最近よく聞く「リモートハラスメント」って何?
テレワークが急速に普及する昨今、会社内でもオンラインを介したコミュニケーションや指示が増えました。これにより、「リモートハラスメント」と呼ばれる新しいタイプのハラスメントが登場し、問題視されています。
時間外のチャットやメールを強要される、不要な個別オンライン面談やバーチャル飲み会を設定される、web会議中に家の中を詮索されるなど、主にオンライン環境で生じるハラスメントが「リモートハラスメント」。もしかしたら、あなたの職場でももう起きているかもしれません。
テレワークで起きがちなハラスメント
①セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクシャルハラスメントとは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」に
より、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。
参考:厚生労働省 妊娠・出産等ハラスメント 職場のセクシュアルハラスメント防止のためのハンドブック
職場におけるセクシャルハラスメントに関しては、近年特に注目を浴びています。
容姿や年齢で性的な価値を決めつけて発言すること、プライベートについて詮索すること、業務外の個人的な接触を強要すること、不必要に身体に触れることなど、昔は良しとされていたことですが、最近ははっきりと「NO」を伝えて良い、そうあるべきであるという機運が高まっていますね。
テレワークにおけるセクシャルハラスメントには、web会議中に性的な動機によって容姿や服装を見せるように要求する・またはそれについて不必要に言及すること、背景に映る生活空間などについて(性的な動機によって)詮索する・見せるように要求するなどが想定されます。また、異性または性的な対象となる部下や同僚を、不必要な1on1のweb会議に誘うことや、個人チャットで性的な質問をすることなども考えられます。
男性から女性へだけでなく、女性から男性へ、または同性同士であっても相手が性的に不快に思う行為は全てセクシャルハラスメントに当てはまると考えるべきでしょう。
②パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントとは、職場におけるパワーハラスメントは、職場(テレワークの場合は自宅外でも就労している環境を『職場』と定義します)において⾏われる
- 優越的な関係を背景とした⾔動であって、
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- 労働者の就業環境が害されるもの
であり、1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
テレワークの場面では特に、業務時間外のメールやチャットでの即レス要求、部下へ人格否定や罵倒を含めたメッセージを送信する、web会議中に服装や背景などを映すことを強要する、またはそれについて不必要に言及することなどが想定されます。
web会議中にカメラを起動する(背景や姿を映す)ように要求することについては、効率的なコミュニケーションを図るという観点から、一概にハラスメントにあたるとは言い切れませんが、バーチャル背景の使用を認めるなどできるだけプライバシーに配慮する必要はありそうですね。
ハラスメントは絶対ダメ!防止対策を講じましょう
①ハラスメント防止の姿勢を示す
まず第一に必要なのは、会社としてハラスメントを許さない・防止するという姿勢を示すことです。
2020年6月1日より、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。この改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となっています。
厚生労働省:リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」
国の指針などを参考に、会社としての姿勢をはっきりと従業員にも周知することが必要です。また、ハラスメントを行った者に対する対処の方針や内容に関しても就業規則などに規定し、従業員に周知するとより効果的ですね。
②相談窓口を設定する
ハラスメント行為に対処するための相談窓口の設置も重要です。ハラスメントを受けたまたは目撃したと感じた者がすぐに相談することができ、また両者の意見を公平に聴取できる機関であるようにする必要もあるでしょう。
③ある程度のルールを設定する
リモートハラスメントに限らず、ハラスメント全般に関して、まだまだ被害を受けた側の認識が弱く、上手に訴えることができない・我慢してしまうという場合が少なくありません。
社員が正しくハラスメントを認識し防止するために、具体的にNGな言動を例示したり、web会議等コミュニケーションの現場におけるルールを明示しておくとわかりやすいでしょう。
④「監視」する意識を捨てる
テレワークを導入すると、相手が見えない分、過度に動きを把握しようとつい「監視」してしまう上司も少なくありません。監視が行き過ぎるとハラスメントに発展する場合も。進捗の報告や成果、雑談の雰囲気などを信じて監視業務の概念を捨てることが大切。ある程度は性善説を前提としたコミュニケーションを。
2020年6月1日より、パワハラ・セクハラ等防止対策が強化されています
先述した通り、2020年6月1日の法改正により、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務等の
新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講ずることになりました。その内容は大まかに以下の通りです。
- 国の施策に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)を明記する。
- パワーハラスメント防止対策の法制化(労働施策総合推進法)
- パワーハラスメントとは、「①優越的な関係を背景とした」、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」「③就業環境を害すること」(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)をいうことを明記する。
- 事業主に、パワーハラスメント防止のため、相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じることを義務付ける。
- セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法)
- セクシュアルハラスメント等に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化
- 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
- 自社の労働者等が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応
- 調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大
【参考リンク】
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月5日公布)の概要
パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」
ハラスメント防止のためのハンドブック
オフィスでもテレワークでも、ハラスメントは起こります
基本的にはパワハラ・セクハラ共に、物理的なオフィスにいる時と定義自体は変わりません。離れている分、密なコミュニケーションが必要となるテレワークにおいては、表現方法や伝わり方に対してもより一層注意を払う必要があります。また、見えない分個人的な攻撃の温床にもなりやすいのがオンラインコミュニケーションです。早期発見・対策ができるように、ひとりひとりがハラスメントに対する意識を強めていくことも大切ですね。
大切なのは目の前の相手を尊重するということ。ハラスメントに対する意識は良いコミュニケーションと人間関係にも必要不可欠です。ぜひチームで、会社で話し合ってみてくださいね。