前編を読む
営業はなし。インバイトと口コミだけで販路を拡大
Backlogにユーザーコミュニティ(同じプロダクトを使用する者同士が集まって情報交換をする場)もあるとお聞きしました。できた経緯はご存じですか?
株式会社ヌーラボ 本社
- 五十川
ユーザーコミュニティは去年の5月に発足しました。その時点でもう日本全国に80万人ぐらいのユーザーの方がいらしたんですけど、ちゃんとした取りまとめみたいなものはそれまでなかったんですね。一方でヌーラボという会社は、営業が今日に至るまでいない会社で、これまでもBacklogは、インバイトと口コミでお客さんを増やしてきた背景がありました。また、プロジェクト管理のノウハウは、どうしてもチーム内にとどまってしまいがちです。これだけのユーザーの方々が相互にコミュニケーションできる仕掛けさえできれば、ユーザー体験の向上はもちろん、日本全体のプロジェクト管理レベルが上がっていくのではと考えました。もちろん、その流れの中で、さらにBacklogユーザーの方が増えてくれるのも嬉しいです。
営業の方がいなくてここまで広げてるというのは、本当にすごいですね。
- 五十川
インバイトがとにかく強いですね。やっぱりウェブ制作ひとつとっても、何社も何社も関わってチームになります。その進捗管理やコミュニケーションをBacklogでやるんです。そうすると、今までBacklogを知らなかった方が「このツールいいね。じゃあ、自社でも導入して、次に違うチームとやるときには使おうかな」みたいな流れで。
「うちのツールを導入するということは、うちのフィロソフィーを導入するということだ」
組織づくりについてかなり工夫されたり、社員で動くようにしていらっしゃるというのを伺いました。そのあたりの実際の取り組みについてお話しいただけますか?
- 安立
はい。まず、なぜ組織づくりにお金と時間をかけるかというと、弊社の代表が、「うちのツールを導入するということは、うちのフィロソフィーを導入するということだ」という言葉をとても大事にしているからです。だからこそフィロソフィーを磨き続けなければならない、という思いで会社を運営しているからなんです。
もともと、創業メンバーを含めてオープンソースのコミュニティに所属しているメンバーが多いんですね。そういうコミュニティ特有のフラットな関係性の中で、自発的に新しいプロダクトが生み出されていく感覚が好きで、そういう雰囲気でサービスが作れないか、というのが組織自体に関しても考えるきっかけになっているとは思いますね。
代表取締役 橋本氏
自分たちでなんでも作ってしまおうというのが強い会社さんだなと感じているんですけど、行動規範も皆さんで話し合って作ったんですよね。
- 五十川
そうですね。行動規範にもまさに「DIY精神」ですね。
- 安立
ええ。近年人をかなり増やすことになりまして、実際に人が増えて今のヌーラボを維持したままどこまでいけるかと考えたときに、残したいところはちゃんと明文化しようとなったんです。「こうありたい」ではなくて、今あるヌーラボを行動規範に落とすということです。
もちろん今のヌーラボもどんどん変わっていきますので、ブラッシュアップしていくつもりで、今年はブラッシュアップのためのワークをニューヨークでやる予定です。初回は日本のチーム全員の声は聞いたんですけど、海外チームには聞いていなかったことが心残りでした。今後はよりグローバルに通用するものを残していくつもりです。
DIYにしろ行動規範にしろ、あまり上から「これをやって」と降ってくる印象がないですね。どちらかというと一般社員から意見が沸き上がって行動に移していくことが多いですか?
- 安立
そうですね。下から提案も多いですし、でもあえて代表から「みんなで決めて」って権利を投げてくることも多いですよ。
「みんなで決めて」。なるほど。
- 安立
はい。行動規範はむしろ、最初から代表は「入らない」と決めていて、最後まで「こうしろ、ああしろ」は一切なかったです。
何でも「DIYする」精神
- 五十川
今、私が福岡から、安立が東京、小久保が京都事務所からつないでます。なので、今日は東京、福岡、京都ですね。
京都事務所の背景に「ぬ」って書いてある布が…のれんですか?ヌーラボの「ぬ」?
- 五十川
はい。手作りですよね。
- 小久保
だったと思います。
すごい(笑)。
- 五十川
京都(事務所)はすごいDIY文化があって、なんでも手作りをするんです。
事務所内の左側半分は工事現場みたいになってますね。いつからこの場所を工事して使ってらっしゃるんですか?
- 安立
今年(2018年)の2月です。
- 五十川
それこそ床を張るところから始まっています。
物件自体も社員の皆さんが直接決めたんですか?
- 五十川
そうですね。別に社長が下見に行くわけでもなく、基本、京都の人たちが決めました。
株式会社ヌーラボ 五十川氏
- 小久保
以前は少し繁華街ではあるけど、そこまで賑やかでない場所で、古い一戸建てを改装して事務所にしてました。
そこをおやめになって、こちらに移ったきっかけは広さですか?
- 小久保
1番は広さですね。場所的にはまあまあな便利なところだったし、みんなで直して愛着もあったりしたんですが、やっぱり狭かったですね。人が訪ねてきたりすると、打ち合わせさえ厳しい状況で。
DIYして事務所を作るという取り組みに、きっかけはあったんですか?
- 小久保
半分はノリですね(笑)。物件を紹介してくださった会社が、DIYをしてもいい物件も扱っていて、もともと大工仕事が好きな人がその時事務所にいたということもあって、「だったらできるんじゃね?」みたいな話で。そもそも自分たちでいろいろやる文化はヌーラボにありましたし、創業者の人たちも自ら物理的なものを作る人たちだったので、理解もあったりして、「じゃあ、やってみよう」と。
なるほど。なんでも自分たちがやりやすいようにしたいから、自ら手を動かすという。
- 小久保
そうですね。自分たちが仕事しやすい環境っていうのは、やっぱり自分たちが一番分かっていて、それを注文して調整して…とやるくらいなら、自分たちでやった方が納得が行くので。
それはちょっと開発にも似てますね。
- 小久保
だいぶ似てますね。
年に1度は集まって「感情交換」をする
「総会」を行うとお聞きしました。
- 安立
ええ。次回も福岡(本社)でやります。
それはもう全部のメンバーが集まるんですか?
- 安立
そうですね、海外含めて全部です。
総会の様子
やっぱり離れていることが多いからこそ集まろう、という気持ちでですか?
- 安立
「離れているから意思疎通がうまくいかない」という問題から始まっています。そこの解決のために始めて、もう10年近くやってるんじゃないかな。
やっぱりリモートワーカー側もオフィス側もコミュニケーションが取りづらいと一度は感じるものですか?
- 安立
仕事のやり辛さももちろん多少はありますが、よく代表が言ってるのは、「感情交換」ですね。この人がどういうテンションでしゃべっているのか、どういうテンションでテキストを打っているのかというのが分からない。1回顔を見ておくと、それが少し解消されるというか。安心してその後の意思疎通ができるというのはあります。なので、仕事に支障があるというよりは、もっと安心してスムーズに仕事したいという感じなのかなと思っています。
画面の中に映っているだけの人と、実際に会った人は、なんとなく違うと感じますか?
- 安立
そうですね。例えば、チャットでは絵文字を全く使わない、感情が読めない人とかいると思うんですけど(笑)。
(笑)
- 安立
実際に会ったらすごく話しやすい人だったりとか、そういうところが会うことによって分かるというのは大きいですね。
物理的に集まるっていうのは大事なことなんですね。リモートワーカーの方も週に何度か出社するスタイルが一番多いんですもんね。
- 安立
そうですね。
リモートワークはあくまで選択肢のひとつ
ユニークな社内制度がいくつかあるんですよね。「リゾートワーク制度」とか。
- 安立
はい。リゾートワークは今年始まったばかりの制度です。宮古島に一定期間滞在する代わりに、ブログの執筆と宮古島の小中高いずれかでの授業の実施をお願いしています。最初の人はこの10月からですね。まだどんな結果になるか分からないですが、総勢11名が8校に訪問して授業を行います。
宮古島で暮らすのは楽しそうですね。他にも何かありますか?
- 安立
結構いろいろ試行錯誤していますね。昨今、従業員のエンゲージメントを確認するために、各社は社内サーベイを導入することが多いと思います。弊社の場合はアンケート項目から全部自作しています。
「自分で考える」が本当に基本の会社なんですね。そういうふうに個人の裁量というか、社員一人一人の考えを尊重する雰囲気をすごく感じます。
- 安立
そうですね。リモートワークに関しても、あくまで働き方のひとつであると捉えています。「みんなでリモートワークしようよ」ではなく、「選択肢の一つとしてある」というスタンスですね。「ああしろ、こうしろ」って言いたくないので、「リモートワークをしろ」ともやっぱり言いたくないんですよね。各自の置かれている環境や事情は様々だと思いますので、選択の余地はみんなに与えたいなっと思っています。
認識の齟齬やディスコミュニケーションが生じたことはありますか?
- 安立
あると思います。やっぱりそこは自由だからこそ、ちょっと余裕というか、遊びができちゃってるところはあるので、ちゃんと管理部や経営側からメッセージを伝え続けるということに取り組んでいます。結構いろんなことがまだトライ・アンド・エラーですね。
小久保さんに質問なんですが、リモートワークを選んで働いてみて困ったこと、逆に良かったことなどありますか?
- 小久保
そうですね。僕はヌーラボに入る前は、名古屋の会社にいたんです。そこでも基本リモートワークを推奨していて、フルリモートの方もたくさんいました。そういう環境で仕事をしていたので、僕自身はリモートワークに対して構えるところはあんまりなくて、ヌーラボに入ってからもスタンスは変わってないですね。あ、もっと物理的な話で、オフィス側のマイクの性能があんまり良くない、というのはありました。
そういう機器的な問題も割とあるんですね。
- 小久保
そうですね。オンラインの会議だと、コンマ何秒の遅延がやっぱり発生しちゃうので…。あとは、相手の表情がよく見えなかったりというのはどうしてもありますね。リモート間でオンラインのコミュニケーションをするのは難しいことですね。まだちょっと技術的に改善の余地があるなと思います。
技術が進めば、もう本格的にわざわざ集まらなくても良い社会になりそうですね。
- 小久保
そうですね。もうちょっとVRの技術が進んだらそうなるかも。
例えば、Backlogとか、今作っているコミュニケーションツールにVRの要素を入れてみたいとか、そういうふうには?
- 小久保
できるならしたいですね(笑)。
ぜひ視野に入れて頂いて。本日はどうもありがとうございました。
取材後記
事務所のような物理的なことから、行動規範まで、現場の社員たちが自ら「DIY」するという姿勢が、働き方やひとりひとりの身の置き方の自由度を上げているのだな、と感じました。会社もプロダクトもこれからどんどんブラッシュアップされていく、前向きな未来の見える楽しいインタビューでした!
ますますのご活躍をお祈りいたします!
(リモートワークラボ編集部)
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