働き方改革により徐々に浸透しつつあるテレワークですが「なぜテレワークがそこまで注目されているのか分からない」と疑問に感じている方もいるでしょう。
今回はテレワーク導入率のデータを元に「なぜテレワークを導入するのか?」や導入に向けての課題、目的などを解説します。
データ別:テレワークの導入率
総務省が平成29年に行った「通信利用動向調査」によると、テレワークの導入率は全体の13.8%となっています。
調査の中で、導入予定が決まっていると答えた企業は4.2%となっており、企業全体の18%がテレワークの導入をしている(もしくは導入予定)ことが分かりました。
ここではより詳細な導入率を把握するため、企業規模と産業分野、テレワークの導入形態別に解説します。
企業規模によるテレワーク導入率
テレワークの導入率は企業規模が大きくなるほど高くなっています。
従業員数2,000人以上の企業では38.7%。1,000〜1,999人の企業では34.1%でした。反対に100〜299人の企業では10.1%と導入率は低めです。
大企業では従業員数が多い分、多様な働き方を求められているのではないでしょうか。働き方改革が進められる中、大企業を中心にテレワークの導入が進められていることが分かります。
中小企業ではテレワークの導入を検討しているものの、今ひとつ踏み出せていない現状があるようです。そもそも「なぜ今テレワークを導入しなければいけないのか」と疑問に感じている経営者も少なくないでしょう。
産業分野別によるテレワーク導入率
こちらは産業分野別にテレワークの導入率を表したグラフです。
テレワークの導入率が最も多い産業分野は情報通信業で31.1%。次いで金融・保険業の29.8%となっています。最もテレワークの導入率が低いのは運輸業・郵送業で7.6%という結果になりました。
情報通信業では、テレワーク導入に欠かせないICT技術の活用方法に精通している企業も多いです。弊社をはじめ創業時よりテレワークを導入しオフィスを持たない企業も増えています。
反対に運送業や建設、製造、小売、不動産など産業分野では、対面での業務が多い分テレワークの導入率が低い結果になりました。
実店舗を持つ必要のある産業分野では、テレワーク導入に対して具体的なイメージを持てない企業も少なくありません。
しかし昨今では、データ入力や書類作成などの業務のみテレワーク化する企業も増えてきました。例えば、配送ドライバーの日直や進歩情報の管理などをテレワーク化することで、プライベートの充実を図るなどの新たな取り組みを行う企業も増えつつあります。
テレワークの導入形態
テレワークには大きく分けて、モバイルワーク、在宅勤務、サテライトオフィスの3つに分けられます。
- モバイルワーク:出張先、移動中、カフェなど
- 在宅勤務:自宅で業務を行う
- サテライトオフィス:レンタルオフィスなど
統計の結果、テレワークの導入形態で突出したのはモバイルワークでした。決められたオフィスではなく外出先で仕事をこなすワークスタイルです。Webエンジニアやデザイナーなどの職業ではモバイルワークが一般化しつつあります。
2番目に多い在宅勤務は自宅で業務を行うワークスタイル。介護や子育てなどの事情により、出社せず働ける在宅勤務を導入する企業も増えてきました。
サテライトオフィスの場合、レンタルオフィスやシェアオフィスなどのコストがかかるためテレワークの導入形態としては最も少ない結果になっています。
テレワークの形態については、業務内容や経営方針によって異なるのが現状です。コミュニケーション、生産性、進歩管理など、どこを重要視するのかによって形態を変える工夫が必要と言えるでしょう。
テレワーク導入の目的と効果
ここでは、実際にテレワークを導入した企業と、これから導入を検討する予定の企業をもとにテレワーク導入の目的や効果について解説していきます。
テレワーク導入済みの企業は生産性向上を体感している傾向
テレワーク導入済みの企業では
- 社内事務の迅速化
- 顧客満足度の向上、営業力の向上
- 社員の通勤・移動時間の短縮
など、生産性を高める目的意識が強い傾向にあります。
前述した企業規模別テレワークの導入率と合わせて考えると、生産性を高め企業としての競争力を向上させる目的を持っていると言えるでしょう。
オフィスに出社する従来の働き方から通勤や不要な事務作業などを削ぎ落とし、企業全体のコスト削減と効率化を図っています。
テレワーク導入を検討する企業では福利厚生に注目する傾向
テレワークの導入を検討している企業の目的を見てみると
- 人材の採用・確保・流出の防止
- 育児による退職の防止
- 介護による退職の防止
など、どちらかと言えば福利厚生の向上を目的としていることが分かります。
企業の競争力向上を目指し、生産性や効率化を積極的に進める企業ではテレワークを導入している企業がお多いのに対し、福利厚生の向上を目的とした企業ではテレワークの導入に至っていないのが興味深いところです。
実際テレワークを導入した企業では生産性向上に成功しているだけでなく、離職率や人材の確保にも効果を発揮しており、福利厚生面での向上にも役立っているという結果になっています。
テレワーク導入に向けての課題
テレワークの導入を検討している企業には以下のような課題を抱えています。
- 導入による効果の把握
- テレワークの導入・運用コスト
- 労務管理・人事評価
- テレワーク導入による社内制度作り
- 社員・経営層の理解
- コミュニケーション
すでにテレワークを導入している企業と比較すると、経営層の理解やテレワークに対応した仕組み作り、コスト面などに課題を感じていることが分かります。
反対にすでにテレワークを導入している企業には以下のような課題が高まっています。
- 情報セキュリティの保護
- 労務管理・人事評価
- 対象業務が絞られる
機密情報の漏洩やハッキング対策など、セキュリティ問題はテレワーク導入の課題となっているようです。また、テレワークできる業務が絞られるという課題もありました。職種によっては完全なリモートワークは難しいのも現状です。
テレワークを導入するかどうかの最も大きな課題となっているのは社員と経営層の理解ではないでしょうか。既存の働き方を大きく変えることに不安を感じている方は少なくないようです。
時代の変化に備えて働き方改革が求められていることは自覚しているものの、テレワーク導入に踏み切れないのは精神的な参入障壁なのかもしれません。まずは、試用期間を設けて導入を検討するなどの取り組みが必要と言えるでしょう。
未来に向けたテレワーク導入の必要性
働き方改革の推進によりテレワークを導入する企業が増えている背景には「変わりゆく社会の変化に対応するため」という側面があります。
2018年の労働人口は6,664万人であった労働人口は、少子高齢化の影響により、2030年ごろには労働者の人口が5,683万人ほどに減少、2060年には3,795万人まで減少していくと予想されています。
労働人口が減少し高齢化が進むことにより以下のような問題が浮上します。
- 人材の確保
- 介護従事者の増加
- 地方の交通手段減少
高齢化により介護の必要性が高まる一方、労働人口の減少で企業は人材確保が困難になるはずです。また、地方では人口減少によりバスや電車などの交通インフラが廃止されることも考えられます。
簡単に説明すれば「身動きが取りづらい人が増える」ということです。
この状況の中、従来通りオフィス出社型の勤務形態を貫くことは適切な人材を確保できないだけでなく、働きたいと思う労働者自体が減ってしまうリスクがあります。
労働者にとって働きやすい環境を構築することは、企業にとって大きな課題です。この問題を解決する1つの手段としてテレワークという新しい働き方が必要とされています。
まとめ
テレワークの導入率は企業規模、産業分野、目的意識の違いにより異なることが分かりました。
しかしながら、少子高齢化により労働人口が減る未来予測から考えると、既存の働き方を見直す必要性は年々高まっていくはずです。
変化の激しさが加速度的に高まっている今、テレワークは1つの対応策として効果を発揮します。
現在、テレワークの導入を検討している企業の方は、今回紹介したデータを参考に仕組み作りや意識改革に乗り出してみてはいかがでしょうか?
次は、テレワークを導入することによるメリットとデメリットについて知りましょう。