【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第3回:「正しい飲みニケーション」とチームビルディング

仲山

心理的な安全性を高めるために、特に仕事の関係でやる時は、仕事「じゃない」話をするのが大事なんです。倉貫さんが前に「報連相より雑相」と言われてましたけど、まさに雑談。
仕事の話から入ると、お互いにポジショントーク的な立場があって、ちょっと違うことを言われると、「自分たちのやってることを否定された」みたいな風に受け取られやすいです。だから、「こいつ悪いやつじゃないな」と確認してもらえるまで、雑談をひたすらするのが基本なんです。まあそんな話をしてると、会社の中では「忙しいからそんな時間ないよ」と言われて何もできないことも多いんですけど(笑)。

宇田川

その手のことを言うとね、次に言われるのが「じゃあ飲みニケーションってことですね」。うーんちがうんだけどー…ってなる(笑)。

倉貫

そこね。

仲山

なんのためにコミュニケーション量を増やすことが必要なのかがわかった上で、「飲みに行こうよ」というのは、機能すると思うんですけどね。
僕らはチームビルディングの講座をやる時に、合宿をやって、この話を初日にするんです。それで懇親会に突入すると、みんな喋る意味を共有できた状態だから、すごくたくさん喋るんです。誰かが一方的に喋ってるのを周りの人がただ聞いてるって状況もない。お互いを知ることがこの場の目的だと共有されているので。そして翌日の雰囲気が、ギュッと距離の縮まった感じになります。飲みニケーションも機能するやつとしないやつがありますよね。

宇田川

うーんそうなんですよね。

仲山

上の人にゴマを擦るみたいな飲みニケーションもあるし。

宇田川

全然安全じゃないんですよね。

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仲山

そうそうそう。無礼講ってキーワードがそれを象徴してますからね。「基本はあれだぞ。本当に言いたいことを言っていいわけじゃないぞ。わかってるよな」みたいな。

倉貫

飲み会もそうですけど、偶発性に期待しちゃってますよね。多分普通に飲み会やってもうまくいくチームってのもあるんですよ。

仲山

ありますね。

倉貫

飲み会やって、ちゃんとみんなわきまえて、チームビルディングの一環としてやるつもりの人たちが集まってやった時には綺麗にいきますよね。でもそれってハイリスクハイリターン。全然グダグダで終わっちゃって何もないっていう時ももちろんあるし。でも飲み会で成功体験がある人は、飲み会に頼っちゃうんですよね。実はもうちょっと分解して、「なんのためにやるの?」っていうのがないとダメなんですよねきっと。

仲山

だから、「チームビルディングとはこういうことか!」とわかった社長が、メンバーにも考え方を共有できると、そこの会社はみんなで飲みにも行くし、社員旅行とか運動会とかも「チームビルディング進むよね」となって、まさに「昭和か?」みたいな社内行事をやってるんですよね。そういう社内行事って、ストレスのたまるイベントとしてなくなる方向にありますけど、もともとはチームビルディングのためだったのに、いつのまにか惰性で開催されるようになって目的が見失われた結果じゃないかと思っています。

倉貫

うちの会社もやるんですよね、合宿とか旅行とか。でも合宿もやっぱりちゃんとわかって合宿しないと慰安旅行になっちゃうんですよ。

仲山

まさにまさに。

倉貫

うちの社内で、合宿は「やりましょう。やってもいいですよ」ってしてるんですけど、こないだちょっとした問題が起きたんですよ。うちは「師匠」「弟子」の制度でやってるんですけど、その「弟子」たちで合宿行こうって自分らで企画してやろうとしてたの。それ自体はいいことなんだけど、でもいろいろ聞いてくと、「何しに行くのか」というが特になくて、「僕はどこ行きたい!」って計画しようとしてた。「それはもしかしてただの仲良し旅行じゃね?」と。

宇田川

『合宿』とは違いますね。

倉貫

そうなんです。なので「それは『合宿』じゃないよ?」だけ伝えたんですけど。そういうことがあったので、「合宿」としてやる時は、「なるべく私を呼んでね」ってことにしました。普段なかなか話せない経営者の自分と12時間くらいずっと一緒にいるので、普段できない仕事の話ができていいよねと。それだったらやる意義がある。仲良し旅行は仲良し旅行で行けばいいんです。それは「懇親」。

宇田川

そこの壁を超えるというのが、どうやってできるのかなってすごい思うんですよ。ひとつ特徴的なのが「依存」なんです。
ヒエラルキーの構造って、もちろんこれは効率的に機能すればいいんですけど、事前にちゃんと正しい決定をしてないといけないって前提があるし、そうなると下の人は上の人の決定に基本的には従う、「依存をする」ということなんですよ。そうすると、そこの中で結局ある種の甘えの構造みたいなのができていくんですよね。

倉貫

上に委ねすぎると自由度は下がりますよね。

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宇田川

たぶんチームが変わっていくときというのは、依存がなくなっているのではなくて、依存先が「増えている」んだと思うんです。結果自分も依存先のひとつになる。特定のところに依存していると、かなり支配関係が強くなるんです。そうじゃなくていろんなところに依存先ができるから、自由度が増すと思うんですよね。これを作っていくプロセスが大事なんだろうなって、仲山さんの本読んでてすごく感じました。

倉貫

自分で考えるのが大事ですよね。上司がいて「上司が正しい」だと、その「正しさ」の部分で思考停止してしまう。もっと自分で考えて動いた方が絶対いい。漫画の『ジャイアントキリング』もまさしく選手たちに「自分で考えろ!」と言ってますし。