「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。
合同会社フィヨルド 代表社員 町田 哲平氏
2006年に
アクトインディ株式会社でアルバイトを始め、Webサイトの立ち上げ・更新・改善作業、名刺、新聞折り込み広告、冊子作成などを行う。2007年、合同会社フィヨルドを設立。プログラマ・デザイナーの垣根をなくし、デザイナーも開発チームの一員としてチームので開発を行うスタイルで自社サービス・受託案件でデザインを行う。
合同会社フィヨルド 代表社員 駒形 真幸氏
ITベンチャーと点々としたあと2009年から合同会社フィヨルドにて
怖話の開発やRuby on Railsを使ったWebアプリ開発に従事。
社員2人でどこまで出来るか挑戦してみたい
今日は宜しくお願いします。まずは会社の紹介をお願いします。
- 町田
はい。合同会社フィヨルドと言いまして、エンジニアとデザイナーの2人だけの会社です。僕がデザイナーをやっている町田で、もう1人の社員の駒形がエンジニアをやっています。
もともと会社をつくるときに、社員は増やさないと決めたんです。なぜかと言うと、「2人でどこまで出来るか挑戦してみたい」というのが、会社のコンセプトにあったからです。そこはちょっと変わっている点ですね。2人だけの会社で、普段は受託開発を請け負いながら、自社サービスを作っています。
インタビューに応じる町田氏
その自社サービスはどういったサービスですか?
- 町田
「怖話(こわばな)」という、1万8千話以上の怖い話がサウンドノベル風に読める世界最大級の怖い話投稿サイトになります。
50人のインターンが入れるオフィスを用意するのはもったいない
フィヨルドさんのリモートワークについてお聞きしたいんですが、町田さんと駒形さんのお二人も、いつもリモートでお仕事をされているんですか?
- 町田
私たち二人は割とオフィスに来ていることが多いですね。弊社がリモートワークをすごく使っているところは、社員の我々の間ではなく、インターンの方に仕事をしてもらうときです。
「社員を増やさない」というコンセプトはありましたが、やはり2人だけだと開発に限界がありました。そこで開発力を高めるにはどうしたらいいかと考えたときに、インターンをたくさん採用することを決めたんです。弊社は、今まで卒業した人も含めるとインターンが50人位いるんです。常に50人が動いているわけじゃなくて、どんどん卒業していくんですけれど、常にインターンを募集していて、インターンの方に自社サービスの怖話の開発を手伝ってもらっています。そのときに50人が入れるオフィスなんて用意するのは無駄なので、インターンの方はほとんどの人がリモートワークです。
珍しい形ですね。お二人もリモートすることはあるけれど、インターンの方は大体がリモートでご自宅などからお仕事されているんですね。
- 町田
そうですね。基本、僕らはわりとオフィスには来ていますが、僕も、もう1人の駒形も、受託開発をやりながら自社サービスを開発しているので、仕事によっては外のミーティングに出なきゃいけなかったり、お客さんの横で作業しなきゃいけなかったりすることもあるんです。なので、リモートと言っても、家じゃなくて、別の職場からフィヨルドの業務をやることも多いですね。
お二人は基本的にオフィスで仕事をされるということですが、何か理由はありますか?
- 町田
やはりオフィスの居心地がいいことですね。でも、やっぱり雨が降っていたりすると、靴が濡れるのが嫌だから家からやることもありますね。
オフィスに来るか在宅で仕事をするかは、自由なんですか?
- 町田
自由ですね。会社に来ることを会社のルールと決めてはいないです。ただ、会社に来ると、エスプレッソマシンもあるし、椅子はアーロンチェアだったり、家族もいないので、居心地はオフィスのほうがいいんですよね(笑)仕事もはかどりますね。
主婦も含めて色んな人からインターンの募集が増えた
リモートワークは、インターンの方に好評ですか?
- 町田
そうですね。場所を制限しないことによって、色んな人から募集が来るようになりました。特に多いのが、もともとITの会社で働いていて、子育てがあったから一時期仕事を休んでいたという主婦の方です。ITの世界は流れが速いので、最新のものをまた追わないといけないんですけど、そのリハビリ期間みたいな感じでうちでインターンをして、戻れる自信がついたらまたIT業界に戻っていかれますね。
思っていたのと違いました。インターンって学生の方とかではないんですね。
- 町田
そうですね。主婦の方の応募は僕らも予想していなかったんです。学生ももちろんいますが、社会人のほうが圧倒的に多いですね。
男性と女性の比率はどの程度でしょうか?
- 町田
はい。どちらかと言えば男性が多くて、一番多いパターンは、もともとエンジニアをやっていたけれど、そこの会社でやっていたのが、レガシーと言われている古いタイプのプログラムの書き方であったり言語・フレームワークだったりで、プログラマーとしてこれをやっていくのは辛いと感じている方ですね。古いものを扱っていると、そこの会社でしか通用しないものをやらされるんです。「そこの会社に特化したエンジニアになってしまうけど、一生それで自分の将来は大丈夫なのか」という不安を持つ方が結構多いんですよね。
弊社はその辺りはモダンな環境を作っているんで、一旦フィヨルドで最近のやり方を覚えて自信をつけてから、うちと同じようなことをやっているところに転職したいという方が、その修行の場所みたいな感じで来ることが多いです。
授業料をもらわない、アルバイト代も払わない
そういう方は、違う会社に在籍したまま、インターンとしてフィヨルドさんでお仕事をするんですか?2つ仕事をしていることになりますよね?
- 町田
そうですね。うちの仕事を手伝うんですけども、ちょっとうちのインターンの仕組みも独自なんです。そこを説明させていただきますね。
お願いします。
- 町田
はい。インターンって仕事を手伝いながら勉強するのが割と普通な形だと思うんですが、弊社のインターンはそこが違っていて、1週間交代で「今週は学習をする週」「今週はうちの仕事を手伝う週」というのを設定しているんです。
学習の週のときは、弊社が独自に作っている学習のカリキュラムがあるんでが、それをやる週になります。そのときに分からないことがあったら質問をすることが出来ます。
だから、半分はアルバイト、半分はスクールみたいなものです。普通スクールというのは、授業料をもらって教えるものですよね。アルバイトは逆にうちがお金を払って仕事を手伝ってもらうことですよね。その中間で、授業料をもらわない代わりにアルバイト代も払わないという形が、弊社のインターンなんです。
すごく変わっていますね!
- 町田
そうですね。そのインターンを全部やると、最終的には自分でウェブサービスを作って公開できるところまでは用意してあるんです。
すごい!それ、ど素人ですけど、私も入れますか(笑)?
- 町田
もちろん入れますよ(笑)。うちはインターンの方にお金も払ってないし、教育しているからといってお金を貰ってもいないから、辞めたくなったらいつでも辞やめていいし、また再開したくなったらいつでも再開していいそこはすごくゆるいですね。
その学習カリキュラムは、全部でどれ位の時間がかかるんですか?
- 町田
人によってバラバラですけど、全くの素人で1日8時間フルでやれたとして大体半年位ですね。弊社の仕事もやってもらいながらなんで、実質学習できるのは半年のうち3カ月位になりますね。ただ、来る人はプログラム経験者が多いので、そういう人だともっと早く、その半分位で出来ちゃったりしますね。
そのカリキュラムはフィヨルドさんで作られたオリジナルのものなんですか?
- 町田
そうですね。先ほどお話した、僕と駒形が出会った会社の案件がありますよね。その後そこの会社の外部取締役に2人でなったんです。そのときに、そこの会社が、もともと技術チームがいなかったんです。営業しかいない会社だったんですけれども、そこで技術チームをつくるというミッションがあって、そのときにそこに入ってきた新人を育てるためにつくったのがそのカリキュラムのおおもとではあったんです。
すごい。
- 町田
たまたまオープンソースのライセンスで公開していたんで、「良かった、こっちでも使える」と思ってアレンジしたものがうちのカリキュラムです。
リモートワークという言葉もなかった時代から、自由にやっていた
ありがとうございます。町田さんと駒形さんはフィヨルドをつくる前は、どこかの会社に勤めていらっしゃったのですか?
- 町田
そうですね。僕はあまりこの業界が長くなくて、もともとIT会社に入ったのは単なる雑用で、SEOのリンク貼りとか、そういうのをやっていたんです。そこの会社で色々勉強してウェブデザインが出来るようになったんです。その会社を辞めて、その後に、僕が前にいた会社が新しいサービスを作ることになって、そこに僕がデザイナーとして呼ばれたんですけど、そのときに呼んだエンジニアが駒形だったんです。そこでお互いフリーランス同士みたいな感じで1つの案件をやることになって意気投合したんで、会社を設立して、このままこの2人でやっていこうという流れで出来たのがフィヨルドです。
すごく気が合ったんですね!前の会社にいたときはリモートワークされていましたか?
- 町田
そのときはまだしていませんでした。フィヨルドは8年くらいやっていますが、設立当初はまだリモートワークという言葉もなかったんですけど、二人で初めてからは自由ですね。
エンジニアの駒形は、SIerとは違う文化を持った色んなベンチャーを転々としていたので、きっちりスーツで出社して、ここの会社以外のWi-Fiでは作業しちゃいけないとか、パソコンは持ち込みダメとか、そういう文化じゃなかったので、今とやり方は全然変わってないでしょうね。
今、自由に会社に行っても行かなくてもいいという状態は、特別新鮮なわけじゃないんですね。
- 町田
はい。昔からそうでした。そこは意識はしていないです。
リモートでも出来るように「仕組み化」を考える
リモートワークで工夫していることはありますか?
- 町田
そうですね。工夫していることは、リモートのインターンの人と仕事をするにあたって、なんでもリモートでも出来るように「仕組み化」を考えるんですよね。会って仕事をするとちゃんとルールを決めなくても、その都度口で言えばいいやみたいなことになって、ルールが明確になっていかないと思うんです。でも、リモートの人と働いても大丈夫なようにルールを決めるとなると、色んな手間を省こうとか、頭を使うようになります。
もう少し詳しくお話し頂けますか?
- 町田
例えばなんですけど、インターンの方がたくさんいて、何か質問があったとしますよね。そのときに質問には答えるんですけども、質問に答えて終わりにはしないんです。質問をした人が、その質問が今後二度と発生しないようにドキュメント化するというところまでルールにしているんです。
ちょっとこれはリモートじゃないですけど、インターンの中にはリアルにオフィスへ来る人もいるんですけど、「オフィスの鍵の開け方が分からない」という質問が来たら、鍵の開け方を教えるんですが、その後にちゃんと「オフィスの鍵の開け方」というドキュメントがもう用意されて、次の人はそれを読めば質問しなくても済むようになるんです。
それはネット上に載せるんですか?
- 町田
そうですね。esaという、チームのドキュメント共有のためのサービスがあるんですが、そのesaを使って、うちではドキュメント共有をしています。
知識を溜めるドキュメントは常に改善が繰り返されていく
インターンの方は分からないことがあると、esaを見て、載っていなかった場合にだけ質問するんですね。
- 町田
はい。もし載っていても質問をしたら、それは載っていることが分かりづらかったということなので、もうちょっと分かりやすい場所にそのリンクを貼るとか工夫をすることになります。なので、そういうドキュメントがどんどん強くなっていくんです。
それは今、結構膨大な量になっているんですか?
- 町田
そうでもないですよ。聞くことってそんなにないみたいで、今あるドキュメントの改善が繰り返されていく形ですね。例えば、カリキュラムで「この課題が難しいから誰か教えて」という質問に、参考になるURLが貼られたりするんですが、URLが変わっていたりすると、誰かが直してくれますね。
所属意識を持ってもらうための日報は、交換日記のようなもの
他にリモートワークを上手に進めるコツはありますか?
- 町田
そうですね。リモートだと、うちのインターンに参加している実感を持ってもらうのが結構難しいんです。指示が来て仕事を手伝うか、カリキュラムを見て分からないことを聞くだけで、結局文字だけのやり取りが主なんですよね。これだと通うのと違って「自分はフィヨルドのインターンだ」という所属感がいまいち湧かないですよね。
特に、海外からやっている方もいたりとか、あと仕事が終わってからうちのインターンをやる人もいたりすると、僕らと時間が合わなかったりするんです。なので、チャットのコミュニケーションの取り方が難しくて、非同期でのコミュニケーションが必要になってくるんです。
- 町田
そこで、先ほどお話したesaというドキュメントツールに日報を書くことをルールの1つにしています。「今日はこの部分を学習します」という内容や、「今日やったこと」と「今日やって分からなかったこと」、あと「今日お昼にこれを食べておいしかった」みたいなことも、用意されているテンプレートに沿って書くようにしたんです。
そのおかげで、時間が合わなくてもみんなが日報を見ているので、僕らもインターンも全員含めて、みんなが何をやっているか本当に分かりやすくなりました。何をやっているかということの共有が進んだことで、それまで薄かった所属しているという感覚を持ってもらえるようになりました。
- 町田
あと、そういう日報を書くのを習慣化させると、卒業した後でもたまに書いてくれたりするんです(笑)面白いのが、インターンを卒業して就職したんだけど、また次に転職するときに、「うちのインターンがこれから就職するときに役立つ情報を書きたいから」と言って、わざわざ自分の転職活動の内容を書いてくれたりする。「ここの面接はこんなことを聞かれた」とか、「ここの試験はこういうのが出た」とか。そうすると、そういうのを見られることで、またインターンの人も自分たちの就職に役立つんです。
母校みたいな感覚ですね。
- 町田
そうですね。
これまでたくさんの方がリモートでインターンをしながら卒業していかれたと思いますが、リモートワークに向き不向きはありますか?
リモートワーカーに向いているのはどんな人?
~後編に続く~
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