(最終更新 2019/07/18)
テレワークガイドラインとは?
テレワークガイドラインとは、「働き方改革実行計画(平成29年3月決定)」を受けて、従来の「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を改定して策定されたものを指します。
テレワークを行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災 害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されるということや、労働安全衛生法の適用やその留意点、労災保険給付など、テレワーク勤務の指針を与える内容になっています。
「雇用型テレワークガイドライン」が変更に
平成30年2月、厚生労働省内で、雇用型・自営型テレワークについての議論を行い、2つのテレワークガイドライン(雇用型テレワーク、自営型テレワーク)の改正が行われました。特にリモートワークと関係の深い「雇用型テレワークガイドライン」については、適用範囲の拡大、労働時間の適性な把握の義務付けや長時間労働対策について盛り込まれることになっています。以下で今回の変更点に触れつつ、テレワークガイドライン全体を解説します。
労働基準関係法令の適用
労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。よって、テレワーク実施時に おいても、これらの法令を遵守する必要があります。
改定前は「在宅勤務を対象」となっていましたが、改定後はサテライトオフィス勤務やモバイル勤務についても対象となりました。
労働基準法の適用に関する留意点
①労働条件の明示
使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません。つまり、テレワークを行う場合には、就業場所としてテレワークを行う場所を明示しなければならないということです。
②労働時間制度の適用と留意点
使用者は、労働時間を適切に管理する責務を有しています。そのため、各労働時間制度の留意点を踏まえた上で、労働時間の適正な管理を行う必要があります。
労働時間の適性な把握
時間の把握が難しいとされるテレワークにおいても、適性な労働時間の把握は必須事項となります。みなし労働時間制が適用される労働者や労働基準法第41条に規定する労働者を除いて、 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措
置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)に基づいた労働時間管理が求められています。具体的な方法として、パソコンの使用時間等の客観的な記録の管理が挙げられています。
テレワークに際して生じやすい事象
「中抜け時間」「移動中のテレワーク」「テレワークの一部利用」について新たに記載され、「フレックスタイム制」「裁量労働制」についてはより具体的に導入方法や対象が明示されています。「事業場外みなし労働時間制」については従来通り導入可能です。
私用と業務時間が混在する場合は多いテレワークに生じやすい「中抜け時間」については、その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げること、休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが可能とされます。
通勤時間や出張中に生じる「移動中のテレワーク」。使用者の明示または黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当します。
「テレワークの一部利用」について、例えば午前/午後だけテレワークをする場合、「就業場所間の移動時間が労働時間に該当するか」が問題になります。これに関しては使用者の指揮命令下に置かれている時間であるかどうかによって、個別具体的に判断されることになります。
どのケースによっても、上記の考え方に基づき、労働者と使用者との間で事前に合意を得ておくことが望ましいですね。
③休憩時間の取扱いについて
原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することが規定されていますが、テレワークに関しては、適用除外とし、任意に設定することが可能です。また、本来休憩時間とされていた時間に使用者が出社を求める等、具体的な業務のために就業場所間の移動を命じた場合は、これを労働時間と考えられるため、別途休憩時間を確保する必要があります。
④時間外・休日労働の労働時間管理について
テレワークにおいても、実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働を行わせる場合、深夜に労働した場合は、相応の割増賃金が支払われる必要があります。このため、テレワークを行う労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、使用者はそれをもって当該労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて労働時間や業務内容等について見直すことが望ましいと改めて示唆されています。
長時間労働対策について
テレワークの懸念事項として、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするた
め相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。使用者は、この長時間労働による健康障害防止を図ることも求められます。
具体的な手法としては、「メール送付の抑制」「システムへのアクセス制限」「テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等」「長時間労働等を行う労働者への注意喚起」が新たに挙げられています。
労働安全衛生法の適用及び留意点
労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があることが明示されました。
具体的には、「健康診断とその結果等を受けた措置」「長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置」「面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供」「ストレスチェックとその結果等を受けた措置」の実施が挙げられます。
また、テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則や、労働安全衛生規則及び「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に促す必要も生じます。
労働災害の補償に関する留意点
テレワークを行う労働者も労災保険給付の対象となります。詳しくは以下をご覧ください。
時間管理の重要性を示唆
近年、サテライトオフィスやモバイル勤務など、現場の実態にバリエーションが増えてきたため、これに合わせるように適用範囲を拡大し、また随所で問題となっている長時間勤務にも着目し、時間の管理の重要性について今一度喚起するように説かれています。しかしその具体的な管理方法などについては特に言及していないので、時間管理の具体的な方法については、会社ごとに適切な手段を検討する必要があります。
テレワークの労働時間、どう管理する?
テレワークにおける時間管理、長時間労働の抑制対策としては、もし少人数のチームなのであれば、オンライン会議を繋げっぱなしにすることをお勧めします。お互いに顔が見える、何をしているのかが分かる状態であれば、声を掛け合って労働時間に無駄をなくすことが可能になります。また、チームの規模が大きくなるようでしたら、F-Chair+や、Remottyなどどいった、お互いの顔や画面を確認できるツールで管理すると良いでしょう。
F-Chair+についてはこちら Remottyについてはこちら今回の改定により、勤務状況把握、労働時間管理の責任が強調されるようになりました。リモートワークでは難しいと思われがちな項目ではありますが、適切なツールを使うことでその困難さは解消することができます。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ガイドラインについて理解が深まったら、今度は具体的にテレワークの労務管理について、次の記事で考えてみましょう。