テレワークは困難とされてきた金融業界で、近年導入の動きが広がっています。今回は、テレワーク導入で成功した銀行の事例や実際に活用した行員が感じたメリット、デメリットなどをご紹介します。
銀行でテレワークは無理?
行員からのニーズはあったものの、顧客情報を取り扱う銀行では、持ち帰りの仕事はご法度とされてきました。さらに、もし情報漏洩や個人情報の紛失などがあった場合、金融庁に届け出る義務があることから、テレワーク導入は無理だと考えられていました。
大手銀行のテレワーク導入事例
そんな常識を打ち破り、メガバンクを筆頭にテレワークを導入する銀行が増えています。
三菱UFJ銀行
2016年7月にメガバンクで初めてテレワーク制度を導入。対象者は本部で企画業務に携わっているか、育児・介護ニーズのある行員の約4000人で、週に一度の在宅勤務が可能になりました。セキュリティ対策を施した専用端末を支給し、情報管理を徹底。また、退社予定時間を”見える化”することによって、無駄な残業の削減にも取り組んでいます。
三井住友銀行
2016年7月、全従業員の3分の2にあたる約1万8000人を対象にテレワーク制度を導入。セキュリティ対策を施した専用パソコンを貸与し、自宅で資料作成などの業務を可能にしました。また、2019年4月には、行内の遊休スペースにサテライトオフィスを開設しました。
あおぞら銀行
2017年4月、全行員約2000人を対象に、週4日まで利用可能なテレワーク制度を導入。モバイルPC、内線・外線共用のiPhoneを配布し、決裁をリモートでペーパーレスにおこなうため、電子文書決裁システムも導入しました。
地方銀行でもテレワーク導入の流れ
テレワークの導入は大手銀行に限ったことではありません。地方銀行でも導入の動きが進んでいます。
北都銀行
2017年4月、東北の地方銀行で初めてテレワーク制度を導入しました。対象は支店長、副支店長などの管理職約260人。タブレット端末を貸与することで、自宅でも行内イントラネット上で人事考課などの業務がおこなえるようになりました。
2018年5月には、会社にいるときと同じ作業環境を得られるモバイルパソコンを導入。さらなる業務範囲の拡大を目指しています。
ほかにも、北陸銀行、千葉銀行、富山銀行、福井銀行など、テレワークを導入する地方銀行が増えています。
行員からみたメリット・デメリット
実際にテレワークを活用した行員達の声を、いくつかご紹介します。
メリット
「往復の通勤時間を有効に利用できるようになり、睡眠時間も増えた」
「優先的に行うべきことを事前に決めておくので、集中して作業を行うことができる」
「業務終了後、当日の業務内容を上司に報告するので、業務の可視化ができるようになった」
デメリット
「上司・同僚とのコミュニケーションが取りづらい」
「その都度、電話やメールをしなければならず、 少し煩わしい」
「意識的に休憩をはさんだり身体を動かしたりしないと、1日中仕事に没頭し続けるのは難しい」
まとめ
今までテレワークが無理だと言われていた金融業界ですが、大手銀行から地方銀行まで広くテレワークの導入が進んでいます。この成功を受けて、今までテレワークを諦めていた企業でも導入が進むかもしれませんね。
ただ、こういった事例をみて「ウチの会社でも導入しよう!」と安易に飛び込むのは危険です。テレワークの導入に向けて、具体的にどういうステップを踏んでいくのか、チェックしましょう。
この記事を書いた人
上條真由美
長野県安曇野市出身。ファッション誌・テレビ情報誌の編集者、求人ライターを経て独立。インタビューしたり執筆したり、平日の昼間にゴロゴロしたりしている。肉食・ビール党・猫背。カフェと落語が好き。