リモートワークで『お父さん』も『会社員』も両立出来る『ええ会社』〜RELATIONS株式会社(後編)

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webと対面、どっちのコミュニケーションも大切

リモートワークをしている社員の方と、そうでなくて毎日会社に来てる方といろいろいらっしゃると思うんですけれども、そのコミュニケーションについてお伺いしようと思います。目の前にいてすぐに話しかけられる人と、web会議を提案したりツールを介しないと話しかけられない人と両方いるという状態で、ディスコミュニケーションが生じたりすることはありますか?

奥宮

僕の場合は、必ずチーム内で、ビジネスタイムに会議をするようにしているので、あんまり不都合はないですね。会社で、対面で話すことももちろんあります。作業していて「これ、どうする?」みたいな会話っていうのはどこにいてもチャットでしていますが、そういう2人ないし少人数の会話も、チームみんなが見れる状態でやりとりした方が有益だったりするので、Slackを有効に使っています。遠隔だろうが対面だろうが、スタイルは一緒なので影響はないかな…。

なるほど。そういう文化ってチームごとに違いますか?

奥宮

全社的にSlackはすごい使ってるとは思うんですけど…コンサルチームの方のお話、聞きたいです。

深沢

Slackももちろんですが、他にも会社としてコミュニケーションを活性化する仕組みを作っています。例えば社員1人ひとりに月1万円までであれば、社員同士の食事代を補助していたり、1on1(定期的に上司と部下が行う1対1の面談)を導入したり。コンサルチームに関しては、バディーコールという毎日人を変えて電話でコミュニケーションを取るという取り組みをしているメンバーもいます。ただ、コンサルティングチームはメンバー全員が出張しているような日も珍しくないので、コミュニケーション自体は他の事業部に比べると相対的には少ないかなと思います。

コミュニケーションをなるべく円滑にさせるために、何か工夫していることとかってありますか?

深沢

Slackをまめに使うとか、あとは月曜日の全員が集まるときにはなるべく事業部で会議をやったり、食事に行ったりしてますね。あと、ZoomのUIだと3人会議にいたら3人とも顔が見えますよね。ああいうのを使って表情とかも含めて見るようにしたいなと。まだやっぱり電話やweb会議でも音声だけが多いので、そういうところはちょっと工夫していきたいなと思っています。

Slackのコミュニケーションでも気を付けてることってあるんですか?

深沢

Slackのコミュニケーションは、なるべくオープンチャンネルでやることですね。あとは予定を明確に、今日出張があるとしたら、どこに誰が出張で行ってるのかっていうのを朝に全体にわかるように流すんです。それで例えば「今日大阪に3人いる」とわかったら、その3人が声を掛け合って飲みに行ったり、集まって打ち合わせしたり、といったことを促進できる仕組みを作っています。

やっぱり対面のコミュニケーションも大事にしたほうが分かりやすいという実感はありますか?

深沢

両方大事かなと思っていますね。

長谷川

あとはオフィスの運用も工夫しています。うちのオフィスは結構面積が広いのですが、週1~2回ぐらいしか出社しない人が多くてスカスカしてしまうので、なるべく1拠点に固まって業務をするようにしていて。物理的に距離を狭めてコミュニケーションを促進しようとしています。

よりみんながストレスなくルールを運用していくために

今まではコンサル業務として、お客様のところに行くからリモートで会社とつなぐというスタイルでのお仕事が多かったと思うんですけど、そこから子育てや家庭などプライベートと仕事を切り替えながらやっていくようになった時に、今までのリモートワークからアップデートしなきゃならなくなった箇所などありますか?

長谷川

基準作りですね。そこが今曖昧で、個人の理由でリモートワークを始めるときに、ちゃんとセルフマネジメントできるようなリテラシーがあるかどうか、そこをどう線引きするかを、社内ではこれから洗練させていかないといけないですね。

それは評価方法にも影響したりしましたか?

長谷川

いや、今はそこまで影響してないんですけど、今後たぶん新卒や、新しく入ってくるメンバーに対して基準をより明確にしておかないと。一応新卒メンバーに関してだけ、直属のチームの責任者の承認が出るまでリモートワークはしてないんですよ。ただ全社として新卒にしか適用されていないので、例えば第2新卒や中途採用のメンバーの場合は、なんとなく全員一律でOKだよとなっているので、そこは見直したいですね。よりみんながストレスなくルールを運用していくためには、ある一定の基準を設けておかないと破綻するので。

社内の様子

そうですね。

長谷川

出張先からのリモートは今の話で問題ないと思うんですけど、個人の事情が絡む場合は、必要かなと感じています。

皆さんがある程度一定の基準に達してからじゃないと。そこにばらつきがあると、コミュニケーションにも影響してきますよね。

長谷川

そうですね。それぞれが自分の都合を主張し始めると、打ち合わせもなかなかできなかったりとか。今のところはそういう弊害は僕は感じていないし、そういう申し出をもらったこともないですけども、今後出ないとも限らないので。

奥宮

僕の場合だと、エンジニアなので、コーディングはそのままアウトプットとして残るんですね。でも自分も時々あるんですけど、「子どもの都合で今日はちょっと在宅させてもらいます」って言って在宅するんですけど、実際子どもの世話で時間が取れなかった、コードが書けなかったということも結構あるんですよね。

ありますよね。

奥宮

そのときは後から「今日は半休扱いにしますので」って申告してお休みを取ったことにしちゃう。それはチームのローカルルールなんですけど、きちんとパフォーマンスを出すというのは前提なので、そこに達しなかったら、フェアに「ごめんなさい、今日は半休にします」と。

なるほど。それもセルフマネジメントの一環ですね。自分がどれぐらいのパフォーマンスが出せるのか、それをどれぐらい評価するのかというのも、やっぱりある程度個人の裁量というか、お互いの信頼でできているということですね。

奥宮

そうですね。

長谷川

やっぱりちゃんとそういうガイドラインがあると、制度に対する納得感がどんどんできてくるじゃないですか。

そうですね。

長谷川

例えば、めちゃめちゃリモートを取りまくるけど、全然パフォーマンスが出てないじゃんみたいな人が出たときにどうするんだ、みたいなのは、今後課題になりそうだなと。

人が増えるとやっぱりそれだけバリエーションが増えるということですから、それぞれの基準が全然違ったり、思いもよらないような考え方をするような人が入ってきたりもしますもんね。会社のある程度のローカルルールにどれぐらい共感してくれるのかっていうのも大事なことですね。

長谷川

そうですね。

信頼関係が築けているのが前提というのをすごく感じたんですけど、やっぱりそういう信頼関係が最初にないとリモートで働きづらいなと思いますか?よく分からない人とリモート。「この人、どれぐらいの人なんだろう?」みたいな気持ちがあると、離れててやりづらくなったりするんでしょうか?

長谷川

弊社では毎日、「日報」という形で業務レポートを必ず全員書くんです。なので、「何をやっているのか」ということは開示される状態になってるので、チームを含めて全社に伝わります。あとは新しく入社したメンバーに対しては、オンボーディング(組織の一体感を高める人材定着プロセス)でしっかりと対話をする時間を設けたり。1on1に近い文化なんですけど、社員の中で当事者間よく話し合って共有と開示し合う時間を取っています。それは特徴的なところかもしれませんね。

なるほど。やっぱり信頼関係を築くのはとても大事なことなんですね。

コミュニケーションのニュアンスには細心の注意が必要

リモートワークをしていて「良かったな」ということ、逆に「これは不便だな」ということはそれぞれ何かありますか?

長谷川

僕は家でリモートするときもあるんですけど、二子玉川に今住んでいまして、川沿いにスターバックスがあるんですね。

ありますね。すごい素敵なやつが。

長谷川

そこによく行くんですけど。あそこで仕事してると「良かったな」って。

一同

(笑)

ビジュアル的にもすごい素敵ですよね。

長谷川

そうですね。創造性が豊かになる気がします。

創造性が。深沢さん、何かありますか?

深沢

良かったなと思うのが、東京と福岡と行ったり来たりしやすいことですね。福岡で仕事をしているときは基本的に子育ては全然してないんですけど、それでも妻は近くにいるっていうだけで安心するので。何かあったときにすぐ頼れる。やっぱり東京にいたら何かあってもどうにもならないので、それだけでも価値はあるのかなと思いますね。逆にリモートで難しいなと思うのが、コンサルティングの事業をやってるので、情報の取り扱いが難しいですね。喫茶店とかで会議をやっていてもぼかした表現にしないといけないので。イニシャルトークとかになってくるんで、途中でよく分からなくなるっていう(笑)。

一同

(笑)

名前を出しちゃいけないこともありますよね。不特定多数に聞かれてしまう場所だと。

深沢

社名を出しちゃいけないですし、あんまり細かいことを言えないので、ちょっと難しかったりしますね。

符丁やニックネーム使ったりしなきゃいけなくなりそうですね。

深沢

下手したらお客様の会社にいながら他のお客様の会社について打ち合わせをするとかもあるので、気を使います(笑)。

それはやりづらいですね(笑)。

深沢

やりづらい。

なるほど。クローズドに仕切れないところをどうするかという話ですね。では、奥宮さんはいかがです?

奥宮

僕もリモートに関しては、特に不満はないです。あるとしたら、家の近くに電源のあるカフェがあんまりないとか、そのぐらいなもんで。リモートでより気を付けなきゃいけないのは、Slackでのコミュニケーションがメインになっちゃうので、文字でやりとりしてると、ついついトゲのある発言をピョンと出しちゃう。

ありがちですね。

奥宮

ちょっとミスコミュニケーションが発生しちゃうみたいなことがたまにあるんで、最低限のマナーには気を付けてます。

ご自宅ではあんまりリモートしないですか?

奥宮

奥さんと子どもが出掛けてるときは、猫と一緒にします。

奥宮さんと娘さん

やっぱり家に人がいると、ちょっとやりづらかったりしますよね。

奥宮

はい。やりづらい。

子どもさんは、特に仕事してるとは分からずに来ますもんね。場所の確保っていうのもちょっとした課題になりますね。

奥宮

意外にそこはありますね。

リモートワークは「お父さん」の生き方を楽しく自由にできる

今、お父さんとして、リモートワークを使いながら、ご自分たちのようにプライベートと仕事を両立するということをもっと勧めたいと思いますか?男性の育児参加が叫ばれている昨今ですが。

奥宮

育児っていう軸で言うと、僕、実は1年前にがっつり育休を取ろうかどうか迷ったんですよ。男性の育休取得率って確か数パーセントなんですよね。

そうですね。

奥宮

海外だと例えば1年取るとか、ありますよね。僕としてはそういう気持ちもあったんですけど、やっぱり現実働きながらで考えると、自分が休む間、例えば派遣社員の方を頼まなきゃいけないとか、いろいろチームにかける迷惑を考えて葛藤があったんですね。その上で、結局がっつり育休を取るというのはやらなかったんです。 その代わりリモートワークを使って、家庭に時間を割きながら、しかも会社に対しても自分のパフォーマンスを出せる状況が整っていたのがありがたかったです。本当にリモートのおかげだなと思っています。なので、育休は取りにくい場合も、リモートを上手に使うことで十分両立できるんじゃないかなと、体験して思いました。

ありがとうございます。長谷川さんはどうですか?

長谷川

僕は人生という観点で見たときに、仕事もすごく大事なんですけど、家庭や子どもとの時間をいかに充実したものにするかというのが、すごく影響を及ぼすと思っているんです。仕事でいいパフォーマンスを出すためには、妻や子供や、僕に関わる人たちが楽しく過ごしてくれてるということが重要ですし、一番僕が果たさないといけない役割だと捉えています。個人的にはそういう時間がリモートで取れているのはありがたいなと。 多くのパパに関して言うと、世の中関係性で出来上がってる、個人のパフォーマンスが家庭に影響を及ぼす要素というのは必ずあるので、その人個人の人生を楽しくするためにも、そういう社会的なインフラ整うといいなと思っています。その意味でリモートっていうのはすごくパパにとっては大事だし、どんどん使ってください。

ありがとうございます。信頼関係は仕事もプライベートも大切ですよね。

深沢

リモートを推進して仕事の仕方を変えることによって、もっといいパフォーマンスが出せるんじゃないかなと思っています。やっぱり1日8時間会社にいる中で、仕事の切り分けって大体1時間とか、2時間で区切られていくじゃないですか。その中でどれだけパフォーマンスを発揮するのかっていうことをみんなが考えるようになれば、今よりも1.5倍、2倍の成果を出しながら仕事ができるんじゃないかなというのは、実感していますね。 たった1時間でも2時間でも家族といる時間を取ることができると、家庭はすごくうまくいくんだと思います。家庭にコミットした2時間を、仕事でどうやって挽回するのか、2倍のパフォーマンスをどう出すかという考え方をつくれれば、より良いですよね。

それだけ家庭、仕事、自分で時間の使い方がもっと多様にできるっていうことですよね、リモートワークがあると。

深沢

そうですね。

今後の発展の鍵は「意思疎通」

これから会社としてでもチームとしてでもいいんですけど、リモートワークをもっと展開させることについてお考えがありますか?

深沢

今、お客様先への移動時間がすごく長いんですよね。そこをもうちょっとどうにかするというか、お客様先とも遠隔でコミュニケーションが取れるようにすることも考えていきたいなと。

左から、奥宮さん、長谷川さん、深沢さん
長谷川

弊社の場合、哲学というのは全社共通で決めてるんですけれども、細かいルールはチームごとなんですよ。今後バラエティに富んだメンバーが入ってくるようになると、もしかしたら全社としてのルールもこれから作っていかないといけないのかなと思っています。自由度が高くというか、1人ひとりが自律的に働ける組織ではずっとありたいと思っています。 今は会社のルールが非常に少なくて、例えば稟議のプロセスもありませんし、承認等のルールもんなにきつく設けてない状態なんです。なので例えば病気になったとしても、すぐ相談すればリモートに切り替えられたり融通も利く。でもここから人が増えると、この柔軟性を担保しながら、今の組織風土を維持できるかというのは、テーマになるかなと思いますね。

そうですね。これから何百人になってくると、ちょっとこちらが想定してる多様性のさらに上を行く人が出てきたりしますもんね。

長谷川

そうですね(笑)。

なるほど。その辺のことも考えつつ、今の自由度を守りつつっというところが課題になるんですね。

長谷川

だからやっぱり、組織文化とか、組織の価値観、ミッションも含めたところの意思疎通を、人が増えたとしてどこまでやりきるかということがメインイシューな気がしますね。その文化があれば、リモートの制度もうまく乗っけられると思うので、その文化の維持みたいなことが一番大事かなと個人的には思います。

そうですね。そのバランスがまた「ええ会社」に繋がるんですね。

取材後記

男性の育児参加が叫ばれる昨今ですが、同時に男性の「働きにくさ」も問題になっています。そんな中、リモートワークを使って誰もが家庭やプライベートと仕事を両立できる環境を構築できるというのは、働く親にとってとても心強いことだと思いました。お互いの信頼関係がちゃんと出来ているのも感じられ、とても和やかなインタビューになりました。
ますますのご発展をお祈りいたします!

(リモートワークラボ編集部)

この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。