リモートワークラボ

「アーティストになりたい=上京する」を覆す!〜株式会社クレオフーガ(後編)

「社内ラジオ」でそれぞれの思いを発信する

社内コミュニケーションの一環として、「社内ラジオ」というものを作ったとお聞きしました。

西尾

はい。社内ラジオは今年の4月から始めた取り組みです。メインでしゃべっているのは僕ですね。基本的には社内であった出来事とか、打ち合わせに行って感じたこととか、会社経営やこれからの方針について、みたいな内容をラジオ番組風に、5分から10分の音声データにまとめて、それを社内のドライブにアップロードして共有しています。

アーカイブも自由に聞けるんですか?

西尾

そうです。過去のも全部公開してるので、さかのぼれば全部聞けるようになっています。

西尾さんがメインということですが、一般社員も作れるんですよね。宮崎さんも番組を作られたことがありますか?

宮崎

何回かあります。

トーク番組風?

宮崎

そうですね(笑)。

一同

(笑)

今、番組を作ってらっしゃるのは、東京のメンバーだけですか?

西尾

そうですね。岡山のメンバーが東京に来た時に、「せっかく来たからしゃべってよ」ってしゃべってもらったことはありますが、岡山で録音というのは今のところないですね。

小西さんや岡山のメンバーで番組を作ろうという話が出たりましますか?

小西

「開発の内容を共有しよう」って話題は出たことありますね。ただ、「じゃあ、何を発表しよう?」とか、「あんまり技術的な話をしても伝わらなさ過ぎるから、なんか考えよう」みたいなところで今止まってる感じです。

でも、やってみたい気持ちはあるんですね。

小西

そうですね。毎日ラジオを聞いてると、だんだんしゃべりたくなってくるというか、そういう気分には。

そうですよね。身近な人がやってると、やりたくなりますよね。

小西

「5分ぐらいだったら、ちょっとなんかしゃべれるかな」っていう気もしてくるので、やりたいと思います。東京へ行った時は、楽しくしゃべりました。

ゲスト出演という感じで?

小西

そうですね。

内容は自由とお伺いしたんですけれども、どの程度自由というか、仕事にさほど関係のない話で配信する方もいらっしゃるんですか?

西尾

特にルールはないんです。僕は一応社長という立場なので、会社の情報共有とか、コミュニケーションを円滑にするためにっていうのを意識してますけど、緩い時もあります。宮崎のような一般社員がしゃべる時は、本当に自由です。できれば僕ばかりが配信するんじゃなくて、現場の雰囲気というか、各メンバーの思いもみんなで共有したいと思っていますので、「伝えたいことがあれば、なんでも伝えてください」としています。

1日にどれぐらい更新されるものなんですか?

西尾

基本的には1日1回ですね。土日は除いて、平日は基本的にはほぼ毎日アップしています。最近だと毎週木曜日は営業の子が営業ラジオっていうのを公開していますね。特に彼は営業マンとして外を飛び回っていることが多くて、「打ち合わせ先でこういう契約が取れた」とか、「こういう話が進んでる」とか当然議事録として残してもらってはいますが、お客さんのところに行った時の温度感であったりとか、議事録に残すまでもないちょっとしたニュアンスとか、思ったこと感じたこと、そういう場の空気を伝えるにはやっぱり声でしゃべるのがすごくいいなと感じています。本人もそう思っていたようで、少し前から「木曜日は僕にやらせてください」と言われて、それから毎週木曜日はほぼ定例のような形でやってもらっています。

そうですね。文章にして「じゃあ、みんなに配信しよう」ってすると、読み返してやっぱりやめちゃったりすることもありますもんね。

西尾

そうなんですよね。

それを声で配信するというのは、その場の勢いもあると思いますし、すごく面白いですね。

西尾

ありがとうございます。

楽しんで取り組むことが、自然な情報共有に

「社内ラジオにしよう」というアイデアに至ったきっかけはあるんですか?

西尾

もともとは本当に社内のメンバーからですね。もうそれこそソニックガーデンさんがやってるっていうのを。

社長ラジオ。

西尾

はい。うちのメンバーが知っていて。社内の情報共有やコミュニケーションについて課題が発生していた時期でもあったので、そのひとつの解決策として提案を受けました。ね、小西さん。

小西

そうですね。岡山のメンバーで集まってしゃべってる時に、大枠で誰がどう動いてるかというのはもちろん共有されてるんですけど、「どんな話をしたんだろうとか細かいことを知りたい」という意見が出て、ソニックガーデンさんの「社長ラジオ」をたまたま知っていたので、「あれを真似したらいい感じになるんじゃない?」と。その場で「やろうよ」と社長に連絡して、そのきっかけで始まりました。

やっぱり拠点が離れたりとか、人数が増えたりすると、少なからず「誰が何をやってるか分からない」問題が浮上しますもんね。ソニックガーデンの取り組みが目に留まったっていうのは、ちょっとうれしい話です。

西尾

ソニックガーデンさんは、ある意味、リモートワークの権化みたいな存在なので。

権化(笑)。

西尾

ネットニュースの記事なんかでも、リモートワークの話題で取り上げられてるのを拝見することはありましたし、そういう意味ではいろいろ参考にさせていただいています。

ありがとうございます。馴染むまでに時間がかかったりしましたか?

西尾

最初はもうほぼ僕だけでやってましたね。でも僕のリソースは多少かかるけど、「その先どうするかはさておき、とりあえず1ヶ月やってみよう」と。そうやって始めたら意外と楽しくて(笑)。最初は「どういうテンションでしゃべればいいんだろう」とか、いろいろ悩んだんですけど、やってみたらだんだんとペースがつかめてきて、社内のためにというだけじゃなくて、僕自身にもメリットがあるっていうのをすごく感じたんですね。

日々僕が考えてることって、普段近くにいるメンバーには、なんとなく雑談やランチみたいなちょっとした時間で伝えることができますけど、物理的に離れてる岡山オフィスやリモートのメンバーには、なかなか伝わらない。そこを補完する意味で、ラジオはすごく良いと感じました。あとは、今この後ろがスタジオを今年の3月に設置したんですけど、みんなスタジオを使うことに対してはすごくポジティブだったので。

そうですよね。触ってみたい(笑)。

西尾

はい。機材をセッティングしてみたりとか、スタジオに入ってしゃべるっていうのも、普通に仕事をしていたらめったにないので、いろいろ遊びながらというか、楽しみながら徐々に浸透していきました。

会社のいわゆる一番華やかな部分にちょっと自分も触れられるのって、テンションが上がりますもんね。

西尾

みんな楽しんでやってくれたのが良かったですね。やっぱり何事も楽しいのが一番だと思いますし、情報共有のためにって歯を食いしばってやっても大変なので、遊び感覚でスタートしたのは正解でした。

リモートワークに積極的な会社さんは、遊びの部分をすごく大事にしてることが多いなと感じます。「社内ラジオ」はすごく面白い取り組みですね。2~3人で座談会みたいにしてやることもあるんですか?

西尾

ありますね。例えばイベントに行った報告ですとか。宮崎は営業の子と一緒に…あれは何ラジオだったか。

宮崎

いや、番組名はないですけど(笑)。

一同

(笑)

宮崎

営業の子を招待して、本当にラジオっぽく「最近どうですか?」なんて自然な流れで話したりしてます。

西尾

やっぱり僕だけじゃなくて、若手同士の話はフレッシュで楽しいし、僕よりすごい反応が来るんですよ、コメントとか。

現在は良い影響を及ぼしながら、みんな毎日積極的に社内ラジオに関わってるんですね。

西尾

はい。1ヶ月経ったタイミングで1回みんなに聞いたんですよね、「実際やってみてどうか」と。「意味がないんであればやめるし、意味があるんであれば続けるし」という話をしたら、みんなからすごくポジティブな反応がありました。普段すごくおとなしいメンバーも「毎日聞いてます」言ってくれたりして。意外とみんな聞いてくれてましたし、「東京の動きが岡山にいながらにして分かる」という意見もあったので、今後も続けていくつもりです。

離れているからこそ、意識的に「伝える」努力を

コミュニケーションで「困ったな」ということって今までありましたか?

西尾

やっぱり「伝わってないな」というのは当然ありますね。お客さんのところへ行って、すごくいい話がもらえて、それで僕のテンションがすごく上がるとするじゃないですか。それを岡山のメンバーにどうやって伝えていこうか、というのはよく悩みますね。

逆に岡山のメンバーからしたら、東京の動きが分かりづらかったり、場の温度までは議事録を見てもわからない。決定事項や事実は分かっても、ニュアンスまではなかなか伝わらないですよね。そういうことがお互いにあるんだと思っています。

宮崎さんも何か感じたことはありましたか?

宮崎

やっぱり温度差ですね。私は顧客サポートをやっていた時期があったんですけれど、お客さまからの要望に対して、すぐに解決したくなってしまって、東京にいるメンバー数人に相談してふんわり決めてしまう、ということがたまにありました。本来なら開発の方と並走して、サービスを運営しないといけないですよね。そういった意識の面でも物理的に遠いとちょっとずれが生じる、困る、ということがありました。

なるほど。小西さんは何かありますか?

小西

そうですね。コミュニケーションというか、岡山オフィスでもそうなんですけど、集まってると雑談が始まってしまって、ついそのまま仕事の話になって、「じゃあ、こういうふうにやろうよ」とふわっと決まってしまう、ということはありましたね。その場で話したことは、やっぱりその場の人しか知らないので。岡山でそうということは、たぶん東京でもそうだろうなと思っていました。なるべくその場で話したことは、チャットに「こんな経緯でこんな話になって、こうしようと思ったんだけど、どう?」と書くようにはしてますね。

オフラインで話をしないってするのもちょっとおかしい。せっかく会ってるので、話はやっぱり自由に弾んだ方がいいので、なるべく書いて共有しようと意識してます。

共有の意識、それも大事なことですね。そこには気づいてみなさん意識してらっしゃるんですね。コミュニケーションに関して、「もうちょっとこうしていかなきゃいけないな」みたいなことは、ありますか?

小西

そうですね。やったことだけ報告してると、「やったんだな」というのは伝わっても、「なんでそう思った」とか「どうしてこうした」ということは伝わらないんですよね。仕事してるアピール、という言い方はあれですけど、こちらからは「東京で何が起きてるか分かんないからラジオしてよ」って言っておいて、僕たちは何も発信しないというのはちょっと違うかなと思っています。もうちょっと「今こんなのをやってるんだよ」とか、「これによってこんなに良いことが起きてるんだよ」というのを分かりやすく言えるといいな、と最近思っています。

なるほど。多少自分自身について饒舌になる必要が、離れているとあるということですか?

小西

そうですね。何も言わないのはよくないです。

宮崎

そうですね。私も自分から発信するのは苦手で、ラジオでやっと、「ラジオならしゃべれるな」というのがわかりました。ラジオを使おうと思った理由としても、テキストだと重いというか、気持ちの面を共有するのが難しかったところがあったので、まずしゃべるところから始めています。ひとりひとりが発信しないと、社内でだんだんずれが出てきちゃうと思うので、今後気を付けていきたいなと思っています。共有をもうちょっと細かく発信したいなと。

音楽業務をリモート化すれば、可能性はもっと広がる

クレオフーガさんのこれからの使命のひとつとして、「音楽業務のリモート化」を考えていらっしゃるそうですね。

西尾

地元が岡山の会社ということもあって、地方にいる素晴らしい音楽家やクリエイターが活躍しにくいという現状を目の当たりにしているんですね。それを僕らのオンラインサービスで支援していきたいと思っているんです。

具体的に考えてるのは、「レコーディング業務のリモート化」です。レコーディングって、基本的にはみんながスタジオに集まって作業するものなんですが、最近は通信環境も良くなってきたり、モニター環境もすごく良くなってきているので、専門のレコーディングエンジニアの人と相談をしながら、どういう体制だったらレコーディングをオンラインで作業できるかを模索しています。例えば岡山にいる作曲家が、自分が作った作品を、東京のスタジオで東京の演奏家に録音してもらう、ということに対して、今までは立ち会うのが難しかったんですけど、オンラインを使って立ち会う環境が作れないか、それによってリアルタイムで意見を挟みながら作業できないか、ということです。機材的な課題は結構あるんですが。

そうですね。

西尾

レコーディングって、レコーディングするソフトの画面をキャプチャしてリアルタイムに配信するのと、演奏家の録音ブースとと、最低2つの画面は映さなきゃいけないんです。その2つをオンラインで見ながら、作曲家が遠方から指示を出したりできないかと。単純に楽しそうですし、新しい時代の音楽サービスを作っていこうとしている僕らにとって、レコーディングスタジオのオンライン化というは、非常に面白いテーマです。地方にいてもリモートでスタジオワークができる、それはぜひ作っていきたいですね。

それだといずれは海外アーティストともやりとりできますね。

西尾

そうですね。あとは、遠隔でいる人同士がセッションするという技術もヤマハさんとかが今研究されているようです。どうしても音の遅延が発生するので…日常会話ぐらいだったら多少の遅延は全然問題にならないんですけど、音楽を一緒に演奏しようと思うと、遅延というのは結構致命的なので、実用化に向けてかなり進んではきていると思うんですが。レコーディングというのは、先に録音したものに対して、いい、悪いというのを判断したりとか、表現のニュアンスを伝えたりするくらいなので、必ずしも遅延がシビアなものではないので、実現はできるかなとは思ってるんですけど。

それが実現すれば、東京に音楽的なものが集中してしまうというのも、可能性を分散させることにつながりそうですね。

西尾

そうですね、まさに。さっきお話ししたのは、演奏家が東京にいるパターンでしたけど、演奏家が地方にいるパターンもあると思います。実現すれば自由度は格段に上がると思います。

正直地方だと、音楽家の仕事もそれほどなくて、レッスン講師や音楽の先生をやって食べている、という方が多いんです。いい腕を持っているのに土地柄で発揮できなかったり、昔は第一線で活躍されてたけど、家庭の事情で地元に戻らざるを得ない方なんかも、話を聞くとたくさんいらっしゃるので、そういった方たちと将来的にうまく仕事ができれば面白いのかなとは思っています。

そうですね。リモートワークが普及してきて、地方在住の方が、東京の会社で起用されたりということも増えてきていると思うんですが、それが音楽の分野にも広がると、才能の発掘にもつながって、すごく面白そうですね。

西尾

そうなんですよね。クリエイティブなものって、実は東京であることのほうがデメリットが多かったりするじゃないですか。

そうですね。

西尾

僕の周りでも、成功して経済的に余裕がある方とかは、軽井沢とか、長野とか、自然豊かなところに、自分の世界に没頭できるような制作拠点を構えていたりするので、芸術と向き合って集中する分には、地方の方が都合が良い部分もあるんだろうなと思います。もちろんビジネス的な打ち合わせは東京で、ということもあるでしょうから、そことのバランスだけかなと。なので、もっともっと地方や海外と自由につながれるようになれば、面白いかなと思ってます。

そうですね。リモートを音楽にも持ち込むのは、すごく面白い試みだと思います。

西尾

ぜひやりたいですね。

 

取材後記

社員の働きやすさ、やりとりのしやすさ、共有の大切さを常に考えている、そのためにユニークな工夫が生まれるというところが、非常に興味深く、またリモートワークが音楽業界に与える可能性についてのお話は、聞いていて思わずワクワクしてしまいました!
ますますのご活躍をお祈りいたします。

(リモートワークラボ編集部)

 
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