接会うことがないため、少し自分の存在をアピールはするようにしています。
アピールするというのは具体的にどのようなことをしているのですか?
- 藤田
私はソフトウェアエンジニアですので、作ったものが目に見える成果として示しやすいというのはあるのですが、コードや仕様書などはきちんと作成し、情報は自分から発信するようにしています。また、疑問があればすぐにチャットで聞くなど、活動が目に見えやすいようにしています。
なるほど、今何をしているかわかるようにしておくのは大事ですよね。
- 藤田
そうですね。状況や情報はなるべくこまめに共有するように心がけています。
藤田さんの普段の1日の働き方のリズムのようなものは決まっているんですか?
- 藤田
はい。オフィスは基本的には10時から19時までとなります。私は子供を保育園に送ってから出社するため、8時30分には仕事を開始し、大体19時に退社します。タスクがある場合は、一通りの家の用事をすませてからテレワークしています。
仙台オフィスの様子
割ときちんと決めているんですね。
- 藤田
家族との時間を大切にしたいというのもありますし、時間を意識して区切りながら働かないと夜中まで作業してしまい、結果オーバーワークということになりやすいので…。
(自分を)コントロールしたり管理したりというのは、働き方が柔軟な分だけ必要になってくることですね。そういう風に気をつけていることって他にありますか?
- 藤田
Web会議をする時に、ネットワーク速度が重要であるため、事前に計測してベストな状態にできるようにしています。あと、F2Fでのコミュニケーションとは異なりWeb会議は相手の言葉が頭に残りづらいため、録画ツールを使うようにもしています。会議後見返して内容を再確認しています。
頭に残りづらい、わかります。常に工夫をして、より快適な作業環境を作っているんですね。最後に、ブイキューブさん全体のお話として、テレワーク制度を導入してよかったこと、逆に困ったこと、これからについて何かあれば教えてください。
- 今村
大きな問題点というのはまだ出ていないですね。2017年の制度改定で、テレワークする回数やスタイル、アルバイト以外は誰でも利用できるなど、あらゆる制限をとっぱらいました。制限をかけないとみんなが勝手なことをやってしまうんじゃないかという懸念もありましたが、そのあたりのトラブルもまだ聞こえてきません。
もともと会社のカルチャーとして、テレワークすることに抵抗がなかったので、導入もスムーズだったんじゃないかと思っています。これを機に東京のオフィスに縛られず移住をしようという希望者もちらほら出ていますね。自分がやりたい働き方を選べる、そういう環境が整いつつあると感じています。 導入して良かった点の方が圧倒的に多い。今後課題というか、(制度の)使いにくさみたいなものも出てくるでしょうけども、ひとつひとつふさわしい形で対処していければと思っています。
会社として働き方に対する柔軟な姿勢が、より自由で働きやすい環境を生むんですね。とても素晴らしい取り組みだと思います。本日はありがとうございました!
取材後記
世相や社員のライフスタイルの変化に合わせて柔軟に制度を作り変えていく姿勢が、より社員にとって働きやすい環境を作っていくのだなと感じました。
今後もさらに制度をさらにブラッシュアップさせて、どこにいても働ける社会を目指す方針だそう。開発されている数々のツールも、リモートワークの可能性を広げてくれるものばかりです。ますますのご発展をお祈りいたします!
(リモートワークラボ編集部)
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