感染者が減少傾向…みんな事務所へ回帰したい?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う4度の緊急事態宣言。2020年から2021年にかけては、この影響を受けて、リモートワークを実施する企業が激増しました。4度目の緊急事態宣言を終え、これからの働き方をどうしていくのか、多くの企業が頭を悩ませていると思います。
緊急事態宣言下の東京五輪開催を終えたタイミングで、パーソル総合研究所が「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」を発表しました。
これによると、東京五輪開催期間中かつ第4回緊急事態宣言下における正社員のテレワーク実施率は、全国平均で27.5%。2020年4月比(1回目の緊急事態宣言時)では0.4ポイント減となり、2020年11月比では2.8ポイントの微増にとどまっています。
また、テレワークに関する企業方針は、「テレワークが推奨されている」と「テレワークが命じられている」の合計で37.3% (従業員回答)。1回目の緊急事態宣言時(2020年4月)の40.7%比べて、マイナス3.4イントとやや微減傾向でした。
この結果から、宣言の解除と感染者の減少に伴い、今後オフィスへ回帰する企業も増えていくのではないかと予想されます。コロナ以前は当たり前だった「全員出社」スタイル、本当にこれが最適解でしょうか?
大企業が注目する「ハイブリッドワーク」
先日、楽天グループが「原則週4日出社」を実行すると発表しました。
楽天グループは、新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の発令を受けて在宅勤務への切り換えを実施し、緊急事態宣言が解除された地域については週3日出社、2日在宅を基本としていました。今回、感染が落ち着いてきたことから、東京本社などの社員について原則週4日出社、1日在宅勤務としました。基礎疾患がある従業員などを除き、1日出社日を増やすことで、社内の意思疎通を高めることが狙いです。
mi-molet:楽天は週4日出社へ…コロナ後の働き方が企業の明暗を分けるワケ
そのほか、米Google社は2022年1月から週3日の出社と在宅を組み合わせる形に、米アップル社や米アマゾン・ドット・コムも2022年以降週3日のオフィスワークを推し進める方針です。感染症の影響でリモートワークが推進されてきましたが、ここへきて相次いで大企業が「オフィスとリモートの併用」を発表しています。ポイントは、完全なる「オフィス回帰」ではなく、「ハイブリッド」だということ。これからの働き方や企業の在り方として、オフィスと出社を柔軟に組み合わせることが求められるのでしょう。
大手が注目する「ハイブリッドワーク」、そのメリットについて考えてみます。
ハイブリッドワークのメリット
よりよいコミュニケーションが生まれる
普段のやりとりはオンラインで十分。移動時間や場所の確保に悩まされないweb会議やオンラインチャットは、効率的なコミュニケーションとして今後も大いに貢献してくれるでしょう。しかしそれと同時に「物理的に会う」ことで得られる情報の多さも非常に大切だと再確認できたこのコロナ禍。商品を手に取りながらのディスカッションや、新しい仲間との物理的な対面など、ハイブリットワークなら集まることと情報を迅速に交換することを両立させることができます。
多様な働き方にコミットできる
体調や家庭の事情など、テレワークでないと就業が困難な社員もいます。一方で、オフィスへ通勤した方が断然環境が良い、という社員も。ライフステージの変化に合わせて、オフィスワークとテレワークをスイッチしながら働くことも必要になるかもしれません。社員ひとりひとりがそれを選択できれば、離職率を下げつつより多様な働き方にコミットできますし、採用の幅も広がります。
自由度が生産性を高める
「事務作業はテレワークの方が集中できる」「この打ち合わせはみんなで集まってやりたい」などオフィスワークに適した仕事とテレワークに適した仕事がそれぞれあるでしょう。ここを上手に使い分けることができれば、生産性の向上が期待できます。また、自分で自分の仕事を細分化し、それぞれ見合った環境を考えることはセルフマネジメント力を上げるきっかけにもなりますね。
ハイブリッドワークへシフトするために必要なこと
ベースはリモートワークに
ハイブリッドワークを実現させるためには、リモートワークに軸足を置いておくことが必須です。
会議はweb会議に、連絡はログの残るチャットに、情報は全てクラウドに収めてどこからでも取得できるように、オフィスにいても他の場所にいても仮想オフィスに全員が出勤するようになど、テレワーカーもオフィスワーカーも常に繋がっていられるようにしておきましょう。ここに情報格差が生まれると、バイブリッドワークはあっという間に崩壊してしまいます。
身一つに収める
家で就業することも突然出社することも考えて、基本的に荷物はコンパクトにしておくことをおすすめします。「パソコンひとつあればどこでも大丈夫」の状態にしておけば、フットワークも軽くなります。
事務所を自由に使いやすく
ハイブリッドワークにおいては、事務所の在り方も非常に重要です。オフィスにいる確率の方が高い人は専用のデスクを設けても良いかもしれませんが、人数の増減に強いフリーアドレスなデスクを増やしたり、1人で外部のweb会議に参加できるように仕切りのある小さなスペースを設けたり、よりさまざまな用途に使える空間を作ることもおすすめです。
従来の「オフィス」の概念は一旦捨てて、新しくレイアウトを練り直してみることも必要になりそうですね。
もう一度ルール作りを徹底する
情報伝達手段の統一や、出勤のペース、オフィスはどのように使うのか、出勤の際にかかった交通費はどのように請求するのか、問題が起こった時はどのようなフローで解決するのか、働き方にバリエーションが出るということは、それだけルールが煩雑としてしまう恐れがあるということです。ある程度のシチュエーションを想定して、もう一度ルール作りを徹底しておくことが必要です。
ハイブリッドワークで、さらに働き方は未来へ
オフィスワークが当たり前の時代から、テレワークを余儀なくされる経験を経た現在、両方の良いところを取り入れたハイブリッドワークに多くの企業が有効性を見出すようになりました。働き方は、幅が広がれば広がるほどたくさんの人にとって良いものになるはずです。また多様な働き方ができる企業は、災害などにも強いはず。ぜひ未来の働き方のために、ハイブリッドワークを検討してはいかがでしょうか?
この記事を書いた人
土佐光見
リモートワーク研究所研究員・ライター。
webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。