サテライトオフィスで会社と地方創生の未来を考える〜株式会社あしたのチーム(後編)

地域に会社として貢献するという姿勢

こうして部下と離れて仕事をすることに関して困ったことはありますか?

西村

一緒にいないので、「ちょっとしんどい」とかそういう機微が、直接会えば表情でわかるんでしょうけど、テレビ会議だと若干わかりにくいなと感じますね。

柳川さんの方は、上司と物理的に離れて仕事をしているということで、特に気をつけていることはありますか?

柳川

最初の研修以外はレクチャーも遠隔なので、指導している側と指導を受けている側で認識のズレが起きないようには気をつけています。レクチャーいただいたあとは必ず自分の言葉で復唱して、私の認識で間違いはないか必ず確認を取るようにしています。

物理的に会う機会はあるんですか?

西村

はい、頻繁に出張しています。部下の様子を見に行くのも目的のひとつですが、やはりサテライトオフィスというのは地域の方との交流が大事ですので、市役所に顔を出したりしています。我々責任者が頻繁にコミュニケーションを取らないと不安にもなりますし、ご迷惑をおかけすることにもなりますので…。

「市役所と連携を取っている」というお話が先ほどもありましたが、地域に会社として貢献することを意識しているんですね。

西村

ええ、そんな大それたことはしてないんですけども、地域の会社様にご挨拶に行ったりもします。例えば鯖江ランドの目の前にラジオ局があるんですが、そこで出版されているフリーペーパーに掲載させて頂いたりですとか…でも何よりも貢献は採用ですね。

なるほど。

西村

人を採用してそこで税金を納めていく、そこでお金の循環を生んでいくということが地域の活性に繋がりますので、そのための活動はしています。例えば三好市では中学校や高校で「出前授業」をさせてもらったりしています。こういう働き方があるんですよということを若年層の方にも周知していく、そういう活動は積極的にやっています。

社員の声をスピーディに制度に反映していく

サテライトオフィスにして業務が向上したな、よかったなということはありますか?

西村

営業の人は営業に集中できるということと、支社や東京本社に必要以上の人員を置く必要がなくなったこと、あとは残業が少なくて済むようになりましたね。サテライトに仕事を依頼して業務を集約させるということで、はるかに生産性が上がっていると思います。サテライトはその地方の優秀な人材を確保してますので、それが会社にとってとても大きなメリットです。首都圏で大手さんとバッティングして戦わずしても、サテライトの拠点で採用して、優秀な人材を全国の拠点に送り出すこともできるようになっていますので。

あしたのチーム

サテライトが中心だと思うんですけども、在宅働く人もいらっしゃるんですか?

柳川

私が聞いている範囲だと、今育休から復帰した方が一人いて、育休に入っている方が二人になるんですけど、復帰するタイミングで相談可能、どちらか選べるようになっています。すでに復帰している者はオフィスで働く方が良いということで、オフィスに来ていると聞いています。

じゃあ在宅もこれからもっと増えるかもしれませんね。

佐藤

ええ、もともと女性が多い会社なのですが、これまで全く出産育児の事例がなくて、年代的にこれからという方が丁度出て来ているタイミングなんです。だから必要に応じて検討を重ねている段階です。

これからも新しい制度を作っていくことになるんですね。そのことに関しては積極的に考えていらっしゃる。

佐藤

この4月に新しい人事制度が発表になりまして、そこに働くママや介護等でフルタイムの仕事が困難な方に対する制度も盛り込まれています。ダイバーシティに関するところですね。

それは良い取り組みですね。じゃあこれからもどんどん制度は変わっていく、柔軟に変えていく気持ちで会社は運営しているんですね。

佐藤

人事制度自体は、普通の会社だと1年に1回改定があれば多い方ですけども、弊社は半期に一度は大幅に、どんどんブラッシュアップさせていっています。制度をあれこれ先に作るというよりも、必要な人が出た時にスピーディに柔軟に対応しているので、今後も必要に応じて素早く検討していく体制は整っています。

下の方から必要な意見がどんどん上がってくるという空気があるんですか?

佐藤

自己申告制度というアンケートですとか、エンゲージメントの調査ですとか、そういったものを定期的に行っています。社員がそこで要望やをかなりズバズバとあげているので、そういった社員の声に対してはかなりのスピード感で人事制度に反映されているなと思います。

組織としては、下の社員さんの方からも発言しやすい雰囲気だなというのは柳川渡辺さんもお感じですか?

柳川

そうですね。発言を求められる機会は他の会社に比べると多いかなと思います。

発言を求められる、言っていい場がまず設けられるということと、どんどん言ってそれが形になっていくなという実感もあるということですね。御社はかなりフラットな雰囲気だなと感じるんですが、社員さんの年齢の開きも、高卒の方も採用されるとなると広くなりますよね。そういう若い方からも上の方に割と臆することなく発言しているんですか?

柳川

はい。そうですね。みんな自分の考えをしっかり伝えていますね。

サテライトオフィスの運営に大切なこと

地元の人材、高卒の方を採用される時というのは、学校の方に働きかけて学校の方から「こういう生徒がいますよ」と推薦されるんですか?

西村

まず、求人票を高等学校に出します。そこから就職希望の生徒がどういう企業に行きたいかというのを検討して、学校推薦という形で企業に応募してきます。そこから選考ですね。

選考のwebミーティングは皆さん自宅から繋ぐんですか?

西村

いえ、高卒生に関しては会社に来てもらいます。近いので。

ああ、じゃあサテライトオフィスの方に来て実際に会って、オフィスも見てもらって。

西村

そうですね。雰囲気を見て欲しいというのもあって、あえて来てもらっているというところもあります。
中には先輩が働いているという子もいますので、先輩に直接話を聞く時間を作ったりですとか、そういうことも積極的にしています。

その先輩がいる拠点に高校生が見学にくる機会も設けたりするんですか?

西村

職場見学は本当にいつでも来てくださいと言っています。遊びに来てくださいと。それは高卒生だけではなく、地域の人にも。

あしたのチーム

三好ランドの建物は元旅館だそう。

じゃあその地域の方が事務所に出入りすることも多い?

西村

そうですね、事務所内に入ることはないですけど、三好ランドは特に旧旅館のなかに入っていますので、ふらっと近所のおじいちゃんが入って来たりとかはよくあります。「ちょっと雰囲気見たくて」という感じですね。

本当にひらけているんですね。地域の方と接する機会が多いっていう。

西村

そうですね。三好ランドが入っている旅館には弊社の他に三社サテライトが入っているのですが、閉鎖的にして地域の人に「何をしているのかわからない」と思われてしまうのは良くないので、いつでも誰でも来てください、というメッセージを発しています。

それほどに地域の方との交流はサテライトオフィスは大事ということですね。

西村

信頼してもらうことがまず大事ですね。本当に信頼がないとやりにくくてしょうがないんですよ。一見無駄なことなんですけど、時間を費やしていくということが大事ですね。

会社内はwebできちんと整備されているけど、ちゃんと人と接する機会も設けていてそのバランスの良さが会社の運営の良さに繋がっていくんですね。他にサテライトオフィスを持っている企業さんとお話しした時も、市の人、自治体の人とのつながりを持つのが大事だとおっしゃっていたんですが、自治体とのつながりを作るコツや、気をつけていることはありますか?

西村

人とのつながりはもう本当に懐に入っていくしかないんですよね。

一同

(笑)

通常の会議のようにスケジューリングしておくのが基本で、突発的にweb会議をすることはあるんですか?

西村

こっちが壁を作らない、なんでも相談してみる、頼るってことなんですよね。こっちで勝手に判断して、これ言っちゃダメかな、なんてことは考えずにちゃんと頼らせてもらうこと、いつも感謝してるということを言葉でお伝えする、ということは繰り返しやっています。一緒に飲みにいく機会を作ったりもしています。多分東京とか大阪では考えられないですよね。

あしたのチーム

市役所の方々との新年会

そうですね、市役所の人とはなかなかお仕事以外ではないですね。

西村

私が引っ越すときも手伝いに来てくれたりとかですね、そういうことを繰り返すことで関係性が深まっていくんです。

変にビジネスチックになるんじゃなくて、ちょっとプライベートにも喰い込みつつ関係を作っていくのは大事ですよね。

西村

鯖江もそうだよね。

柳川

そうですね。

佐藤

本社の人間は逆に会える機会が少ないので、フェイスブックをかなり細かくチェックするようにしています。何かしら地域の方や情報がメディアに掲載されていたりすると、写真を撮って送ったりとか。結構そういうことにはアンテナを張っていて、ちょっとしたことでもすぐ連絡しています。

「見てます」ということを伝えるのも大事ですよね。それだけコミュニケーションが密になる、そういう「人」への配慮がサテライトオフィスの運営のために必要不可欠な要素になるんですね。本日は貴重なお話、どうもありがとうございました!

 

取材後記

サテライトオフィスを設けることで、社内の生産性の飛躍的な向上を実現したあしたのチームさん。地域と会社として貢献する、社内のwebコミュニケーションを充実させて風通しをよくする、社員の声をどんどん拾い上げて制度にスピーディに反映させていくなど、なぜ「次世代に残すべき企業」として評価されたのかがよくわかる、素晴らしい取り組みの数々をお話し頂きました。
人との繋がりは大切にしつつ、制度やコミュニケーションの無駄な部分は削ぎ落として、どんどん会社自体をブラッシュアップさせていく、その姿勢は、社員がよりよく働くためにとても必要なことなのだなと感じました。
ますますのご活躍をお祈りいたします!

(リモートワークラボ編集部)

 
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この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。