コロナ禍で変化したマネージャー層に求められている能力
4月からの新組織がオンラインスタートという企業様も多いのではないでしょうか。今回はそんな皆様にオンラインでの教育方法をポイントを絞ってお伝えします。
株式会社ジェイフィールの調査によると、「期待するマネジメント」の中で「チーム全体での情報シェア」が一番多いことが分かりました。また、テレワーク推進により一人ひとりが閉じた働き方をしがちで、よりお互いのことを知る必要性が求められていることが分かりました。
テレワークでのマネジメントは【性善説】と【信頼関係】が肝
そもそもテレワークを行う上で必要な管理職・育成担当の心構えは3つあります。特に新人育成においては、この心構えがないと相手が会社に馴染みにくかったり、突然の音信不通になってしまうということも引き起こしてしまいます。
◆前提として大切な3つのこと 1.「オンラインでなんでも出来る」と思い込む 2.「仕事をしている」という性善説をもつ 3.メンバーを褒めて、信頼関係を構築する |
①「オンラインでなんでも出来る」と思い込む
「対面であったことないけど、オンラインだけで信頼関係作ることできるのか」、こういった質問はよく耳にします。しかし、これは「リアルでマネジメントしていた時と比べているから」です。当社では、面接・入社後の育成・事業運営も全てオンラインで行っています。
私も入社して2カ月間は、中米ベリーズに住んでいたので、遠隔からスタートすることになり、不安でしたが、実際に始まると、特に業務への支障はありませんでした。そもそも、「テレワークで上手く仕事が出来るのか」と不安になっているのはマネージャー(管理職)だけ、ということが多いようです。
②「仕事をしている」という性善説をもつ
テレワークになり、「本人任せだと、仕事をしているのか不安になる」という声もよく聞きます。しかし、仕事をサボりがちな人は、オフィスでも家でも同じことだと私は思うのです。そのため、まずは「仕事をしている」と信じましょう。
また、テレワークの場合は長時間労働の危険があるということを念頭に置かねばなりません。例えば、移動時間というオンとオフの切り替えの時間がなくなったり、夜中まで物理的に働けるため、真面目なメンバーが働き過ぎで体調・メンタルを壊しやすいというケースも多いです。マネージャーは働く時間のマネジメントにも着目し、メンバーのケアをしましょう。特に新人は「頑張らないと!」という意識が強く、気にかけていくことが大切です。
③メンバーを褒めて、信頼関係を構築する
メンバーは上司のことを自分の想像以上に見ているものです。特に、今回の新型コロナウィルスの感染拡大のような有事の時こそマネージャーのスタンスが問われているといえます。
オフィスに出社して顔を合わせていたら、上司の表情や必死さも伝わるし、飲みにケーションによって想いを伝えたりメンバーの悩みに寄り添ったりもしやすいですが、オンラインではそれが難しいですよね。
そのため、上司からメンバーへ歩み寄ることが大切です。メンバーを観察し、チャットなどで「昨日の商談、よくできていたね」「連絡してくれた情報、すごく勉強になった」など、「1日、1褒め」を心掛けて、オフィス以上に認める姿勢を持ちましょう。
自宅で自律的な仕事を促すためには、「信頼関係を構築して、メンバーのやる気を生み出す」ことが重要なポイントです。
メンバーが自律できる環境を創るには
では、テレワークのマネジメントはどのように行えば良いのでしょうか。
マネージャーの仕事は本来、「メンバーの労働生産性が高く、自律的に仕事のできる環境を整えること」だと私は考えています。
しかし、信頼関係が築けていないあまり、監視のマネジメントになってしまうことも少なくありません。さらには下記に記載の通り、3つのマイナス感情が醸成されてしまいます。
―テレワークにおいて、信頼関係が築けていないことによる3つのマイナス感情― ①脅迫感:メンバーが、サボらず仕事をしている姿を上司にアピールしなければと常に何かに追われている感覚になってしまうこと ②不信感:対面で仕事をしている様子を見ていないために、メンバーが仕事をサボっているのでは?と疑ってしまう感覚になること。 ③不安感:メンバーの動きが見えないことで漠然とした不安感を覚えること。特に、プロセスで評価をしていた人は、この傾向が強い。 |
上記の感情により、メンバーは上司への報告資料作成に時間を費やすことになり、業績アップにつながる仕事の時間が少なくなるので、業績が伸び悩み、下手をすれば、業績が落ちてしまうことにも繋がりかねません。
テレワークが普及している現在、今までのマネジメントの考え方を変えなければならないのです。
あくまでも自論ですが、「仕事=時間」ではなく、「仕事=成果」だと考えています。少ない時間で成果を出せたらそれはとても素晴らしいことですよね。
テレワーク導入前は、「9時から17時まで働く=仕事」とか「机に向かっていること=仕事」というような状態であった企業も多かったと思います。しかし、この根本の考え方を変えないと、テレワーク本来の魅力である【時間の柔軟性】や【自分らしい働き方の選択】ができません。更には、テレワーク導入前の考え方だと、【逆に生産性が悪くなる】というリスクもあります。
ではこれからのマネジメントでは何が重要になっていくでしょう。それは「ITリテラシーを駆使しながらのマネジメント力」です。テレワークでは時間で管理するのではなく、成果で管理することが大事です。
フェーズを区切って、段階的にチャレンジできる目標設定をする
まずは「人の育成には段階を踏んでいくことが大切である」ということを念頭におきましょう。組織に入ってすぐに新メンバーのオンボーディングが順調に行くことはまず無いと言って良いでしょう。それぞれのフェーズで何を行う必要があるのか、どのような対応が適しているか内容を作り込んでいく必要があります。
当社でも入社したばかりの方が短期間で辞めてしまうことがあったのですが、その当時はフェーズを区切らずにオンボーディングへと促す教育を実施していました。最初からかなりレベル感の高い目標を設定していたため、入社したばかりの人にとっては大きな負担になっていました。
また、「これができるようになって当然」というメッセージを与える形で研修を行ってしまうと誰しも大きな不安を感じ、「この企業でこのまま自分はやっていけないかもしれない」と不安になり、さらに誰にも相談できないという状況も生まれがちになります。
これは決して「高い目標を与えるな」と言うことではなく、「目標の見せ方」にポイントがあります。「最終的にはここまでできるようになってほしい」「マネージャー(管理職)にはこういうことまでお願いしたい」という目標は伝えても良いのですが、その代わり「1カ月間でここまで達成してほしい」「次の1カ月はここまで」というように段階を踏み、直近の目標をセットで伝えることが大切です。これにより背伸びした目標ではなく、段階を踏んでチャレンジすることができます。
ニットでは「入社から2カ月で新メンバーが独力で業務を獲得し、自律的に働ける」、という状態を「オンボーディングに乗っている」と定義しています。その上でフェーズごとに区切って新メンバーが業務の軌道に乗るようにサポートしています
「人の育成」は時間と愛情をかけ、丁寧に
人は急には成長しません。1つずつコツコツと知識と経験を積み上げていくことが大切です。企業としても人の育成には魔法がないことを理解し、長期的な目標設定をしましょう。
リモートワーク導入後であっても「施策を根付かせるためには繰り返し試行錯誤していく必要がある」「マネージャーとしてメンバーを注視する」という組織の必要な根本部分はオフィスで出社していた時のコミュニケーション方法と変わりません。
この春は特にリモートワークで新人教育という新たなチャレンジをする企業も多いと思います。時間と愛情をかけて、新人が成長できるようサポートしましょう。今回の内容がみなさまにとって一歩ずつ進んでいくヒントになれば幸いです。
この記事を書いた人
小澤 美佳
2008年に株式会社リクルート入社。
中途採用領域の代理店営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2018年中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。
2019年にニットに入社し、カスタマーサクセス→営業を経て、現在、広報に従事する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターを実施。
副業で嘉悦大学の大学講師。キャリアや就職などに関する授業を担当。