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第1回から読む
遊べる人ってのは本当に強いんです。 強い人っていうのは、外側から入ってくるものを受け入れる余地のある、ある種の弱さみたいなものをちゃんと大事にしてる人だと思うんです。「リーダーは強くなきゃいけない、間違っちゃいけない、俺が言うことは正しくなきゃいけない」っていうんだと、無理なんですよね。仲山さんってそういうご経験あったんですか?
部下がいないので、とても弱い立場です(笑)。倉貫さんの話を聞きながら同感で、僕も出店者さんをサポートする仕事をずっとやってたから、「お客さんが喜んでくれている状態」がキモだというのは早い段階で思えたんです。だから出店者さんと接する現場に居続けるよう心がけていたら、会社の組織が大きくなるうちに僕のポジションがだんだんイボみたいな感じになりました(笑)。ほとんど外側と接していて、一箇所だけ会社とつながっている出島みたいな。それがさらにヴィッセル神戸に1年間お手伝いすることになって、1週間ごとに東京と神戸を行ったり来たりしていたら、イボが伸びたみたいなポジションになってしまいました。
切れないの?(笑)
切れないけど、伸びてて社内から見たら遠くにいて会社にはいない感じですでも、そのおかげで、僕が会社にいなくても日常業務としては誰も困らない状態が確立してしまいました。
伸びきっちゃったままなの?(笑)
最近は、つながりもプロジェクトベースなので、どちらかというと衛星のように回ってる感じかも。
一応楽天の仕事はしてるんですか? 楽天の仕事って何?って感じだけど(笑)
兼業フリーになってから、知り合いからの仕事の依頼は断らないと決めて、いろいろやってみたんです。その結果、ネットショップやってる人を相手に講座をやる仕事って、恵まれてたんだなと気づきました。 例えば楽天外で同じ3ヶ月プログラムをやっても、3ヶ月終わった時点であまり変化が起こっていないということがありました。ネットショップやってる人だと、夕方ぐらいには「もう帰っていいかな!? やりたいことがいっぱい見つかっちゃったので!」となるんです。翌日には企画が立ち上がってたりとか、まあ1週間以内には何か変化が起こってるんです。3ヶ月同じメンバーでやると、ほとんどの人が何か変わってる。「やりがいあるな!」と思って。それでやっぱり軸足はネットショップやってる人と仕事しようと決めました。ただ、楽天の中でやるには小さすぎたり、費用対効果が見えなかったりして、オッケーのハンコがもらえないみたいなことってあるじゃないですか。
(笑)
例えば理念を作る講座をやりたいと思った時に、「それをやったら流通総額は何パーセント上がるの?」とかいう話になってしまうんですよ。だからそういうのは外でやるんです。誰のハンコももらわずにできるから。それに参加した出店者さんが伸びていくと、結果的に楽天の売り上げが伸びることになるので、僕にとってその活動は「楽天の仕事」なんです。会社の人は「楽天の仕事やらないで何やってんだろ」と思ってるかもしれませんけど(笑)。出店者さんたちはそれをわかってくれてるから、それでいいかなと思ってます(笑)。
宇田川:なるほどなるほど。 バーゲルマンという戦略論の研究者が言ってることなんですけど、もともとはアイデアがあって戦略ができてくるんだけど、その戦略がちゃんとできると、いわゆる「優秀な」経営者の人はその新しくできた戦略にフォーカスして、効率化を推進していくわけですよ。そうすると戦略がどんどん硬直化してきて、現場もあんまりアイデアを出さなくなる。アイディア自体も、自分で自由に考えるんじゃなくて、今ある戦略にフォーカスしてるものかどうかっていうプレッシャーもかかってくる。よしんばアイデアが出てきたとしても、ミドルの人が上に怖いから言えない。そういう状態を「共進化ロックイン」って言うんです。
アイディア自体が出てこなくなりますね。
そう。要は組織の中で除草剤が撒かれるようにアイディアが淘汰されてしまう。そのバーゲルマンの理論を使って、もう一段コンパクトにわかりやすくしたのがクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」です。組織が硬直化する時どうしたらいいのか、という問いに、「別働隊をちゃんと作りましょう」って話が出てくるんですよ。仲山さんの話はまさにそれだなと思って。 例えば、「どんどんアイデアを出せ」と言って、アイデアが出てきたら「それって百億円の事業になる?」と言うようなこと。それはその段階ではわからないですよね。逆転満塁ホームラン以外は出塁することを認めない、けれども「打席には立て!」っていうことですよね。そういう淘汰環境から自由なところで活動する、イノベーションを作るってすごく大事だと思うんですよ。別働隊がない組織ってほとんどイノベーションのアイディアまで潰しちゃうでしょ。
はい。
たぶん仲山さんがやってるのってイノベーションを作るってことですよね。
そうですかね。それが本当にイノベーションにつながってるかはわからないですけどね。
やってる本人たちはイノベーションとかあんま気にしてないんですよ。
そうそうそう(笑)。みんなと違うことやってるなっていう自覚はありますけど。 この前『ひらめきはカオスから生まれる』って本を読んだんです。アメリカ軍などで仕事をしている組織論の専門家人が書いているもので、その人の前著が『ヒトデはクモよりなぜ強い』ってタイトルなんですけど。
ああー!
クモっていうのは頭を潰したら死んじゃうけど、ヒトデは切ってもまた生えてくる。それはヒエラルキー組織と、そうじゃないネットワーク型の組織の例えなんですね。で、アメリカ軍はヒエラルキーだったけど、ゲリラ戦で痛い目にあって、「俺たちこのままじゃダメだぞ」と考えてネットワーク型に近づけようとしてます、という話で。そのあとの本で、その人が、イノベーションを生み出すようなカオスを「穏やかなカオス」と言ってたんです。その「穏やかなカオス」という表現が気に入りまして。
柔らかい言い方ですよね。
「ストーミングやりましょう」と言うとみんな怖がって進もうと思いにくいんだけど、「穏やかなカオス」と言ったら「なんとなく大丈夫そうかな」と思ってもらいやすそうだなと。その「穏やかなカオス」には、「余白」と「異分子」と「計画的偶然(セレンディピティが起こりやすい環境)」の3つの要素が大事だと書いてあって、すごく共感したんです。やっぱり忙し過ぎて精神的・時間的に余裕がない人たちって今までのことをずっとやり続けるから、いつまでたってもイノベーションは起こらない。
働かないアリ、重要ですよね。
働かないアリと言えば、この前、コーネル大学の研究者・唐川靖弘さんから「ウロウロアリ的人材」を研究しているって聞いたんです。働きアリみたいにラインに入ってないでウロウロしてるアリが存在しますと。英語では「Playful Ant」。要は遊んでいるアリなんですけど、それが実は組織の維持にとって大事な存在なのだそうです。
うちの会社で言うと「部活」ですね。遊ぶための時間を絶対社内で作るんですけど、前の会社で「あいつ遊んでばっかりだ」って言われるのが嫌だったので、もう全員で働くし、全員で遊ぼうと思って。社内で「あなたたちは遊ぶ部署、こちらは働く部署」ってしちゃうと対立になっちゃうんで、社員平等に働く時間と遊ぶ時間を与えて、「遊ぶ時間で遊びましょう、働く時間で働きましょう」と。で、うちの会社は頑張ったら働く時間短くていいよってなる。そうすると遊ぶ時間が増える。うちの会社で一番かっこいいやつは誰かっていうと、一番遊んでる奴なんですよ。「いやーすげー働いた!」って言うよりも、働いた結果遊んでるっていう奴の方が「偉い」。「偉い」ってするんで、若者たちは「あの遊んでる先輩みたいになりたい」と自動的に思うんです。
その話、うらやましいです。今僕はほぼ100パーセント遊んでるような状態ですけど、それが会社ではかっこいいとされていないので、ただ遊んでるっていう…(笑)。
この会社では僕も100パーセント遊んでる人なんですよ。社長が一番遊んでるのでいいなって思ってるし、うちの副社長がよく「倉貫を暇にするのが自分の仕事です」と言ってくれていて。副社長の役割分担としては、急いでやらなきゃいけない仕事は全部やる、なんです。で、「この人を暇にしたらなんか面白いことやるから」と。逆に暇にしないと、ちゃんと仕事しちゃって…
イノベーションが起きない。
そう。「暇にしたら慌ててなんか面白いこと考えつくだろ」って暇にしてくれるんだけど、たまにプレッシャーに感じる時があるんです。「すっごい暇になってる! 暇だなー。なんかしなきゃ」みたいな(笑)。
余白ですね。がっつり余白を作っておくとがっつり新しいことが。
僕、スケジュール帳は余白の方が多いですよ。
僕なんかもうスケジュールの中に一個でも予定が入ってたら「ああー、予定入ってるー」って(笑)。なんにも入ってない日、ようやく「あ、仕事できるな」みたいな感じです。といっても、入ってる予定も遊びの打ち合わせなのですが。
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