リモートワークラボ

【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 林宏昌(株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 エバンジェリスト/Redesign Work Inc. 代表取締役社長) × 岩崎奈緒己(リモートワーク研究所副所長)

自分らしく働く時代。働き方が多様化する中、誰もが自分らしい働き方を模索しています。だけど、自分らしさには正解がないから難しい。

多種多様な働き方をする人々を迎えて「働き方」について再考するシリーズ「ボクらの働き方」。

第3回は、副業や働き方改革をテーマに、より枠にとらわれない働き方を推進する林さんを迎え、リモートワークラボ所長・副所長とトークしていただきました。


林宏昌はやしひろまさ

株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 エバンジェリスト/Redesign Work Inc. 代表取締役社長
2005年、リクルート入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを二年連続受賞、6年目でマネジャーに昇進する。2012年より社長秘書を務め、2014年に経営企画室室長、2015年より広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダー、2016年から 働き方変革推進室(※2018年2月時点)室長に就任し、現在(※2018年2月取材時点)に至る。

岩崎奈緒己いわさきなおき

リモートワーク研究所副所長
システム開発会社、モバイルコンテンツ事業会社を経て、2015年より株式会社ソニックガーデン経営企画室長、リモートワーク研究所副所長。コミュニケーションツール選定から労務管理やセキュリティの相談まで幅広いリモートワーク導入支援を行う。リモートワーク企業向けITツール開発にも携わる。

倉貫 義人くらぬき よしひと

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長
京都生まれ。立命館大学大学院卒業。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルを展開。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
ブログにて、人材育成からマネジメントまで、ソニックガーデンの経営哲学とノウハウについて、日々の学びを発信中。
http://kuranuki.sonicgarden.jp/

僕が副業を始めた理由

倉貫

林さんは今リクルートで働きながら副業で会社を持っていらっしゃる。副業はどういった経緯で始められたんですか?

そうですね。もともとリクルートは副業自体はオッケーなんですよね。僕自身のきっかけは、リクルート内で働き方改革をやったことです。

倉貫

リクルートは副業してもいいんですね。

そうそう。事業の競合先でない、組織長及び人事部署長の承認を得る等、条件を満たせば基本的に大丈夫です。とはいえ、副業するような時間的な余裕はない。働き方改革では、個人の時間をもっと創出したいと考えて進めてきたこともあり、僕自身少し時間も出来てきた事もあります。「副業しよう!」と思って副業を始めたというよりは、結果的に副業することになりました。

倉貫

「やろう!」じゃなくて、自然と始める流れに?

そうです。働き方改革をやって、いろんな企業の方々とお話しするようになったんですが、みなさんつまずいてたり、あるいは全くうまくいってなくて、苦し紛れに夜、電気消してみたりPCを強制的にシャットダウンしちゃうみたいなことになってて。

倉貫

ドローンが飛んできて帰りを促したり…。

そうそうそう。

一同

(笑)

もう、どこを目指してるのかがわからない状況で。働き方改革の本質って、個人が多様な形で働けて満足や幸せを得られるということと、企業の成長が加速するということ、この両輪を回すことだと思うんですけど、両方壊れてるわけですよね。

岩崎

ありがちですね。

「定時だから帰れ」と言われて嬉しい人もいれば、あと30分残業して終わらせてしまいたいという人もいる。みんな個別の状況を抱えているのに、全員一律で施策を打つから、こじらせて変な形になってる。でも、具体的にどうやって働き方を変えていけばよいのかはだれもわからなかったんですね。
であれば、リクルートが率先して、トライアンドエラーして、失敗したことはサイトにも出してオープンにしていこう。そうやってナレッジを出しながら、みんなの働き方改革の起点になれたらいいなと思ってやってきました。そんな中で、もう一段入って、コンサルティングして欲しいとか、アドバイスをもっと具体的にもらえませんかと言われるようになりまして、それなら僕自身が会社を作ってやろうかなと。そういう文脈でこれを僕の副業にして、ついでに自分の会社での副業をもっと推進して行こう、そう思って始めたのが去年の5月くらいです。今メンバー3人で、全員副業・全員リモートという形でやってますけど、何の問題もないですね。集まる必要もないし。

倉貫

副業で起業するのに、別にオフィスもいらなければ席もいらないし、集まる必要もない。その辺も副業をやりやすくなった要因ですよね。事務所を借りたら初期投資もかかるし、ランニングコストもかかるし。

事務所どうするんですかって、結構いろんな人に言われるんですけど、逆に「事務所いるんですか?」って。メンバー3人、お客さんのところでしか会わないんですよ。

一同

(笑)

岩崎

逆にそこが集合場所(笑)。

そうそう。今僕らチャットツールはマイクロソフトのTeamsを使ってるんですけど、そこどんどん作業を投げて分担して、何のストレスもなくやってます。

働き方改革、うまくいく会社といかない会社

倉貫

他の会社さん見るとやっぱり違いますか?

面白いことに全然違うんですよね。僕らのお客さんは大企業が多いんですけど、「失敗してはいけない」というのは多いですね。僕らも大企業ですけど、リクルートならではの軽やかさが結構あるんだなあと。

倉貫

企業文化はありますよね。各社によって。

そうですね。前例の無いことに取り組みたい会社さんも、前例や実績を大事にされている会社さんもあったり、ボトムアップで進めていこうとされているのかトップダウンで進めていこうとされているのか、それぞれ客観的に見ていると良し悪しもわかってくるんですよね。会社によっていろんなカラーがあるのも面白いです。自社の考え方や風土を客観的に見られるようにもなりますし。

倉貫

自分を客観的に見られるというのはメリットですね。

あとはどこまで入るかっていうのも悩ましいテーマではあって、もう全部やっちゃおうかなって思う時もあるんですけど、時間的なリソースが僕自身限られるのと、最終的にはその会社の中で自律的に回って行くことを目指してるんで。

岩崎

林さんが抜けてまた戻ったら意味ないですもんね。

そうですね。一定程度自律的に回って行くところまでは伴走をしたいなと思ってるんで。

倉貫

僕らはソニックガーデンという会社で、自分たちが使ってるリモートワークのためのツールを販売してますけど、それだけやっててもダメなんですよね。もっと根本的な、リモートワークの導入から相談に乗った方がいいし、その結果うちのツールを使わなくても、お客さんが良くなったらそれがベストだと考えていて。そのためにソニックガーデンという場所とは別に、ちゃんとリモートワークの相談を受け付ける場所として、岩崎さんとリモートワーク研究所を作ったんですよ。

岩崎

僕はもともとソニックガーデンで、リモートワーク向けツールのマーケティングをやっていたんです。お客さんにツールの説明をすると、多くの場合「いいですね、使ってみたいです」って言われるので、本当にそんなにすぐ使えるのかな、と不安を抱えつつ渡すんですね。それでしばらくすると「やっぱりうまくいかない」っていうパターンが多い。

ああー、わかります。

岩崎

みんなツールから入ろうとして、それは別に悪くはないんですけど、うまくいかない理由が最初わからなかったんです。たまたま合わなかったのかな、ぐらいに思ってて。そのうち「合う」って会社がだんだん出てきて、真面目に違いについて考えるようになりました。その後、リモートワーク研究所の副所長という役割になって、いろんな会社の担当者の方とこれまで100人以上お話してきました。その過程で、うまくいくケースとうまくいかないケースが見えてきたんですよ。言語化するのは難しかったですが、ツールだけ売っていこうとしても難しいなと。

何が必要だったんですか?

岩崎

うまくいったケースとうまくいかなかったケースのどこが違ったのかをよく考えて、今ちょうどその延長でコンサルティングみたいなことをやり始めているんですが、うまくいってる会社もみんな一様だと思ってたんですけど、実は3つぐらいパターンがあります。1つ目は簡単で、最初からみんなリモートワークしている会社。

一同

(笑)

岩崎

これは真似が難しいんですよ。当然全部リモートワーク前提で綺麗に組み立てられている会社ですから、それを今までオフィスワークで、しかもそれが良いという文化であった人たちが真似しようとしても無理なんです。
2つ目はうまくいってるように「見える」パターン。ガチガチに制限を入れてるんです。週1回だったらまだ良い方で、月1回とか、隔週に1回とか。僕が聞いてびっくりした条件は、「家でやる方が生産性が上がるという根拠があって、それが上司に承認された場合」。どうやって説得するんだろう?って言う(笑)。

倉貫

難易度高い(笑)。

岩崎

要はたまに使うっていうケースですね。会社としては制度があるので、「導入しています。うまくいってます」といえる。他には家を缶詰みたいに使う方も多いんですね。「今日人事考課するから家でやる」とか、「今日は体調悪いからメール見ないで書類仕事だけやる」とか。これ、うまくいってると言われるんです。集中できると。この2つ目のパターンには「広げられない」という問題があるんです。

本質に踏み込んでないですもんね。

岩崎

で、3つ目が、みなさんにおすすめしてるんですけど、できるだけ情報格差をなくしていくパターン。林さんも先ほどツールを使ってやられてるとおっしゃってましたけど、ツールをうまく使ってオフィスっぽいやり取りを、できるだけ情報格差なくしてリモートでやれるようにするんです。会社によってツールも色々だし、制度も色々だし、業務によってかなり違うんですけど、リモートが下でオフィスが上とか、そういう形にはなってない。そういう会社は成功してますね。なので一律でガッとやるのは難しいんじゃないかなって。

部署によってもまた違うじゃないですか。

岩崎

そうなんですよ。

『全社一律の人事制度』から脱する時が来ている

全部署横断で一律の人事制度っていうのが限界を迎えているんじゃないかと。やっている仕事の中身とか、コミュニケーションする人の数とかスピードによって、多分使うべきツールもやり方も変わるはずなんです。だから人事制度も当然違うはずで、そこを統合するんじゃなくて、バラバラで実験したり、何が最適か探求するといいんですけどね。

岩崎

そういうのって大きな会社でITコンサルティングやってると「汎用性が」とか「全部統一して」になりがちじゃないですかね。そこはどうやって進めていかれるんですか?

汎用性の中でも汎用化できる部分と、個別最適できる部分をどのくらい残すかという話を、何回もしていくという形しかないですね。やっていくと、失敗も成功もある程度パターンが見えてくるんで、それを積み重ねていくと「これやったらどうなるんだろう?」って聞かれた時に「こうなりますよ」って言えるんですね。そうやって個別最適は示してあげながら、しっかりと進める。自分たちならではの何を大事にするかということでもありますし。

岩崎

何もかも変えちゃうのかってなると不安ですもんね。

そう。「全部変えるのか?」っていう問いは切り分けてあげなきゃならないですね。「文化を変えるのか?」っていう問いも出ます。例えば、大部屋でわいわいみんなでコミュニケーション取りながら仕事をするスタイルだったとして、そこは変わりませんよと。でもツールを使ってコミュニケーション増やしていけば、実は場所がバラバラでもできるということが、僕たちの今までの実績からわかってる。そこがわかるまでは、バラバラになったらコミュニケーション減るんだろうな、とか、チームワーク低下するんだろうなって思ってたんですけど、それは実はそう思ってるからそうなっていくだけのことで、絶対回避しようって思いながらやったらできるんですよね。

岩崎

そうですよね。リモートワークって、どちらかというと子育てとか、家庭との両立みたいなところでよく引っ張り出されるんですけど、それだけだと「なんでリモートワークをするのか?」が弱いなと思うんです。実際僕らはリモートワークをやっていて、効率はよくなるし、コミュニケーションも増えます。「透明性が減る」「何やってるのかわからない」なんて言われますけど、実はオフィスでこそこそやってるよりよっぽど全部見えるんです。リモートワークは福利政策的なものじゃなくて、経営戦略とか全体戦略みたいな企業のプラスを補強できるということがもうちょっと知られていいんじゃないかなって気はします。

僕らの役割は特に経営として価値があることをしっかり証明していく側だろうなと思っています。ロマンとそろばんみたいな話ですけど、多様な人が多様な働き方ができる社会っていいですよね。でもそろばんの文脈で言うと、「儲かるの?」「いい人採用できるのの?」っていうシンプルな問いがあって、これは両方実現していけるし、両方大事だと思うんですよね。

岩崎

そうですね。

両輪をどう回していくのか

大企業の人たちが働き方を変える為には、両輪をどう回していくのかってことを考えないと、ちゃんと動いていかないんですよね。その両輪を回す時に一番大事なのは、いかにしてそこにトランジションするのかということなんですけど、これが一番難しい。さっき岩崎さんがおっしゃった、最初からリモートワークでしたみたいな会社はそりゃもう合理的なんですけど、それが合理的だとわかっていない人たちが、合理的な世界に気づき、そっちに向かっていく為にはどのステップで変えていくべきなのか?これが難しいんですよね。でも僕らはそれを大企業で一定程度進めていく中で、たくさんの反対意見や、リスクに対する不安をいただく経験をしてきました。だからこういうステップで話しましょうね、こういうことでアンケート取っておきましょうね、こういう形でデータ取りましょうねと言えるので、ある程度進めるノウハウが蓄積できてきましたね。

倉貫

それはもう企業ごとに合わせて考える感じですか?

割とそうですね。

倉貫

リクルートと同じやり方をやりましょうと言ってもうまく行かないですよね。

ええ。それぞれの進め方とか思惑とかスピード感とかもあるんで、ほんとそれぞれですね。

倉貫

そういうのがなかなかできなくて、僕はコンサルは今世は諦めようかなと思ってるんですけど(笑)。よく僕の講演を聞いた方から相談がきて、ソニックガーデンではこうしてますって話をすると、「それは無理だ」って言われます。

言われる言われる。

倉貫

で、どういう状況かもうちょっと突っ込んで聞いて、「じゃあそもそもこうした方がいいんじゃないの?」って言うと、今度は「そこを変えると弊社ではなくなります!」って(笑)

一同

(笑)

倉貫

その人なりのアドバイスを考えるのってなかなか難しいなって思って。いろんな会社見てると、こっちでうまくいったけどこっちでうまくいかないというのはやっぱり出て来ますよね?

出て来ますね。

倉貫

共通して大企業ならではなところはあるんですか?

岩崎

僕の印象だと、数字や定量で示す必要がありますね。まずそれを出せないと話が進みにくい印象です。

「とりあえずやってみよう!」みたいな物事の進め方はあまりやらないことが多いでしょうね。やっぱり一定程度確立されたやり方があって、過去から積み上げてきた蓋然性の高いKPIを掲げてそこに向けて事業を進めるので、そこを大きく変えたり全く未知な話に飛び込むっていうのは難しいです。
あとはウォーターフォールっぽくやろうとするところがあります。一年後・三年後の理想の働き方を描ききって、価値あるテーマにフォーカスして、KPIを描ききって、ミスなく推進せよ!みたいな。

倉貫

ありますね!

『働き方改革』は『新規事業開発』に近い

僕らは働き方改革というのは、実は新規事業開発に近しい、そういう進め方がいいと思っているんです。先に方針やKPIを掲げても、そこに方法論は何もないわけですよね。例えば会議減らそう、早く帰ろうって言っても、実際どうやったら会議が減らせるのか、どうやったら早く帰れるのかっていう方法がないので、結局進まない。それを方法がないままウォータフォールで、いつまでに何パーセント削減されているのか、みたいなことをマイルストーン切って進めていくけど、KPI置いてるから、「とりあえずなんでもいいから帰ってください」ってなりがちで。これ、冒頭でも言ったことですね。

倉貫

なるほど、それ面白いな。今まで働き方改革とか意識改革を、「新規事業」って見た人がいない気がするんですよね。

いやもう全くそのやり方に近いんですよ。

倉貫

言われてみるとそうなんですよね。その確立したやり方があるわけじゃないし、さっき話した通り会社ごとに背景があって、人数が違えば文化も違うわけで。

そうそうそうそう。

倉貫

ゴールははっきりしてるけどそこまでの道筋がたくさんあって、行き止まりに行ってまた戻って来てって繰り返すのは、確かに新規事業ですよね。

ですね。


『働き方改革』は『新規事業開発』に近い

倉貫

林さんの言う通り、働き方改革を新規事業だと思ってやれば取りかかれそうな気がしますよね。

今、マーケットやテクノロジーの変化がすごく速くなってきて、未来が見通せないところがありますよね。以前はトップの人たちにあらゆる情報が集まってきて、じっくり6カ年計画を描いて、現場が着実に実行して…という形でしたけど、もう今のスピードでは6年後とか言ってられない。だからもう現場から具体案を出して、面白ければどんどん事業計画に昇華させていく、真逆の動きに変わっていかなきゃいけない時代になってきてると思うんです。

倉貫

「ピラミッドを作るんだ!」って言って3段ぐらい作ってるうちにブルドーザーが誕生してるぐらいのスピードなんですよね。「なんで石を手で掘ってたんだっけ?」みたいなことが起きてる時代に、みんなで言われた通りにピラミッド作るなんてもうやってられない。ところで新規事業をウォーターフォールでやってもだめだってことにすら気づいてない人はまだ世の中に多いですよね。

多いですね。

倉貫

すでに確立した事業ならどれだけ頑張ったらどれだけのリターンがあるかが見えるけど、新規事業にそれを求めるのはナンセンスだなと思っていて。僕も新規事業をやった身ですから、数字で見るのをやめようとか、多産多死で、1年に1回だった新規事業立ち上げを毎月にしましょうとか、そういうことをしたいのはよくわかるんです。でも一方で、僕がその会社の経営陣だとしたら、株主に対してどう説明をするのか、もしくは自分が経営者としてどこで安心するのかというのを考えてしまいますね。

年に12回としたら、生まれる確率が高まるのかが不明確ということですか?

倉貫

そうですし、「計画なんてナンセンスですよ」と新規事業を作る売る人が言ったら、僕はそれに金を出していいんだろうかって思うんです。もしくは金を出したものの、多死ばかりでいつまでも何も生まれない場合に、それに対する不安がどうやったら解消されるのか。計画や数字っていうのは、経営者がステークホルダーへの説明だったり、自分への納得や安心の為にあるものだと思っているんですが、それを「ナンセンスだ」と言い切られてしまった場合に、どうすれば良いのかという…。

投資家と中長期で「こんな事業を作っていきたい」というロマンは語りつつ、「今期は少なくともこれぐらいやります」というものを掲げて、それを着実にクリアしていくことの積み重ねで、ステークホルダーの皆さんとは信頼関係を作る。ただ、前提としては対話が重要で、場合によっては新しいファインディングスがあると、ピボットする必要もありますので。一定程度既存事業の磨き込みでKPIを達成し、新規事業がうまくいった分は美味しいと思ってくださいね、という形になりますよね。

倉貫

うんうん。

「これが3年後には多分1千億ぐらいになるはずなんです!」って叫んでも、実際危なくてしょうがないじゃないですか。だからそれはもうプラスアルファと考えてもらうんです。ただし、そのプラスアルファにどれだけ本気で取り組むのかっていうのが大事なポイントで、事業側がその既存の磨き込みに使う時間を効率化したり、あるいは何かを捨てながら、新しいものに時間を振り分けていくことが必要になってくると思います。

倉貫

プラスアルファね。

インプットを得ることも大事ですね。企業としてのトランジションはもはや「やらないといけないこと」なので。面白そうなベンチャーに声かけて組んでみるとか、そういうことから始まっていくことってたくさんあるじゃないですか。

倉貫

その為には余裕を作りましょうということですね。

そうですね。それぞれの従業員が持ってる人脈の中からどんどん進めていくべきなんですよ。昔だったらその人脈の先が大きい会社さんで、上司同士が話し合って「提携する」なんて大ごとになっちゃってましたけど、今はもっと現場レベルでライトに組める。コストだってすごく下がってますし。

倉貫

そうですよね。もっとカジュアルに進められるはずだし。

リモートワークを福利厚生的に使わない

岩崎

リモートワーク研究所でも同じように、相談を受けたり取材したりしてやってると、最初の出会いはリモートワークの文脈なんです。リモートワークについて何か発信したいという話で出会って、その先で、例えばちょっと作りたいものが出てきたときに、開発もやってるよね?となったりする。ひとり分のツテからいろんな文脈で広がっていくっていうのは結構あるって思ってます。それにリモートワークに興味を持たれてる会社さんって、ライトなんですよね、やりとりが。広がっていくことに慣れてるというか。そうやってライトに繋がっていけるのは、いいところですよね。

そうですね。だから僕らはリクルートの中でも、副業でお手伝いしてる会社さんでも、次のステップを見せていかないといけないなと思っています。
例えばコミュニケーションを増やして、意思決定のスピードを早くすると、会議の時間をグッと減らせるだとか、営業がサテライトオフィスをうまく活用すると、一日あたりの平均移動時間が減るよとか、リモートワークや働き方改革が、売上や利益
に直結する新しい価値の実例を出せるといいなと。

岩崎

そうですね、実例が一番わかりやすい。

リモートワークを福利厚生的に捉える一側面ではダメだと思うんですね。そうじゃなくて、育児や介護があるので通勤ができない、あるいは家でやる方が便利、みたいな人たちはリモートワーク使えばいいし、好奇心旺盛な人は、いろんなお客さんのところで働いてみたらいいし、その結果、副業とか働く場所が変わったことによって出会った人とどんどん事業を繋げて加速させたり、新しい事業を作っていけるみたいな事例が、徐々に出てくると盛り上がりますよね。

岩崎

攻めの話題が結構少ないんですよ。

そうそう。狙ってはいるけどまだ事例が少ないから。

倉貫

そうなんだよねえ。

だから、皆さんと一緒に作っていきたいです。

岩崎

僕もリモートワークの相談を受けてると、産休育休に入らなきゃいけない社員が、仕事を続けるためにリモートワークの制度を導入したい、っていう会社が多いんです。その文脈はすごく多いし、成功事例でもそのパターンがかなり多いんですよね。その代わり、攻めの営業マンが、リモートワークしたら業績が倍になりました、みたいな話題はあんまりない。

倉貫

ないね。

岩崎

業種によってやれることやれないことあると思うんですが、今まで訪問型、来店型でやってるビジネスが劇的に変わってくるんじゃないかと思っているんです。リモートワーク自体を福利厚生レベルじゃなく扱えば、もっとやるところが増えてくるんじゃないかな。さっき言ったように、会社の戦略としてやるような、それこそ新しいビジネスモデルになるぐらいの。それをいろんな業界でこれからやっていくのが大事かなって。

思いますね。単純なところで言うと、訪問の概念がなくなれば、移動時間が全くなくなる訳ですから、スピード感が違うはずなんですよね。そこからだって全然違う働き方のバリューが生まれてくる。

名刺に書きたい「テレビ会議ウェルカム!」

岩崎

ちょっと余談なんですけど、訪問って、行くのも来てもらうのも、そのために1時間会議室とると、短く切れなくなりますよね。

あ、そうなんですよ。

岩崎

営業の訪問って、最初の15分くらいで「これは違うな」って思っても、お互い気まずい雰囲気のまま、後の45分くらいズルズル続くじゃないですか。

わざわざ来て頂いたっていう忖度が働く。

岩崎

忖度働きますよね。お互いにもはやそこにいたい訳じゃないのに、失礼な感じがして…。

一同

(笑)

岩崎

お互い時間が勿体無いですよね。でもリモートでの営業だと、話し始めてすぐに「これは違うな」ってお互いにわかった時に、その場でツールを売るという目的は捨てて、未来のお客さんになってもらう望みを託して、一番良いソリューションを提案するんですよ。それで10分で終わっちゃったりする。でもそれって、無駄がないじゃないですか。移動がないし、お客さんも欲しいもの持って帰れるし、僕も最低限の時間でファンを獲得できるかもしれない。そういうやり方がもっと広がれば変わるんじゃないかと思って。

だいぶ変わると思いますね。コミュニケーションって色々あるじゃないですか。議論、ブレスト、情報共有や意思決定。その中で、物理的対面が必要なのって、ホワイトボードを使いながらのディスカッションとか、ポストイットに書いたものをペタペタ整理したりすることくらいで、それ以外のコミュニケーションはむしろチャットやテレビ会議が一番いいと思っています。特に初回訪問こそテレビ会議が合理的ですよね。ちょっと導入を話して、お互いに合致しそうなら、膝付き合わせて絵を描きながらやりましょうかって話になって初めて「会おう」と。

岩崎

そうですね。物理的に会うんだったら物理的空間に実際に手で触る必要がある時とか、手を動かしながらやるとかね、せっかく会うんだから、そういうものにフォーカスした方が良い。会うことがちょっとした非日常になるんですよね。

倉貫

初対面こそテレビ会議。なんか初対面は顔を合わせて挨拶した方が失礼がないと思われてるけど、むしろテレビ会議でいいですよね、こちらは。もう名刺に書きたい。「弊社テレビ会議全然失礼に当たりません!」。

一同

(笑)

そうそう。まさに同じ文脈で、「テレビ会議ウェルカム!」って名刺に書くキャンペーン広げられないのかっていう話、以前に倉貫さんとしましたよね。相手に来て頂くということは、そのためにこちらもオフィスに馳せ参じることになる。今までみたいに当たり前にオフィスにいた頃は、フロアを変えて会いに行くぐらいでそんなにパワーかからなかったけど、今は違うから。本来はお互いに「テレビ会議でよくないですか?」って一言言えていれば、よかったものなんですね。なんですけどこれが言いにくくて。僕が「テレビ会議でいいですよ」って言うと、どういう意図で言っているのか相手が戸惑っちゃう。

一同

(笑)

「そこは私たち対面でしっかりとやらせて頂きますので!誠意です!」って。テレビ会議が逆にしっかりしてないって印象があるんですよね。

倉貫

軽く見られちゃうのもありますね。

今後は訪問を受ける人のことをもっと考えないといけない時代になりますよね。相手が30分の訪問を受けるために、2時間くらい通勤にかけることになるってことが起こりえますからね(笑)。今だと、そんなこと言ったらわがままな印象になったり、「テレビ会議でやりませんか?」って言えたとしても、相手がテレビ会議に慣れていないと、「申し訳ありません。弊社遅れててそういうことがちょっとできないんです…」ってすごく申し訳ない雰囲気になることがあるんですね。

岩崎

あーある!すごいある(笑)

「あっいいんですよ。いいんですよ」ってこっちも申し訳ない雰囲気に。

岩崎

ITツールを作ってるような会社でも、問い合わせると、「じゃあ営業で訪問に伺うんで!」と言われることが多いですね。「訪問しないでオンラインで営業してもらえますか?」って言ったら、「オンラインは対応してません」なんて。

一同

(笑)

岩崎

意外と営業の人って、対応してなくって。

行くのが正しいと思ってる前提が根強くあるから、そこでお互い「テレビ会議ウェルカム」って書いてあると、「おっ、ウェルカムですか?やりましょうか?」って感じになりやすいから、もっと広がって行くんじゃないかなって。

岩崎

ロゴマークみたいなやつですね。

可愛いロゴを作って頂きたいな。シールみたいなものをペタって貼ってやれるといいなあ。だって言い出す時のトーンがね…。

倉貫

難しいですよね、言い出すの。

そうそうそう。

目指せ「忖度レス」!

倉貫

うちの会社、採用面接は100%テレビ会議なんですよ。でもね、「テレビ会議で面接します」と言うと、「会って僕の情熱を伝えたい」って言い出す人がいるんですよ。そういう人は不合格。

一同

(笑)

岩崎

情熱に厳しい(笑)。

倉貫

気持ちはわかるけど、情熱をテレビ会議で伝えられないとしたら、この先仕事できないですから。事あるごとに会わなきゃいけなくなる。

オンラインでも情熱は十分伝えられますよね。

倉貫

「テレビでも情熱伝わるよ?」って。うちの会社の社内結婚したメンバーは、テレビ会議で副社長に結婚報告しましたからね。

おおー。

倉貫

ちゃんと報告してくれたので、それでよかったと思う。

岩崎

お互いにね。

一同

(笑)

そりゃそうですよね。

岩崎

テレビ会議する人は簡単に使うじゃないですか。でもハードル高いと感じる人は多いですね。

うん、多い多い。

岩崎

こっちは普通に使いすぎてるからもはやその感覚がわからなくなってるんですけどね。

倉貫

初回のハードルが高い。1回やっちゃえば慣れてくるんだけどね。僕らのお客さんも、テレビ会議に慣れてないお客さんが会いたいと言ったら、流石に「テレビ会議じゃないとやりません」とは言わないで、ここ(※この鼎談はソニックガーデンの自由が丘オフィスで行われました。)に来てもらうんですけど、テレビ会議を1度教えると、お客さんの方から「テレビ会議で」って言ってくるんですよ。

便利ですもんね。

岩崎

定期的にやるのが大事だと思いますね。

そうですね。だから、僕は一番最初に「リモートワークを週三日以上やってください」と提案して進めました。頻度が低いと、リモートワーカーが「今日テレビ会議を自宅からやりまーす」と言っても、オフィス側の人がいつまでも慣れなくて戸惑っちゃうんですよね。

岩崎

そうですね。

オフィス側が「テレビ会議のセットってどうやってやるんだっけ?」ってなると、リモートの人が「すいません私が家にいるばっかりにお手間を…」という空気に。

岩崎

しかもそのわちゃわちゃで10分くらい経ちますもんね。

そうなんですよ!

岩崎

それすごくわかります。

だから慣れるまでは一定程度頻度がないといけない。

岩崎

慣れが本当に大事なんですよね。

会議も「忖度」

岩崎

今のオンライン会議ツールって、スマホで見てもすごく綺麗なんですよね。なので結構電車の中で聞いてるだけの参加とかもしてます。

会議のラジオ参加とか、会議を全部録音してアップロードするとか、もうちょっとやってみたいんですよね。

岩崎

効率いいですよ。あとで議事録読んでわかってもらうよりも、絶対聞いてもらった方が早いので。どうせ来てもその人喋んなかったりするじゃないですか。

その辺もまた忖度がありますよね。一番最初に働き方改革について考え始めた時に、Googleさんに行ったんですよ。そこで色々聞いてたら、会議呼ばれて出たんだけど、「これはあんまり関係ないな」と思ったら途中で退出しちゃいますって言ってて。日本で「僕関係ないんで抜けます」なんて言ったら「お前の当事者意識はどうなってんだ!」とか言われちゃう。

一同

(笑)

「その場で自分に何ができるのか考えろ」みたいな、パッション論がありますよね。

岩崎

抜けられないですよね。普通の会社で会議に呼んでもらったら。

言えないですよ(笑)

倉貫

会議中にすっと抜けるとか。

岩崎

ちょっとなんか意見言えよ、みたいに言われることはあっても、外されるってことはあんまりないですよ。

しかも面白いのが、そこに良かれと思って呼ばなくすると、外されたと思う人が結構いるんですよね。

岩崎

予定表を会議で埋めるといい、みたいな雰囲気ありますよね。

僕もそういう時代ありましたもん。朝から晩まで会議で埋まってて、時に被ってたりして、「すいませんあっち行かなきゃならないんで」。この状況がすごくいけてるんじゃないかっていう誤認をしていた時代が。

岩崎

あるある(笑)

今では朝から夜まで会議の状況は恥ずかしいと思うようになりました。いかに自由裁量時間を作って、考えたり、現地現物に触れたりできるかということがテーマなので。

場所も働き方も時間も「選べる」ようにしたい。

倉貫

自由時間も大事だよね。僕、林さんと初めてリクルートさんで会った時に面白いなと思ったのが、世の中の働き方改革って、「時間を短くしよう」とか、「残業時間がどうの」とか話し合ってることが多いけど、実は仕事が楽しいから、「もっと仕事させてくれよ!」と思ってる人もいる。そのハードルをなくす方がもっといいんじゃないの?っていう話をしてて。そんなことを大企業で言う人珍しいなと思ったんですね。でも仕事好きな人って実はみんなそうですよね。今の風潮とブレがあるところではあるんですけど。

そうですね。風潮っていうのも一律風潮じゃないですか。そこで「全員8時に帰れ!」ってなるから変になるわけで、「帰りたい」も「もっと働きたい」も選択できるようにしたらいいと思うんですよね。もちろん体壊すまで働いてはいけないのは大前提で、ベースを選べるようにしていく。今の日本は、いくら本人の希望であっても、心や体が壊れたりすると、管理職責任になるので、一応相関関係にあると言われる労働時間を、一律で短くしておいた方がいいよね、となってしまう。

倉貫

リスクない方に合わせるんですよね。

岩崎

選択肢があるのは本当に大事ですね。リモートワークの時もそうで、オフィスで働きたい人はそれでいい。ただ、その為にリモートワークができないというルールはやりすぎですよね。「オフィスにいるけどチャットは見るよ」とか、「オフィスにいるけどオンライン会議ちゃんとできるよ」とか、そういう落とし所を作って、両者がある程度同じ枠組みの中で働けるようにしておかないと、断裂しちゃう。なのでお互い足を引っ張り合わず、他人の選択を邪魔しない範囲で自分のやりたい働き方を選べるのがいいんだと思います。大抵どっちかに極端に倒すやり方になるんで、会社の良い人間関係も壊しちゃう。それは勿体無いですよ。

そうそう。だから場所も選べるようにした方がいいと思うんですよ。例えば上司がリモートワークが好きだから、部下にもリモートにしろっていうのは変だし、逆にオフィスに来るのが好きだからみんなもオフィスで働きなさいっていうのも変。倉貫さんが前から言ってる論理出社、つまりオンライン業務がある程度できるということが前提になってないとダメなんですよね。誰からでも、どこからでも仕事やコミュニケーションが「見える」ようにしておかないと。

倉貫

そうそう。それが大事。

オンライン化して「忖度レス」を目指す

ちょっと面白いと思ったのが、僕らより上の世代の人たちの中で、情報共有をオンラインで全部見える化していくと、「昔に戻った感覚だ」って言う人がいるんですよ。昔は全員固定席で、全員固定電話があって、部下が誰と何を話してるのか全部わかったものが、携帯やメールになって個別化されたらわからなくなってしまった。それがまたチャットになって、自分やメンバーがどんなコミュニケーションしてるのかがオープンになった。「リモートでやったら見えにくくなる」って心配する人がいますけど、リモートにして見えにくくなるのは、オンライン化が全く進んでないからなんですよね。まずオンライン化すると、オフィスにいてもいなくても見えるから関係ないんですよ。

岩崎

オフィスでずーっと会議してまわってる偉い人とか、出張によく行く人って、「いない」じゃないですか。でもオンライン化されていれば、その場にいなくたってつかまえられる。だからオンラインで「見えなくなる」、「今より管理できなくなる」って思うのは全然違う。

完全に違いますよね。

岩崎

在宅やサテライトオフィスをやろうってなった時に、最初に「短期間やってみよう」、「日数減らしてやってみよう」ってよく言うんですけど、そういうトライアルの仕方はうまくいかないですね。最初からメンバーが離れても回る状態をオフィスで作る。オフィス環境を作るってことを先にやれば、失敗がすごく減ると思うんですよ。なのにオフィス環境を変えないまま、オフィスから離れた人のやり方だけ、オフィスに合わせて変に厳しくするからうまくいかないんですよね。チームから外れたみたいになっちゃうから良くない。

オフィスにいながらオンラインのコミュニケーションに変えていきましょうよっていう話をしても、なかなか力学が働かなくて、この辺が本当に難しいですね。ほんの隙間時間に確認するだけみたいな話なら、ライトにチャットで済ませばいいんです。それをチャットじゃ失礼かな、直接話さなきゃとかいう忖度もあってうまくいかない。結構多いですこのパターン。

岩崎

かなり忖度出てきますね。

そう、みんな忖度しちゃう。

倉貫

今日のキーワードこれだな。「忖度レス」

一同

(笑)

忖度レスは大事ですね。大企業は良くも悪くも忖度によって支えられているできてる部分ありますからね。

大企業の役割

倉貫

みんなの常識が変わればね。テレビ会議でやっても失礼じゃないってみんなの常識が変わってくればいいんだろうな。みんないずれ歳をとって、新しい世代の人たちが中心になってるので、慌てなくてもいずれ変わるんだろうけど、昔と違って今は年配の人が全然引退しないっていう問題があるので。なかなか社会が変わらない(笑)。

一同

(笑)

倉貫

そこが皆さん全然元気なので、頑張って変えていかないと変わらないのかなって気はしています。あと前々から考えていたことなんですけど、企業自体が「変革が素晴らしい」みたいなことをよく言うけど、変革よりも新しく作った方が自然学としては正しいんじゃないかなという気がしているんですよ。大企業も長く続いている会社も硬直化してるところをなんとかしたいと言うなら、いっそやめて自分で会社やればいいのになと。

以前に倉貫さんとイベントで一緒に登壇させてもらった時に、「変えないといけないんですよね」って話をしたら、「新陳代謝したらよくない?」と。つまり大企業があり続ける必要があるのかしらということですよね。その企業がなくなったとしても、また新しい企業がその役割を新しいやり方で担うから、いっそなくなっていいんじゃないの?と。

倉貫

そこまで言いましたっけ(笑)。

あの時、僕は「どう変革して行くのか?」ばかり考えていたから、なるほどなと思ったんですよ。さらにそこから、「そもそも大企業の役割って?」ということを考えるようになりました。結論としては、大きく2つなんですが、ひとつは磨いてきたサービスや商品が生活の中で必要なインフラを担っていること。もうひとつは、大きな投資家であること。大企業の、世の中に対するコストの積み上げは、社会を潤すために必要な投資になっている事に加えて、より新しいものに投資する、作ってきたインフラに新しいものをどんどん取り入れて行くことで更に磨いていく必要はありますが。ちゃんとその2つの役割を担いながら、社会に向けて役立つようにドライブをかけられれば理想的なんじゃないかと。

倉貫

インフラは確かにそうですね。大きな投資家みたいなものだってことですよね。これまで持ってきたもので投資をしようと。

その大企業の投資の積み上げで毎年何十兆って投資が社内外でされていて、これが会社が小さくなって小分けになってくると、大規模な投資ってのはなかなかできなくなりますよね。ただ本当にクラウドファンディングみたいなもので、個人や小さい企業も含めて、小口の投資の集まりで大きな投資が回るような時代になり、大企業が新しい取り組みが遅れていけば、だんだん役割を終えて行く可能性もありますよね。

副業は自立のきっかけになる

「大企業の役割ってなんなんだろう?」って、あの問いはやっぱり秀逸でした。「なくなったらよくない?」って(笑)。あんまりそういう風に思ってなかったので。

倉貫

なくなったらいいとまでは言ってないですよね?(笑)みんなダメだと思ってるのに延命措置をするようなエネルギーがあるんだったら、もっと有益なことに生かした方がいいんじゃないのかとは思っています。投資って意味だと、お金を出すのもそうですけど、大企業には体力があるので、まだ仕事ができないうちの人を雇ってあげて、できるようにするところまでに育ててあげて、その人たちが巣立ってもっといろんな事業をやっていくことに回ればいいんじゃないかなと思っています。

結局社会的なベーシックインカムの話につながると思います。現代の大企業も、将来の不確実性が高まっているので、社員をがっつり囲い込んで保障してやることはできない。でもまだ一翼を担っている部分があるから、その役割を安易に壊してしまうと受け皿がなくなって、仕事ができる人はいいですけど、スキルもない、自分の強みも言語化できない人があっという間に生活していけなくなって、国で支えないといけない人たちなってしまうんですよ。この役割はいつまで担わなければならないのか、必要なのか、本当に豊かな社会に繋がって行く出口はどこなんでしょうね。

倉貫

難しいですね。そこは雇用を産んでるといえばそうだけど、偽善的だなとも思ってるんですよね。合理的ではないし、本当に経済をうまく回すんだとしたら、それこそ全部人工知能やらせて、企業の生産性あげて、たくさん法人税納めて、そのお金で国としての保障をつけた方がトータルはいいんじゃないかという発想もあるし、それを企業としてどこまで持たなきゃならないのかというところも…。

やっぱり副業みたいなものが、本質的に力を持ってそうだなと思ってるんですよね。

倉貫

そうそう。なので副業っていうのは、自立のひとつの道としてとてもいいなあと思うし、今冴えない仕事をしている人も、他の職種をやってみたら、もしかして才能があって生きるかもしれない。副業ができるって言うのは自分の可能性が広げられるということでもありますよね。

多分企業によっても副業の意味合いがだいぶ違うんだと思うんですけど、本当に力を試せるとか、副業でお金が稼げてプラスアルファでいいよねみたいな話もあるんですが、意識的に自分の強みがなんなのかとか、何をできるようにならなきゃいけないのかに気づいたっておっしゃってるお客さんもいましたね。学びを広げていくことに繋がってる。

岩崎

自立のきっかけになりますよね。家にずっといた人が一人暮らし1日でも始めると、とにかく自分でやらないとどうしようもないですもんね。かと言っていきなり一人暮らしさせると病気になっちゃうかもしれないし。

まさにそうなんですよ。大企業も成長している時代は、どんどんポストができて面白い仕事や責任が渡せてたんですけど、今は教育研修コストさえも削られてきているから、倉貫さんがさっきおっしゃった「大企業の人を育てる役割」も、だんだんしぼみつつあると。だったら副業で自分で会社を作るとか、全然関係ないNPOで自分に何ができるかやってみるとか、成長機会を求めるということは、すごく健全な状況なんだなと思っています。

おもしろおかしく働きたい

岩崎

ちょっと前までは人数がいればいるほど利益や効率が上がるとされてきましたよね。それがITや、これからAIの力で、その考え方で組織が成り立たなくなってきた。それぞれが自分自身の強みで勝負していかないと、無理なんだと思うんですよね。なのでそれを見つけなきゃいけないんだけど、従来のシステムの会社の中で、強みを探って試すってなかなか難しい気がします。営業部の部長が「実は俺、IT強いんですよ」って言ってもどうしようもないというか…。

副業だったら自分で選べるからね。

岩崎

そういうわけで、その時代から次の時代へのトランジッション的な役割になる。

なるなる。

岩崎

強制的に見つけなきゃならないし、自分でなんとなくわかってる人が踏み出せる。

倉貫

あと、昔の副業は本業で足りない分のお小遣い稼ぎのようなニュアンスだったけど、今はもっと意味が変わって来てますよね。多分好きな仕事しかやらないんじゃないかな。小遣いにもならない、スキルアップにもならないみたいな仕事は選ばない。考えたら、つまり人間は本質的につまらない仕事は選ばないし、本来はやりたくないんじゃないかなと思っているんです。

そうだと思います。

倉貫

副業として、面白い、楽しい仕事をする。副業がもしそれで成立するんだったら、古来からの発想である「辛い労働をしてお金をもらう」という考え方を捨てて、本業だってそれで成立すればいいじゃないと僕は思うんです。すべからく世の中は好きで面白いことばっかりになっていいと思うし、人類はそういう風になるように、文明とか産業とかを進化させてきたんじゃないか、ほっといても絶対その方向に進むんじゃないかなと。

そうですね。

倉貫

なので今の、「働く時間を短くしましょう」みたいなのはとてもナンセンスに見える。もっとみんな好きで楽しいことをして、それが仕事になるようになればいいなあと。

そうなんですよね。「ライスワークなのか?ライフワークなのか?」という話がありますけど、僕らやもっと若い世代になってくると、より価値とか意味とか意義とかを大事に思っているじゃないですか。しかもシェアのカルチャーになってきてもいるから、好きな仕事をして、生きていけるだけのお金が欲しい。「面白い仕事できてるか?』というところがポイントになりますよね。

「何になりたいか」ではなく「どうなりたいか」

リクルートやっぱりすごいなって思ったのが、入社した日から「何したいの?」「どうしたいの?」って聞かれるので、自分が何をどうしたいのか、自分の中で探求しながら仕事をしていくんですね。でも、それが無かった人たちが、突然「何やりたいの?」って言われても、考えて来なかったので…。

倉貫

今まで言われてないことを急に言われてもね。

そうなんです。だからもっとふわっとした、グラデーションのある問いを子供の頃から投げかけていけると面白いんだと思います。子供に「将来何になりたいですか?」って聞くじゃないですか。あの問いが多分間違ってるんです。「何になりたい?」じゃなくて「どうなりたい?」なんですね。天職だと思える仕事を見つける為にはその手前の、「どうなりたいのか?」とか「何が自分のモチベーションなのか?」を気にしながら生きていかないと、ある時突然「好きな仕事やったらいいじゃん」って言われた時に、かわいそうな気もしてて。

岩崎

そうそう。そうですね。

「そんなこと言われても見つからないですよね」って、旅に出ちゃう気がする。

一同

(笑)

岩崎

自覚的に「自分はこれは好き」とか、「これだったらずっとできる」とかを見つけたらある程度わかってくるんじゃないですかね。そこにちゃんとはまってたら楽しく仕事ができて、逆にそこから外れると面白くない、続けられない。でもそこが自覚できないんですよね。なんでかって言うと、「警察官」「学者」「野球選手」っていうラベルで見ていて、「どうなりたいか?」の問いかけがないから。これからはもっとその問いかけが必要だし、人間は根本的にはそっちの方がわかりやすいんだと思うんですよ。

結局そこに社会的な価値観みたいなものが入ってきて変わるじゃないですか。だから小さい頃はそれこそ「正義の味方になりたいから警察官になりたい」って言ってた人たちが、就職する頃には「銀行で窓口やりたいです」みたいになってきちゃう。「何がやりたいから銀行の窓口を目指してるんですか?」って聞いても「安定的だし、そこだと親も安心します」なんて言う。でもこれからは「あなたは何がしたいの?」がもっと求められていくし、個人が力を持てる時代だから、突き詰めて言ったらそれが今儲かるかもしれないし。

新しい価値観と働く、新しい形の組織へ

倉貫

僕らの会社も今新入社員が24歳なんですけど、その彼ととある市町村の視察に行って、案内してくれた、多分僕の20くらい上の市役所の人と、その24歳と僕が一緒にご飯を食べてると、話が噛み合わないの。

一同

(笑)

倉貫

市役所の方が若者に、「やっぱり車とか欲しいの?」とか「冬になったらみんなでスキー行くの?」とか話しかけるんだけど、もう返事が「車は別に欲しくないですね」とか、「スキーはそんなには…」なんて全然噛み合わない。年配の方も若者もお互い理解できない。おじさんたちが現役だった頃は情報はマスメディアしかなくて、ステレオタイプで「かっこいい人」の真似して遊ぶし働くしっていう世の中だったのが、今は情報がありすぎて、若者に聞くと、「やりたいことがありすぎるんです」と。色々やりたいから持ち物は少なくていいって、もう違いが圧倒的なんですよ。

なるほど。

倉貫

だから個人の価値観を大事にする人たちが出てきていて、これからの若者がみんなそうなってくるとしたら、会社として、若い人たちが欲しいのに、昔の価値観でやってたら人来なくなるし、きてもやめちゃう。新しい感覚の人たちに合うようなマネジメントスタイルにすることは、実は会社にとっては合理的なんだなと。

いやほんとそう思いますよ。面白い。僕ら毎年トレンドワードを発表するんですけど、去年のワードのひとつが「ボス充」。「ボスの充実」です。若手に「どういう上司をかっこいいと思いますか?」と聞くと、大多数の人が、「ライフが充実しているボスがかっこいい」って言うんですね。昔の人は「仕事ができる人がかっこいい」。24時間働けているとか、仕事で成功している人がかっこいいって言われていたけど、今は家族と楽しくやってるとか、副業とか、ライフ側が充実してる人を、「人間的に幅がある」「ああいう風になりたい」と思うと。ボス側からしたらほっといてくれって話なんだけど(笑)

一同

(笑)

倉貫

その人たちが変わってきているので、会社もマネジメントも変わらないとやれないし、同世代のおじさんたちだけで会社やるなら昔の価値観でやれるかもしれないけど、新しい価値観と一緒に働くとなったら、従来のやり方じゃない組織のあり方を考えなきゃなと。

既存を疑え!

社内でね、「対等に議論しよう」ということを再三言っているんです。例えば「リモートワークをやるよ」って言った時に、「リモートだったら生産性上がるって証明しろ」って言われる。それなら逆に、オフィスに来ることで生産性が上がるってことを証明してくれと。それで、どっちの方が生産性が上がるかっていうのを戦わせる。やるんだったらそこまでフラットじゃないとおかしいでしょう。なんで現状が正しいという前提で、リモートワークの生産性を証明しないといけないのか。もはや今が正しいという前提自体を疑っていかないといけないと思っています。

岩崎

自分の軸足を動かさないで、そこから見える景色だけで話をしちゃうと多分動けないんですよね。圧倒的に今よりいいものが出てきた時にやっと動くんだけど、その時はもう遅い。なので、相対的にみることは、僕もすごく大事だと思うんです。相手側から見る。リモート側からみてオフィスは大丈夫なのか、リモートの生産性を疑うんだったら、オフィスの生産性はどうなのか。逆側から見る思考がないと議論がうまくいかないですね。

だから両方やってみないといけないんですよ。

岩崎

そうですね。で、オフィスの人たちは、だいたいオフィスから離れて働く人たちを「リモートワーカー」って言うんですけど、自分が在宅するようになったら、むしろオフィスの人の方がリモートワーカーに見えるんですよね。本来リモートワークって、相対的な関係性のことで、チームとか組織のレベルの話なんですよね。それをずっとオフィスの軸足から見て、あいつら離れてるって言うようになっちゃうのは勿体無いなと思うんです。

そうそう。そうだと思うなぁ。

岩崎

でもそういう話するとオフィスの人、「何言ってんの?」みたいになりません?

「生産性なんてそんなのどうやって測るんだよ!」って。

一同

(笑)

それは新しいことの良さを証明しろっていう問いじゃないですか。既存のものがなぜ正しいのかってところの問いはないんですよね。既存の何かを疑ってかかることを常に内包していかないと。だって外部環境が変わって、自分たちが変わらないんなら、それは相当遅れてる可能性が高いので。

岩崎

まあ失敗してないとその確率は高いですよね。やってないから。

「切腹型モデル」には学びがない

グロスマインドセットなので、とにかく失敗もして成功も含めて学んでいくことがテーマ。でもやっぱり大企業の人たちを話をすると、「失敗をするな」が圧倒的に強い。あと失敗するとですね、切腹型モデルってとこが結構多い。

一同

(笑)

岩崎

新しいワード出てきましたね。

失敗した時に「どう責任取るんだ」という問いを投げるか、「この失敗から何を学んだのか」って問いを投げるかで真逆の効果があるんです。切腹型モデルの一番良くないのは、学びがないんですよ。「誰が責任取るんだ!」「私がとります!」「潔いな!!」以上終了で、何がダメだったのかが語られない。

岩崎

あるある。

でもそれって組織に何も昇華されてないんですよね。失敗は「ナイス失敗!」で、そこから何を学べたのかがあれば、次回に活かせますし。「失敗すんなよ」はそもそも変だし、学びもほぼない。この2つが組織の成長や人の成長を非常に遅くしてる。これが大企業の課題かなって思ってます。

岩崎

そっちの方が楽なんですよね。そこから昇華するとなるとすごい労力が必要だし、ある意味クリエイティブな要素が必要になってくるし。だからそこに負荷がかかるよりは…ってなりがちですよね。

なりますね。だから切腹型モデルが横行するんです。成長はフィードバックの数なんですけど、その質と量を得る手段として、日々挑戦をしないといけないと思うんですよ。それには当然失敗も成功もあるはずで、そこを成功するだろうという見立てのものだけやっていると、学びがどんどん小さくなってしまう。勿体無いでしょう。部署の働き方がみんなにフィットして、かつ、業績を高めるような働き方になっていけるように、学びながら育てれば、3年後、5年後は最高の働き方になっているはずなんですよね。業績も伸びているはずで、個人も自由で副業もやれてて最高!そうでなければ。

進捗会議って、必要?

岩崎

働き方について定量的な目標を設定しても、遅れているか遅れていないかしか見てないケースもありますね。しかも中盤まではそうやっていて、中盤以降はどうやって当初の目標にこじつけるのかということにシフトする。

帳尻を合わせるのかっていうね。

岩崎

学ぶ姿勢とは全然違う方向に労力が使われちゃいますよね。

そうなんですよね。一般的な会社を見させていただくと、進捗会議をみなさんやってるんですよね。まさに進捗具合を報告するやつを。やらなきゃいけないのは、「遅れてます」「課題が出ました」ってことをいかに共有してどう対策するのかってことなのに、進捗会議ではまた忖度問題が出てくるんです。しかもリスクはなるべく隠して。うまくいってないなんてバレたら、「どうするんだ!」って連呼されるから、まあまあ大丈夫です!って誤魔化しちゃう。

一同

(笑)

結局上の人たちが「うまくいってるんだな」って思うための会議です。はっきり言って必要ない。でもそういうことが溢れてる。だからこそ大企業は一定程度社会的価値が必要なんだなと。定期的に根本から見直すことはやり続けないといけない。方針を決めても方法論がないと進まないので、具体的なその方針を実現する技術的なアイディア、あるいは具体的なやり方というのがパッケージじゃないと進んでいかないんですよ。そうすると今度はバックキャストで描くことにえらく長い時間をかける。長いことかけて美しく描きすぎて、今度は完璧を求めようと思って最初の一歩が始まらない。これが日本の現状ですね…。

岩崎

あっ、暗い感じに。

一同

(笑)

世の中から「つまらない仕事」を無くしたい

倉貫

じゃ、ちょっと明るい未来について。僕がいたシステム開発の業界は、当時もっともひどい業界でした。デスマーチで、ウォーターフォールで、滝の一番下で何人も倒れてるみたいな感じでもう見てられない。もっと良いやり方が絶対あるって思って、働いている人がハッピーで、お客さんもハッピーでその上生産性も上がる!って、アジャイルを言い出したんですよ。その時に何が1番いいんだって経営陣に言われて、生産性もだKPIも出して、結局「会社が楽しいんだよ!」って言ったら「アホか!」って怒られました。

一同

(笑)

倉貫

でも楽しい方が絶対生産性が上がるっていうのは今となっては良くわかるし、その当時ずっとそう思ってたんだけど、全然理解が得られない。だからもう自分で証明するしかないなって。

体現するんですね。

倉貫

僕が今会社をやってるのは、自分の論文の証明をしているようなものなんですよ。「ね、正しかったでしょ?」って言いたいし、もしそれをやれてる会社があるんだってわかったら、俺もやれるかもしれないって、変わってくれる人が増えたらいい。僕が明るい未来のためにやらなきゃいけないことは、このやり方を続けていって、証明し続けることですね。

僕はね、とにかく一人一人の個人のエネルギーを最大化していくことが、この後の社会において大事で、そうすると個人あるいは小さい組織がそれぞれ新しい取り組みをちょっと始めてみて、成功や失敗から学んで、その事例が使える組織をまた横展開していくってことが、結局一番幸せかなって思ってるんです。

倉貫

学びが連鎖して提供されていくのはいいですよね。

計画をまず立てて、その通りに進めるということが正しい時代ではもうないので、ダイナミックな計画は一旦捨てて、まず価値を産みそうなものをみんなで作りながら、それをプロトタイピングして、条件を変えたりしながら実証実験をして、成功したら攪拌させていく。そういう形で、会社の進め方ややり方が真逆になるといいなと思ってるんですよね。企業のトップマネジメントの人上の方の人たちっていうのは戦略家というよりは投資家なので、下の人たちの多様性を湧き上がらせて、チャレンジさせて、学ばせて、どんどんドライブかけていくために。で、出てきたものにさらに投資をしていく。ミドルマネジメントがいらなくなりますね。フラット化していく。

倉貫

いやそうですね。フラット化していくのでいいかなと思ってます。権力があるんで。権力って意味がわからない。

一同

(笑)

倉貫

影も形もないものですもん。みんな勝手に縛られてる。そのコンセプトみたいなものに縛られているのは、人類として損失だと思うんで。別に何があるわけでもない。

「権力」とか、「偉い」とかもはや意味がわからない。今の人の中でフィットしてるよねってだけの話ですよね。いくら偉く立って、プログラミングやらせてみれば当然ズブの素人。だから、役割。

倉貫

そうそう、そこを組織として変えていけたらいいと思うし、そういう会社が増えたらいい。

とにかくさっき言った、面白くて働く、「俺こんなことやりたいんですよ、次の仕事で!」って、そういうことに溢れている社会にしたいですね。「つまんねえ仕事!」とか言ってるのをなんとかしたいですよね。

倉貫

世の中からつまんない仕事を無くしたいんだよね。生活のために仕事するって、未来人みたいだけど、とても原始的だなって。

一同

(笑)

倉貫

生活のために働くって、マンモスとるのに苦労するっていうことですよね。鍬で農業しなきゃならなかったのは大変だと思うけど、もうそういうこと自体減ってるから。「なんのために人は生きるのか?」みたいになっちゃうんですけど、そこを考えるのが人間なんじゃないですか。みんなが「なんのために生きるのか?」って考えてる社会ね。えらいことになると思いますけど。それが未来。

そこに日本的な自他不分離みたいな、相手も、コミュニティにとってもいいのかみたいな。この思想のなかで割としっかりやっていけると面白いのかなって思いますけどね。「相手のために」とか「コミュニティのために」とか、日本的で素敵なことなんですけど、「自分を犠牲にしてでもみんなのために」となると、行きすぎるので、その間くらいのバランスを探して未来を作っていかないといけないし、そういうことを社会に発信していけたらいいと思うんですけどね。

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