【在宅勤務に失敗する6つの原因】失敗事例から企業が学ぶべきこと

「働き方改革」の推進に伴い、在宅勤務を導入する企業が増えてきました。しかし、在宅勤務先進国のアメリカではYahoo!、IBMなどの大企業が在宅勤務を禁止した事実があります。

日本の先を走るアメリカの企業がなぜ在宅勤務をやめたのか。

今回は在宅勤務の失敗事例を元に、原因やいまひとつ普及しない理由について迫ります。

在宅勤務に失敗?大手2社から学ぶテレワークの禁止事例

まずはじめにアメリカを代表する大企業が在宅勤務を禁止した事例を紹介します。

事例1.米Yahoo!:2013年に在宅勤務を禁止

米Yahoo!は、全社員のうち25%の従業員が在宅勤務をしていました。

非常に高い技術力を武器に躍進する企業ですが、2013年に在宅勤務を禁止しており全社員が出社する方針に変わりました。

米Yahoo!が在宅勤務を禁止した背景には、社員のずさんな勤務態度にあったそうです。

  • 在宅勤務中に副業
  • 別会社を立ち上げて経営
  • 下請けに仕事を流す

「人の目が届かない」というテレワークの側面を、会社にとって嬉しくない方向に活用したことが大きな原因となっています。

結果、米Yahoo!では「マネジメントに問題があった」として在宅勤務を禁止したのです。

事例2.米IBM:2017年に在宅勤務を禁止

米IBMは在宅勤務を推進する企業の1つであり、2009年から173カ国38万6,000人の社員のうち約40%をリモートワークしていることで注目されていました。

アメリカの中でも早い段階でリモート化を取り入れた米IBMでしたが、2017年に在宅勤務を禁止しています。社員は「オフィス勤務に戻るか退社するか」という2択を迫られる結果になりました。

米IBMが在宅勤務を禁止した明確な理由については公表されていませんが、各社員とのコミュニケーション不足が問題の根源と言われています。

高度な仕事や大きな仕事を完遂するには、チームで動く必要があります。この際、在宅勤務では「意思疎通が不十分なのでは?」と不安視される声も。大企業ですら失敗したと聞くと、在宅勤務の導入を躊躇するのも無理はありません。

しかし在宅勤務を取り入れる企業は増えている

その一方で市場に目を向けると、全米で在宅勤務を導入する企業は未だ増え続けています。

全米人材マネジメント協会の調査結果では、2013年に在宅勤務を導入している企業が58%だったのに対し2017年には62%まで増加しているのです。

また完全リモートのフル在宅勤務を認める企業は

  • 2013年:20%
  • 2017年:23%

とこちらも若干ながら増えています。

日本では働き方改革の推進で在宅勤務を導入する企業が増えており「地方在住の優秀な人材を獲得しやすくなる」という背景から、今後も勢いは止まらないと予想されています。

在宅勤務の希望者は多い:しかし普及しない理由とは

日本テレワーク協会の調査結果によると、2015年時点で「在宅勤務したい」と回答した社会人は59.1%に上り、過半数を超える人が在宅勤務に興味を示していることが分かりました。

しかし、実際に在宅勤務をしている人は10%未満という結果に。ニーズがあるいにも関わらず在宅勤務が普及しない理由はどこにあるのでしょうか?

ここでは在宅勤務が普及しない理由について解説します。

会社のマネジメントが新しい働き方についていけない

出社型のワークスタイルを続けてきた上司からすると、在宅勤務に対して「そんなことをしたら経営に失敗してしまう」と不安を抱くことも。社員からのニーズはあるものの、会社のトップ層が認めないケースは少なくありません。

「報・連・相」という言葉がある通り、リアルなコミュニケーションが習慣化している企業では、生産性向上や時間の有効活用よりも「部下をしっかり監視したい」という思いがあるのも現実です。

組織として新しい働き方に消極的な会社の場合、在宅勤務を取り入れることは難しいでしょう。

家族が在宅勤務に対して難色を示すケースも

在宅勤務に対して家族からの反対を受けるケースもあります。

子供のいる家庭では「家で仕事をされると迷惑」と感じる家族もいるようです。子供が友人を家に連れてきた際、家で仕事をしているとお互いに気を使ってしまうという意見も上がっています。

また、在宅勤務に対して予備知識のない配偶者からすると「家にいる=休み」という感覚を持たれてしまうことも。結果「家にいるのに家事を手伝ってくれない」などの不満を抱かれてしまったケースもあります。

家族からの理解や負担を考えると、オフィスに出社したいと考える方もいるようです。

在宅勤務では労災の認定がしづらい

会社の目が届かない在宅勤務は、労災の認定が難しいです。

労災は、業務が原因で起きた災害に対して保険が適用されます。しかし、在宅勤務中のケガや事故を会社に証明することは困難です。

例えば、家で仕事をしている際、棚から物が落ちて手をケガした時に上司に連絡しても「見ていないから分からない」と言われればそれまでになります。

労災申請をしても労働基準監督署からの事実調査の際、本人はもちろん会社側も事実を証明することがは難しいでしょう。労災が認定されなければ給付金を受け取ることはできません。

働き方改革を進めるのであれば、労災のようなジャッジが難しい問題も早急にクリアしていく必要がありそうです。

在宅勤務に失敗する6つの原因

ここでは在宅勤務に失敗してしまう原因を6つにまとめました。

これから在宅勤務を導入しようと考えている企業の方は、事前に失敗要因を参考にしてみてください。

社員の働きを評価しにくい

在宅勤務では、社員の働きぶりを評価しにくい側面があります。正当に評価されなければ社員は不満を抱くでしょう。

この問題をクリアするには、オンラインミーティングを増やしたり、評価システムを導入するなどの対応が必要です。成果に関する基準を事前に共有しておくことで、社員のモチベーション低下を最小限にできるでしょう。

キャリアプランやビジョンを見失いやすい

在宅勤務は会社との接点が減りやすく、キャリアプランや将来のビジョンを見失いやすいという側面も。会社や所属部署の現状が見えないと、将来をイメージしづらくなることもあるでしょう。

問題解決にはできるだけ多くの情報をシェアすること。不透明な部分を極力なくし、どの社員でも共有できるシステムを作ることなどが挙げられます。

コミュニケーション不足

在宅勤務では、他の社員と関わり合いが少ないためコミュニケーション不足に陥りがちです。1人で作業をしている孤立感からモチベーションの低下につながることもあります。

コミュニケーション不足を解消するには、チャットツールやビデオ会議などで定期的に顔合わせをするのがおすすめです。

「毎週月曜日はビデオ通話」のように予め習慣化しておけば、在宅勤務でも人との繋がりを感じられるでしょう。

自己管理ができず生産性が落ちる

自己管理ができない人の場合、在宅勤務で仕事の生産性が落ちてしまうことも。「どうせバレないから大丈夫」とサボりぐせがついてしまうと、在宅勤務ならでは恩恵を受けることはできません。

在宅勤務ならではの生産性を発揮するには、社員が主体的に動けるような仕組みが必要です。上司から与えるのではなく、社員から質問を積極的にするような環境作りが大切と言えます。

真面目な人は働きすぎな傾向も

社員によっては、ついつい働きすぎてしまうという問題も。特に在宅勤務を導入した初期に見られることが多いです。社員によっては「働きすぎたのは自分の問題だから」と残業申請をせずに黙認している方もいます。

この問題を解決するには、1日のタスクを設定し、かつ時間で仕事を区切ることが重要です。会社としては社員が損をしない評価制度を作ることも課題と言えるでしょう。

監視ツールの導入によるストレス

在宅勤務に監視ツールを導入して失敗した事例もあります。PCのカメラやWebカメラを使って社員の動きを監視するツールもありますが、これでは自由度の高い在宅勤務のベネフィットは失われるはずです。

社員を監視することは「社員を信用していない」ことを露呈することに繋がります。監視ツールを使った在宅勤務は、社員への精神的ストレスを増やすだけです。この場合、在宅勤務の前に社員との関わり方から見直す必要があるでしょう。

結論:在宅勤務で失敗しないためには仕組み化と連携が重要

在宅勤務の失敗事例から分かることは

  • コミュニケーションと信頼関係
  • 情報をシェアできる仕組みづくり

が不可欠ということです。

社員との連携を高めるために最適なコミュニケーションツールを検討したり、社内情報を個々が引き出せるシステムの開発など、それぞれの会社にフィットした仕組み作りが大切になります。

理想は「オンラインだけど出社しているのと変わらない」こと。

在宅勤務の導入当初は様々な問題に直面することもありますが、問題を1つずつ改善していくことで、在宅勤務ならではのベネフィットを得られるはずです。他社の真似ではなく、自社に合う仕組みを見つけることが何よりも重要と言えるでしょう。

まとめ

新しい働き方である在宅勤務は、最適なツールの導入や検証をしなければ失敗に終わってしまうリスクがあります。

  • オフィスに集まって仕事をする
  • 在宅勤務で仕事をする

「仕事をする」という面では同じでも、2つの働き方には異なる注意点があるものです。

「どんな会社にしたいのか」や「在宅勤務を通して社員にどのような働き方をしてもらいたいのか」などは経営陣の大きな課題になります。

在宅勤務の導入を検討している方は、今回紹介した失敗事例を参考に、より良い組織作りを目指していきましょう。