前編を読む
事務所内の「さわさわ」を常時流して「場」を共有
船曳さんの1日のお仕事の流れを教えて頂けますか?
- 船曵
コミュニケーションは全部SlackとZoomと、あとこのfacilioで完結しています。朝facilioの決まったページに1日の予定を書いて、あとは各々仕事を始めます。Zoomをオフィスで常時起動させているセッションがあるので、そこにみんなで繋いでいるんです。私からはオフィスの様子が見られますし、その日リモートしている他のメンバーがいたら、その人の顔もお互いに見ることができるっていう状況をつくってます。夕方の4時半ぐらいになると「お茶会」というのをやります。
夕会、夕礼のようなものですか?
- 船曵
そうですね。これはZoom上で会話をしながらやるんですが、進捗やら予定やら課題やら、業務に関しても業務以外のことでもみんなで共有して、「じゃあ、頑張って行きましょう」みたいなミーティングを夕方に。
結構コワーキングスペースに出勤されてます?
- 船曵
週1ぐらいですね。
おうちが基本ですか?
- 船曵
やっぱり家のマシンのほうがスペックが高いので、開発するのには家の方が何かと都合が良いですね。
作業環境は大事ですよね。持ち歩けるマシンだと限界が。
- 船曵
そうなんですよ。コワーキングには、リフレッシュをしたいとか、ちょっと違う場所に来て集中したいとか、そういうモチベーションで来てますね。
常時Zoomをつないでるセッションがあるとおっしゃってましたが、「みんないるな」という感覚を共有しつつ、用があるときとかはそのまま話し掛けたりして使うんですか?
- 船曵
あんまり口で会話して解決するというよりは、基本的にチャットベースですね。
チャットのほうが気付きやすいですしね。
- 船曵
そうですね。非同期でできるっていうのも。ただ、どうしても急ぎの場合はZoomで話し掛けたりもします。雑談もそういう感じで。
- 亀山
常にオフィスの中の映像が配信されていて、スピーカーからずっとZoomの音が出てるので、実際に会話になったりもしますが、Slack上で「ちょっと話そう」とコンタクトしあってから、ミュートを解除して話すっていう手順が1番多いですね。
大きなスピーカーで常時通話状態に
その常時通話状態というのは、離れてるものを埋めるためにやってるような感じですか?
- 亀山
そうですね。寂しさ解消じゃないですけど、そういう感情の共有のためっていう面もかなりあると思いますね。
寂しさというか、もう少し感情としては軽めのものですけど、みなさんよくおっしゃいますね。ちょっとさわさわした音が欲しいとか、人の気配といいますか。テキストでの雑談は多いですか?
- 亀山
そうですね。結構多いんじゃないかな。
- 船曵
かなり。
- 一同
(笑)
- 亀山
単純に常時つながってる音声があると、何もかもをSlackいちいちコールして取ってとなってしまうところの、敷居が下がりますね。コミュニケーションを取りやすくなっていると思います。
あるのはコミュニケーション上の課題だけ
リモートワークをやってみて良かったことですとか、逆にもう少し工夫できそうなところなどはありますか?
- 亀山
そうですね。まず困ったところは、やっぱりさっき船曳が言ったような、打ち上げができないとか、感情的な問題の部分が結構多いですね。メリットは、ちゃんとログが残るので、後からすごく分かりやすいっていうのと、他の人にも伝えやすいというところですね。
現状、リモートワークは自然にうまくいってると感じますか?
- 亀山
かなりうまくいってると思います。もともとGitHubを使ってコミュニケーションを取りながら作ったりと、いわゆるエンジニア的な働き方をしていたので、仕事に関しては、リモートでもリモートじゃなくてもあまり違いがないんですね。やっぱり課題があるのはコミュニケーションに関するところかなあ。
- 船曵
受託開発も結構やるんですけど、お客さんによっては「リモートはNG」ということもありますね。我々がお付き合いしてるお客さんは、大抵リモートに対してポジティブなイメージを持たれてる方が多いんですが、時々どうしてもそういうことがあります。
それって打ち合わせがですか?それとも、開発自体を決められた場所でという?
- 船曵
そうですね。お客さんのセキュリティ上の都合で、オフィスに来てやってもらわなきゃいけないとか。
なるほど。
- 船曵
あと、最初の方でお話ししたHoloLensを使った案件でもありました。HoloLensはまだ開発用の機材が高価なので、HoloLens自体の開発は東京でやらないとならなかったんですよ。それ以外の部分はリモートでできたので、いい感じに分担ができたんですけれども、「機材がそこにしかないから、そこじゃないと仕事できない」というようなことは、どうしてもまだ発生しうますね。なんとかできたらいいなと思っているんですが。
そうですね。確かに特別な機材が必要な場合は、リモートであちこちからというわけにはいかなくなりますね。
- 亀山
そうなんですよね。船曳にとって1番かわいそうだったのは、そのHoloLensの案件で、最後に完成した時でした。実際にHoloLensをかぶって体験して「わあ、すごい」みたいなのができたんですけど、1回も見てないんですよ、彼は(笑)。
頑張ったのに!
- 船曵
そうなんです。その時はHoloLensがなくても動く部分だけ担当して作ってたんですけれども、一応プロジェクトに関わってるんで、HoloLensをかぶって未来的なやつを体験したかったな(笑)。
- 亀山
最終的に、できたシステムをお客さんの会社に行って動かすっていうところが最終的な成果だったんですが、そのお客さんは関東の会社だったんですよね。
それも寂しさの一端になりますね。せっかくプロジェクトが完成したのに、いまいち喜びにタイムラグとテンションの差が出ちゃいますね。でもそれは会社の努力というよりは、社会の努力ですね。
- 船曵
そうなんですよ。社会と技術の向上が待たれます。
リモートワーカーに届けたいツール
インタビューの様子。事前にアジェンダを作って頂いて、進行しました
さて、ここまでずっとコベリンさんが開発された共同編集ツール「facilio」を実際に使って、アジェンダを追いながらインタビューを行なってきました。
「facilio」はリモート会議を前提にしたツールなんですね。アジェンダとして共有して、共同編集しながら進めて行けて、会議が終わった時には丸ごと議事録になっているという。この発想がとても面白いなと思うんですが、開発が始まったのは、船曳さんがリモートを始めた後ですか?。
facilioのアジェンダ作成画面
- 亀山
そうですね。後になります。
実際に離れたところで仕事するメンバーがいるからというのも、開発のきっかけのひとつですか?
- 亀山
ええ、かなり大きいです。最初からfacilioみたいなのを作ろうと思ったわけではないんです。今までやっていたiOSのアプリから、もうちょっと広い視野で社会に必要とされるようなウェブサービスやアプリは、どんなものだろうっていうアイデア出しをずっとやっていて、その中で自分たちが抱えてる悩みや不都合に着目した感じですね。「リモートをやってると、会議がちょっとやりづらいね」みたいな話から。
実際開発を始めて、それを自分たちでも使いながらどんどんアップデートしていく、というような流れですか?
- 亀山
そうですね。最初はこんな完全な形ではなくて、ひとつひとつ「これは便利かな、こっちはどうかな」と試行錯誤しながら今の形に落ち着いてきました。
実際にfacilioを触らせていただきながらインタビューしていますが、議題を進めていくスタイルで「今なんの話をしているか」が明確にわかって便利ですね。この挙手の機能を使うと「質問したそうにしています」と出るのも良いです。表現のニュアンスが。
議題ごとに参加者の「同意」を集めて会議を進行。発言の意思表示をわかりやすく示す機能も。
- 亀山
ありがとうございます。
基本は口コミで広げているというお話でしたね。
- 亀山
広げていくノウハウがあまりないので、今はどうやったら広くリモートワークしてる人に伝えていけるかというところを考えています。
コミュニケーションを減らさないように、アピールするのが大切
今後の人材の採用も、場所にはこだわらずに行うつもりですか?
- 亀山
そうですね。私の個人的な感覚ですけど、どちらかというと、自立的に社員が動いてくれるというのが一番望ましい状況で、働く場所は本当にどこでも良いんです。ただ実際の採用では、フィーリングが合うかというのは1度は会って確かめたいですね。
船曳さんは、今のメンバーとある程度一緒にお仕事をしてますから、その辺りは問題ないですもんね。今後のリモートワーカーに関しても、船曳さんというロールモデルがいらっしゃるので、その辺は結構スムーズなのかなって思ったりもするんですけど。
- 亀山
そうですね。
船曳さん、フルリモートをやってみて、「ここは変えていこう」とか、「これは維持していこう」みたいなものはありましたか?
- 船曵
自分自身に関しては、そんなにはないですけれども、会社の人以外の周囲の人に対して、もうちょっとちゃんとアピールしないといけないなって思うところはあります。例えば家で昼間に仕事をしていると、近所に住んでいるおばあちゃんから電話が来るんですよ。「大福があるから取りにおいでよ」とか。
上手に気分を変えながら日々お仕事されているようです
なるほど(笑)。
- 船曵
暇だと思われてるのかなと。
- 一同
(笑)
リモートワークには、意外とコミュニケーション能力が求められますよね。体外的にアピールする力というか。
- 亀山
そうですね。チャットベースだからこそ、文章力とか、コミュニケーション能力の高さは求められると思います。うちの会社でもSlackに進捗があんまり流れて来ないと、「あいつはやってるのか?」みたいな空気出ますし。
(笑)
- 亀山
自分のプレゼンスをしっかり出していって、できるコミュニケーションを積極的に取っていかないといけませんね。なんもしなければコミュニケーションはどんどん減っていっちゃう環境だと思うので。そこを船曳はしっかりコミュニケーションを取って、Slackにもしっかり書いてとかを徹底してるので安心なんですけど、リモートに慣れない人は本当に意識しないといけないですよね。
そうですね。そのためにも、離れている違和感を埋めるツールというのも重要ですよね。facilio、とても面白いです。
- 亀山
ありがとうございます。今ユーザーをすごく集めたい時期で、全部無料にしているので、ぜひ登録だけでもしていただいて、試してほしいなと思っています。
取材後記
社員同士が信頼し合っていて、自分の考えをきちんと伝え合っているのが感じられました。コミュニケーションに関する試行錯誤のお話しも非常に興味深く、リモートワークを実際に行なっているからこそのアイディアが生きる「facilio」もとても面白いツールでした。
ますますのご発展をお祈りいたします!
(リモートワークラボ編集部)
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この記事を書いた人
土佐光見
リモートワーク研究所研究員・ライター。
webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。